タフギアで愛されたエクストレイル
4つの個性を手に入れSUVの主役へ
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のお題は2000年の誕生から「タフギヤ」として愛されてきた日産エクストレイル。2026年現在、このクルマは単なるSUVを超え、ライフスタイルに寄り添う4つの個性へと拡張されました。標準車、オーテック、ニスモ、そしてロッククリーク。なぜ今、エクストレイルが再び主役の座へと歩みを進めているのか? その背景と進化の真髄を木下隆之が掘り下げます。
ライフスタイルの変化に対応
成熟したエクストレイルの全貌
日産エクストレイルが、いま再びSUV車両として主役の座へ歩みを進めている——そんな印象を強く受けます。近年のモデル展開を見ると、このクルマが単なる一車種ではなく、ブランドの柱として育てられようとしていることが伝わってくるからです。
2000年に誕生した初代エクストレイルは、「タフギヤ」という分かりやすいコンセプトを掲げ、アウトドアを楽しむユーザーの心をつかみました。泥や雪道をものともせず、道具のように使える実用性を前面に押し出したSUVでした。都市よりも自然が似合う、頼れる相棒のような存在だったのです。
しかし時代は移り、人々のライフスタイルも変わりました。アウトドア専用のクルマではなく、日常の移動を担う快適な乗用車としての資質も求められるようになります。進化を重ねた現行モデルは、タフさを残しながらも、都市の街並みにも調和する洗練を身につけました。かつての無骨さに代わり、上質さや落ち着きが感じられる存在へと成熟したと言えるでしょう。
標準モデルからロッククリークまで
乗り手の好みに応える4バリエーション
そして今回のマイナーチェンジを機に、エクストレイルはさらに多彩な顔を持つことになりました。標準モデルに加え、エレガントな佇まいと走りの質を高めた「オーテック」、モータースポーツの血統を感じさせる「ニスモ」、そしてアウトドア志向を色濃く打ち出した「ロッククリーク」がラインナップに加わりました。結果として4つの個性を備えるシリーズへと拡張されたのです。
この背景には、日本におけるSUV人気の高まりがあります。かつて家族の中心だったセダン、そして遊びの相棒だったツーリングワゴン。その両方の役割をSUVが担うようになりました。実用性とレジャー性能を兼ね備えた存在として、SUVは今や“国民車”と呼んでも差し支えない存在に成長しています。
とくにエクストレイルが属するミドルサイズSUVは、各メーカーが力を入れる激戦区となり、販売シェアも年々拡大しています。ユーザーの好みも多様化し、上質さを求める人、アウトドア性能を重視する人、走りを楽しみたい人と、求められる個性が細分化されました。エクストレイルのバリエーション拡大は、こうした変化に対する日産の回答だと言えるでしょう。
先進のe-POWERとe-4ORCEをベースに
突出した個性が異なる車種構成に期待大!
なかでも注目したいのはオーテックの進化です。従来のドレスアップ仕様にとどまらず、走行性能を磨き上げたスポーツスペックへと進化しました。一方、ニスモはよりスポーティな走りを求めるドライバーに応え、ロッククリークは初代モデルの持っていたタフギヤの精神を現代に蘇らせています。
もちろん、VCターボエンジンを用いたe-POWERと、電子制御四輪駆動のe-4ORCEという先進技術は全モデル共通です。基礎性能を共有しながら、それぞれ異なる個性を与えている点が今回のラインナップの巧みなところでしょう。
荒野を走る道具として生まれたエクストレイルは、いまや都市生活にも寄り添うパートナーへと進化しました。移動手段という枠を超え、人生の時間をともにする存在へ。その歩みはまだ続きます。多様なニーズに応える現在のラインナップを見るにつけ、エクストレイルが再び主力モデルとして存在感を強めていく未来を、期待せずにはいられません。
