多彩なマシンが競い合う東北660ターボGP
軽自動車の旧規格から新規格まで、年代やメーカーを問わず、過給器付き車両のみで行われるスプリントレース「東北660ターボGP」の2025年シーズンは、3月30日に福島県エビスサーキット東コースで開幕しました。手に汗握る戦いとなったレースの模様をお届けします。
決勝レースは阿部と松山の激しいトップ争いに
東北660ターボGPは、タービン交換が認められている1クラスと2クラスがある。1クラスはフルチューンの100psオーバーのマシンが対象で、2クラスはよりライトな100psまでのいわゆる“ポン付け”が中心だ。2025年シーズンは1クラスのドライバー2名が卒業し、2クラスがが最高峰となる。
2024年シーズンの2クラスで圧倒的な速さを見せつけたのは、純正タービンの3クラス仕様で王座に輝いた89号車・松山雄大。軽自動車だけでなく、JAF公認レースでも実績を残すテクニシャンで、直線の短いエビスサーキットでは1クラスに肉薄するタイムを記録。所属チーム「ZtoAuto CSW自動車部」では指導役も務めている。
そんな松山に挑もうと3クラスからステップアップしたのが、東北660耐久レースやHA36カップでも活躍する173号車・阿部優翔だ。愛機S660は松山のスズキ「カプチーノ」と同じオープン2シーターながら、100kg以上も重く、ブーストアップ仕様ではとても勝負にならない。
そこで、冬の間にHKSのGT100Rキットを組み、雪解け早々にサーキットでセットアップ。レース当日は練習走行から1分10秒台を連発し、見事に予選でポールポジションを奪取した。松山も同じく1分10秒台をマークしており、決勝は両名によるトップ争いが予想された。
3月30日に福島県・エビスサーキット東コースにおいて、8周で行われた決勝は、大きな混乱もなくスタート。序盤から阿部と松山の2台が後続を大きく引き離す。軽量でブレーキ性能に勝る松山がコーナーで追い詰めるも、オーバーテイクには至らず、直線で阿部が逃げる展開が続く。最終的に阿部が見事なポールトゥウィンを飾った。
しかし、ファステストラップは松山が0.002秒差で獲得。第2戦まで少し間が空くため、マシンに手を加えてくるのか、それとも純正タービンにこだわり現在の仕様で戦うのか。松山のクルマ作りからも目が離せない1年になりそうだ。
次戦は11月にエビスサーキット西コースで開催予定
もっとも参加台数の多い3クラスで注目すべきは、19号車・日向繁美が投入したスズキHA36型「アルト」だ。といってもワークスやターボRSではなく、NAのバンをベースにしたワークス仕様で、2023年からコツコツと製作を進めていた。車重がワークスより軽いのは当然として、リアの足も動きが違い、曲げやすいとのこと。
そんな印象を証明するかのように、予選では唯一の1分11秒台を記録。決勝も後続を寄せ付けない速さで、ポールトゥウィンを決めた。今回はほぼシェイクダウンだったらしく、さらなる熟成に期待したい1台だ。なお、準優勝の87号車・中川太門と、第3位の10号車・奥村輔は、いずれも東北660シリーズで初の表彰台となった。
2ペダル限定の4クラスにもニューカマーが登場。JAF公認のワンメイクレースが開催されているホンダ「N-ONE」で、ドライバーは334号車・岩田侑也。デビュー戦ということもあり、ベテラン707号車・兵頭孝之の後塵を拝したものの、先代モデルのJG1型N-ONEは中古車の価格がリーズナブルで、アフターパーツも豊富。軽自動車とは思えないインテリアの質感や使い勝手は、レースと街乗りを兼用したい人にとって理想的だと思われる。
第2戦はしばらく先の2025年11月23日、福島県二本松市のエビスサーキット西コースで開催を予定している。2024年までは8月に宮城県柴田郡村田町のスポーツランドSUGOで行われていたが、気温と路面温度が下がり、コースレコードを狙いやすい同年12月7日に第3戦として、東北660選手権の特別戦と併催される。シーズン中盤および後半の、手に汗握る戦いを心待ちにしたい。
