AMG生誕55周年を記念したハイパーカー「ONE」
メルセデス・ベンツをカスタマーに究極のパフォーマンスを提供するサブブランドとしても知られる「メルセデスAMG」。そんなAMGが2022年に275台限定でリリースしたハイパーカーが今回紹介するメルセデスAMG「ONE」。そのように希少なクルマが「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード・オークション」に出品されました。
自動車業界に衝撃を与えたグッドウッド・オークションへの出品
AMGの創業55周年を記念して開発された特別な1台であるONEは、AMGの歴史をハンス・ヴェルナー・アウフレヒトとエルハルト・メルヒャーによる独立系チューナー時代までさかのぼる、その歩みの集大成ともいえる最先端の技術が詰め込まれたモデルだ。
そのようなONEが早くもオークションシーンに登場し、大きな話題となった。2025年7月11日、イギリスで開催された「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード・オークション」において、このモデルが出品されるという報せは、自動車界に衝撃を与えた。
このモデルのルーツは、2017年のIAA(フランクフルト・モーターショー)で発表された「プロジェクトONE」にある。F1マシン「F1 W07ハイブリッド」の技術を多数取り入れた、まさにF1直系のハイパーカーである。
F1由来のパワートレインと圧巻の加速性能
搭載されるパワートレインは、ミッドシップに配置された1.6LのV型6気筒エンジンに、4基の電動モーターを組み合わせる構成となっている。そのうち1基はエンジン、1基はターボチャージャー、残る2基は左右の前輪を駆動するという構成で、F1マシンを進化させたようなメカニズムといえる。
さらに、PHEVのシステムを採用しており、圧倒的なパフォーマンスを持ちながらも、環境性能にも配慮されたモデルとなっている。
加速性能は圧巻で、0-100km/h加速はわずか2.9秒。200km/hまでは7秒、300km/hまでも15.6秒で到達する。最高速度は352km/hに達し、世界トップクラスのハイパーカーにふさわしいスペックを誇る。
2022年11月、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェにおいてメルセデスAMGのファクトリードライバー、マロ・エンゲルがONEをドライブし、6分35秒183という驚異のラップタイムを記録した。
このタイムは、同社のGTブラックシリーズが打ち立てた記録を13秒も更新するもので、公道走行が可能な車両としては世界最速の記録となった。
希少なモータースポーツ・スタイリング・パッケージを装備
今回オークションに出品されたONEは、2023年6月1日にイギリス向けとして初めて納車された個体である。特別なボディカラー「AMGシルバーアロー」や軽量なマグネシウムホイール、ペトロナス・グリーンを随所に配した「モータースポーツ・スタイリング・パッケージ」が装備された、極めて希少な仕様となっていた。
走行距離はわずか100マイル(約160km)と極めて少なく、2024年と2025年にはメルセデスAMGによるサービスも受けており、新車同様のコンディションを維持している。
世界中のスーパーリッチたちによる激しい応札の末、このONEは245万6600ポンド(邦貨換算約3億6000万円)で落札された。限定275台という希少性に加え、驚異的な性能がその価格を正当化したといえる。このONEが次に市場に姿を見せるのはいつになるのか。手に入れるチャンスが再び訪れる日は、当分先のことになるだろう。
