クルマ好きの聖地ル・ガラージュが100年前の名クラシックを展示
1928年のル・マン24時間レースで優勝したベントレー4.5L、通称「オールド・マザー・ガン」が東京・六本木の老舗カーセレクトショップ「Le Garage（ル・ガラージュ）の店内に展示されています。約100年前に製造されたこのレースカーが辿ってきた歴史を見聞きできる絶好の機会です。
ベントレーの歴史を築いた4.5L仕様の１号車にしてル・マンの覇者
2025年9月1日〜28日の期間限定で東京都・六本木にある老舗カーセレクトショップの「Le Garage（ル・ガラージュ）」に1927年製のベントレー4.5Lが展示されている。同モデルはベントレーの創始者であるW.O.ベントレーによって設計され、1927年から1931年までにスーパーチャージャー装着の50台のブロワーを含め720台が生産されたと言われ、クラシックベントレーを代表するモデルだ。
今回展示された4.5Lのシャシーとアクセルには「ST3001」という番号が刻印されている。ベントレー界隈のコレクターやマニアの間では、この番号が1927年にプロトタイプとして製造された4.5Lの第1号車であり、また当時のベントレーの会長であったウルフ・バーナートに納車されたクルマに刻まれていたものであることは良く知られた事実である。
同年6月に納車されたこの車両はその足でル・マン24時間レースに参戦するが、ホワイトハウスコーナーでのクラッシュに巻き込まれリタイアを余儀なくされてしまった。翌1928年にはウルフ・バーナートとバーナード・ルービンが再びこのオールド・マザー・ガンで参戦し、平均速度69.1mph（約110km/h）で見事優勝を果たすこととなる。これがベントレーにとっては３度目のル・マン制覇となりベントレーの輝かしい歴史に華を添えた。
今回展示されているモデルは、4.5L仕様の第1号車と、1928年のル・マンで優勝したモデルというベントレーにとって重要なふたつの価値を持っているのである。
15年の歳月をかけてペダルひとつから当時の姿に蘇らせた
ル・マン優勝後はこの車両は複数のオーナーの手に渡り、1934年のレース後にシャシーとアクセルは破棄され一時行方がわからなくなってしまう。その後、偶然発見されたシャシーとアクセルをベントレー・ドライバーズ・クラブのメンバーであるレナード・ウィルトン氏が譲り受け、15年の歳月をかけて当時のル・マン仕様に再生。同世代の4.5Lエンジンを搭載し、バンデンプラでル・マンボディを製造し、イギリスの交通局からも1927年に発行された「YH3196」というオリジナルナンバーも再発行されたことで、当時の姿で復活した。
2007年に現オーナーである涌井清春氏が譲り受けられてから、この車両はミュージアムでの展示を中心に、メーカーの発表会での展示や研修、クラシックカーラリーへの参戦など、ベントレーの豊かな歴史と哲学を伝える活動の多岐にわたり参加してきた。今回の展示も、100年に1度と言われる自動車変革期に100年前のもっとも優れたクルマの姿を、多くのクルマ好きの人々に気軽に見てもらいたいという氏の考えによるものだ。
片方だけ付けられたヘッドライトのストーンガード、室内からオイルを継ぎ足すための給油口、ラップカウンター、BACのペダルレイアウト、手動式燃料ポンプなど当時の最新のレースカーの設計思想を間近で観ることができる。100年の数奇な運命を経て蘇った名車を見に六本木に足を運んでみてはいかがだろうか。
【AMWノミカタ】
今年に入ってからル・ガラージュでは、1930年代のダービーベントレー、そして今回の1927年製のベントレー4.5Lと、ベントレーの歴史的名車を展示している。渡辺大店長は「足を運んでくださる目の肥えたクルマ好きのお客様に少しでも喜んでいただけるよう、普段目にすることができない珍しいモデルの展示を心がけている」と語る。そして展示モデルを囲んで自然とクルマ談義が弾むのも同店に人が集まる理由でもある。
今回展示されている「オールド・マザー・ガン」は本来ベントレー本社のミュージアムに展示されてもおかしくない歴史的なモデルだ。縁あって日本に嫁ぎ、約20年オーナーに愛情を注がれて保管されてきた。しかしながらオーナー氏は「文化財の一時預かり人」の役目を終えることを検討しているという。
1927年に誕生したこのモデルはまもなく100歳を迎える。その時も愛情のあるオーナーのもとで100年前の輝きと空気感が保たれていることを願いたい。
【ベントレー4.5L「オールド・マザー・ガン」展示概要】
日時：2025年9月1日(月)～9月28日(日）
時間：11:00〜19:00/水曜日定休
会場：LE GARAGE（ル・ガラージュ）：東京都港区六本木5-17-1 AXISビル1F