究極のGT3はオークションの落札価格が約1億5800万円
ポルシェ911のなかでも特別な存在とされる997型「GT3 RS 4.0」が、2025年8月のRMサザビーズ モントレー・オークションに出品されました。600台の限定生産で、走行距離はわずか256km。500psを発揮する4Lの自然吸気エンジンを搭載する、997世代の頂点に立つモデルです。登場から10年以上が経っても、その価値はむしろ上昇しており、ポルシェファンにとってまさに伝説的な1台といえます。
排気量拡大と軽量化を施した究極の997型「RS 4.0」
ポルシェ911のファンにとって、「GT3」という称号はやはり特別な存在である。ポルシェが初めてGT3の名を911のラインナップに掲げたのは、1997年に誕生した第5世代の911、すなわち996型でのことだ。
1999年に当時のFIA GT3カップに投入された車両の公認を得るための、いわゆるホモロゲーションモデルとして996型911シリーズに追加設定されたGT3は、シリンダーヘッドのみを水冷化した360ps仕様の3.6L水平対向6気筒自然吸気エンジンが搭載された。また、徹底した軽量化が施されたことで、より高性能な自然吸気911を求めるカスタマーから高い評価を得るに至った。
その後ポルシェは、2002年に発表された後期型の996型911をベースにGT3を大幅に刷新した。最高出力はさらに381psに向上し、オプションではあるがポルシェセラミックコンポジットブレーキシステムの選択も可能になった。そして翌2003年に登場したのが、さらにサーキット走行へとフォーカスした究極のGT3ともいうべき「GT3 RS」である。RSはレン・シュポルト、すなわち英語ではレーシング・スポーツを意味する、ポルシェ伝統の称号である。リアの3.6LエンジンにはGT3と同様に381psというパワー・スペックが掲げられたが、じつはRS用のエンジンには独自のチューニングが施されていた。
911が次世代の997型へと進化しても、ポルシェは997型シリーズにGT3を加えることを忘れなかった。2006年冬にまず新型の水冷3.6L水平対向6気筒自然吸気エンジンで最高出力415psのスタンダードなGT3を発表。続いて同年秋にはその軽量仕様となるGT3 RSを投入した。2009年には996型がそうであったように、ビッグマイナーチェンジ版の997型911をベースに、3.8Lへと排気量を拡大し435psの最高出力を誇った新型GT3を発表した。翌2010年にはそのRS仕様を450psのスペックとともに生み出している。
しかし997型911 GT3シリーズにはまだここから先の進化があったのだ。その究極が、今回RMサザビーズのモントレー・オークションに登場した「911 GT3 RS 4.0」である。2011年に発表された911 GT3 RS 4.0は600台の限定車として企画された。もっとも大きな技術的トピックスは、排気量が4Lにまで拡大された水冷水平対向6気筒自然吸気エンジンにほかならない。
オプションパーツを豊富に装備した394番目の生産車両
新設計のインテークマニフォールドや、カーボンファイバーハウジング内の高流量エアフィルター、低抵抗触媒コンバーター、バリオカムプラスの専用セッティング、二段階可変吸気システムなどの採用によって、エンジンは500psの最高出力と460Nmの最大トルクを得た。さらに3.8L版のRSから10kgのウエイトを低減している。0→97km/h加速は3.5秒、最高速では311km/hという運動性能を誇った。参考までにニュルブルクリンクのノルドシュライフェにおけるテストでは、7分27秒というラップタイムが刻まれている。
モントレー・オークションに出品された911 GT3 RS 4.0は、カレラ・ホワイトのボディカラーにレッドの「RS 4.0」ロゴを配し、カレラ・ホワイトのホイールを組み合わせたモデルである。ポルシェの記録によれば、600台のうち394番目に製作されたものとされる。内装はブラックとレッドという標準的な仕様だが、オプションのスポーツクロノパッケージ、メモリー機能付きのアダプティブ・スポーツシート、ユニバーサルオーディオインターフェイス、フロアマット、消火器などを装備した。アメリカのフロリダ州メルボルンにあるポルシェ・ディーラーに新車で出荷されたことがドキュメントから確認できる。
さらに驚かかされるのはオドメーターに残された走行距離である。オークションのためのカタログ製作時点で確認されたその数字はわずかに160マイル(256km)ほどで、これは997世代における究極の自然吸気911を求めるエンスージアストを大きく感動させるに値する。RMサザビーズはこのモデルに92万5000ドル~110万ドル(邦貨換算約1億3614万円~約1億6190万円)のエスティメートを設定したが、それも妥当な評価であったのだろう。最終的な落札価格は107万7500ドル(邦貨換算約1億5859万円)という数字を記録した。これまで同モデルが落札された最高価格は88万5000ドル(邦貨換算約1億3025万円)だったというから、その価値は確実に高まっていることが証明されたことになる。
