1024通りのシートアレンジで3列7人乗り! 観音開きドアを備えた新生グランカングーの仏流乗り心地
フランス発の実用MPVとして日本でも絶大な人気を誇るルノー「カングー」。その3列シート7人乗りロングホイールベース版となる「グランカングー」がついに日本へ正規導入されました。日本のファンのために専用開発された観音開きのダブルバックドアを備え、1024通りのシートアレンジを誇る新型モデルの実力と、フランス車ならではの乗り心地を徹底検証します。
国内で人気のマルチパーパス車の火付け役に日本初正規導入された待望の7人乗りカングーが登場!
ルノー カングーといえば、フランス発のお洒落な商用車由来のマルチパーパスビークル(MPV)を、日本のクルマ好きのなかに浸透させた最大の功労車だ。国内での予想外のヒットは、同じフランスから「プジョー リフター/シトロエン ベルランゴ」姉妹、その従妹としてイタリアからも「フィアット ドブロ」などのフォロワーを日本へ上陸させることになった。
3代目となる現行カングーは、2023年から国内での正規デリバリーが開始されている。しかし本国で設定されているロングホイールベース版の導入を望む声は、日本の愛好家のなかでも少なからず存在していた。
そして2月5日、カングーから独立した新たなモデルレンジ「グランカングー」の名のもと、ついに待望の7人乗りモデルが全国のルノー販売網にてリリースされることになった。
ホイールベース+390mm/全長+420mm確保にさらに日本独自「ダブルバックドア」導入の秘密!?
満を持して正規導入された「グランカングー」は、販売中の5人乗り「カングー」と基本を共有しつつも、スライドドアから後方は完全な新規開発となっている。
1860mmの全幅および1810mmの全高は、5人乗り仕様と同じだ。しかしホイールベースは対カングー比で390mm延長された3100mm、全長は420mm延長されて4910mmとなった。同じマーケットを競うステランティス三姉妹の7人乗り仕様と比べても、かなり大柄な実用MPVである。
特筆すべきは、日本におけるデザインアイコンというべき観音開きの「ダブルバックドア」が装備されていることだ。じつは乗用仕様のダブルバックドアは、母国フランスでも設定がないという。今年1月に行われたデビューイベントでは、グランカングーの正規導入に2年もの時間を要した理由について「日本向けにダブルバックドアの開発を行っていたからです」と明快に語られていた。
このダブルバックドアは、カングーの瀟洒な個性を体現したスタイルであると同時に、開閉に必要なスペースを最小限に抑えられるという実用的な理由にも基づいている。実際、ライバルにあたる欧州製7人乗りミニバンたちよりも全長が大幅に長いにもかかわらず、開いたバックドアの分を合わせた長さでは、かえって短いとアピールされている。
3列7人乗りシートが1024通りのアレンジ可能! シートを取り外せば3050ℓの広大なラゲッジ容積!!
グランカングー最大のトピックである3列目シートは、2列目と同じく全席独立スタイルとなる。130mmのシートスライドに加えて、折りたたみや跳ね上げ、取り外しも可能だ。さらに2列目および3列目のシートを完全に取り外してしまえば、総ラゲッジ容積は3050Lに達する。
シートアレンジのバリエーションは1024とおり(うち走行中に設定可能なアレンジは243とおり)を可能としている。今回はそんな新生グランカングーの走りの資質に注目し、歴代カングーとの伝承性を評価軸として体感してみることとした。
市街地でも高速道でも重量増を感じさせない快活な加速感と走り、そして乗り心地とも申し分なし!
歴代のカングーは、いかにもフランス車らしいソフトだがコシのある独特の乗り味が特徴であった。ならば「今回のグランカングーでも、歴代のようなモッチリ感のある乗り心地が味わえるのか」。それが、今回の試乗に向けて設定した最大のテーマであった。
久方ぶりに対面した「グランカングー クレール」は、標準版カングーと比べるとかなりの胴長に見える。ところが、ステアリングの切れ角が大きめなせいか、ボディサイズのわりには取り回しが良い。今回の撮影で向かった古い田舎町の狭い生活道路でも、持て余すようなことはなかった。
懸念していたのは、ボディ拡大と重量増による動力性能の低下だ。搭載されるエンジンは、5人乗り仕様と同じ1.3リッター直列4気筒ガソリン直噴ターボで、131psのパワーと240Nmのトルクを発生する。いっぽう車両重量は、5人乗りの1570kgに対して1690kgと、かなりの重量級である。もともと歴代カングーは遅さも個性だったのだから、と自分に言い聞かせて走り出した。
ところがアクセルを踏み込んでみると、市街地でも高速道路でもその走りっぷりはかなり快活だ。とくに停止状態からの走り出しは加速感が強めに出るセットアップで、実用燃費などを考慮すればもう少しおっとりしていても良いのではと思うほど活発であった。
大きさゆえのメリットが優位に働き「グランカングーこそファミリーの中核」になり得ると実感!
何より感銘を受けたのは、乗り心地の良さである。とくに高速クルージングでは、ホイールベースが伸ばされたことで不快なピッチングなどが減少し、乗り心地とスタビリティの両方が明らかに向上したと感じられた。
この日は丸々半日を車中で過ごしたにもかかわらず、不思議なほどに疲れることはなかった。シートは薄手ながらカッチリとした作りで、往年のフランス車のようにふんわりソフトなわけではない。それでも、軽い腰痛持ちである筆者の身体のどこにも余計な負荷が掛かっていないのだ。こういう部分を含めて「やっぱりフランス車」、あるいは「やっぱりカングー」と思わせてくれる。
ちなみに、事実上のローンチエディションとなった限定車「グランカングー クレール」の価格は、同じガソリン仕様のカングーに40万円上乗せした459万円と、戦略的な設定であった(すでに完売とのこと)。
その面から見ても、このグランカングーこそがカングー・ファミリーの中核になり得ると実感した。ルノーとルノー・ジャポンの次なる展開に期待したい。
【主要諸元】ルノー グランカングー クレール
■全長×全幅×全高:4910mm×1860mm×1810mm
■ホイールベース:3100mm
■車両重量:1690kg
■エンジン:直列4気筒DOHC直噴ターボ
■総排気量:1332cc
■最高出力:131ps(96kW)/5000rpm
■最大トルク:240Nm/1600rpm
■トランスミッション:7速EDC
■駆動方式:前輪駆動(FF)
