約105km/hを超えるとブザーが鳴った
自動車の進化というのは着実に進み、そのなかで出てくる装備や技術がある一方、消えていくものもあります。なかには、なぜこんなものがあったのか……?、と疑問に思う装備もあったりします。その代表的なものが、ザ・昭和的な「キンコンブザー」です。
装着が義務付けられていた
人気漫画の頭文字Dでも取り上げられているので、昭和を過ごしていない世代でも速度警報装置「キンコンブザー」の存在自体は知っているかもしれない。その名のとおり、約105km/h(軽は約85km/h)を超えるとキンコンキンコンと警告音が鳴って、当時の高速道路における制限速度の超過を知らせるもの。音質としてはまさに金属的なアナログで、かなり耳障りだった(輸入車ではライト消し忘れ警告ブザーを速度超過警告音としても使用する例もあった)。
安っぽくはあったがちゃんと保安基準。つまり法律に基づいて付いていたもので正式名称はそのまま「速度警報装置」とされていた。装着が義務付けられた背景には交通戦争とまで呼ばれた交通事故による死者の増加で、毎年1万5000人前後を記録していた時代。実際のところ、義務付けされた1974年はその渦中だった。
じつは警告音を鳴らないようにするのは簡単だった。実際に105km/hを超えても鳴らないようにしていたクルマもけっこうあり、効果のほどは不明。ただし、その後減少傾向に転じたのは確かではある。ちなみに車検項目とされたが、検査場では100km/h以上まで確かめる術はなく、作動は確認されなかったようだ。
キンコンブザーは、短命だったのも特徴で1986年の保安基準の改定で装着義務は廃止された。背景にあるのは日米貿易摩擦で自動車が問題になっていたことがある。もちろんアメリカ車には速度超過警告のブザーは付いていないため、わざわざ取り付ける必要があり、それが貿易上の障害になっているとされたから。単純にうるさいというの意見もあったようではある。いずれにしても、速度警報装置は安全装備という昭和を代表するアナログ装備と言っていいだろう。
