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アメリカンポップカルチャーの象徴! 約6万ドルで修復した「メイヤーズ マンクス」の驚くべき落札額!?

6万1600ドル(邦貨換算約967万円)で落札された「メイヤーズ マンクス」(C)Courtesy of RM Sotheby's

VW ビートルベースの傑作バギー「メイヤーズ・マンクス」は自分の手で組み上げるキットカー

近年、北米を中心とするクラシックカー界で急速に注目を集めているのが、1960〜1970年代に大流行した「デューンバギー」です。おもにフォルクスワーゲン タイプ1(ビートル)をベースとし、砂丘やビーチを豪快に走るこのバギーは、レジャー志向が高まる現在の市場でも大きな注目株となっています。今回は、2026年2月27日にRMサザビーズが開催した「MIAMI 2026」オークションに出品された代表格「メイヤーズ マンクス」の概要と、注目の落札結果について詳しく解説します。

デューンバギーはサーフボードビルダーの創ったFRPボディから始まり、マックイーンなどが乗り人気に

アメリカ合衆国カリフォルニア州出身のエンジニア兼アーティスト、そして伝説的なボートビルダー兼サーファーでもあるブルース・メイヤーズは、必ずしもデューンバギーというジャンルの開祖というわけではない。しかし、彼が登場する前に海岸を徘徊していた、ジャンクパーツ寄せ集めの粗雑なバギーたちと比べれば、彼のメイヤーズ マンクスは驚異的な飛躍であった。

1964年に登場し、1971年まで販売された初代マンクスは、ホイールベースを切り詰めたフォルクスワーゲン ビートル用シャーシを基に、腕利きの自宅整備士ならば数日で組み立てられるキットだった。その流線型のファイバーグラス製ボディワークは数多くの模倣品を生み出し、現代のデューンバギーの原型を確立。今日でも一目でそれとわかるデザインとなっている。いっぽう、そのブランドネームとロゴデザインは、ショートホイールベースのバギーのずんぐり・ぽっちゃりした可愛らしいルックスにちなみ、生まれつきしっぽのない英国マン島原産のネコ種「マンクス」からアイデアを得たものだった。

メイヤーズの創り出したマンクスは、遊園地の遊具のような外観にもかかわらず、高い性能も兼ね備えていた。そのシンプルさと実績ある空冷フラット4は本質的なスピードをもたらしたかたわら、持ち前の軽量構造も相まって1960年代の冒険的モータースポーツシーンを席巻してゆく。VWのリアエンジン構造はリアヘビーとなり、砂地を走る際にトラクションが優位に働くことと、わずか100馬力ほどの出力ながらその軽量さゆえのメリットも大きかった。

自ら手掛けた愛車マンクスを駆ったメイヤーズは1967年、メキシコで開催された世界最高峰のオフロードレース「バハ(Baja)1000」において、それまで最速だったモーターサイクルの記録を更新。大排気量のピックアップトラックや自動車たちを打ち負かし、あっという間に大評判を獲得する。

さらに1968年、ハリウッドの世界的スーパースター、スティーヴ・マックイーンが映画「華麗なる賭け(The Thomas Crown Affair)」に、マックイーン自身のデザインによるカスタムメイドのメイヤーズ マンクスが登場。エルヴィス・プレスリーも映画に登場させるなど、この時代のポップカルチャーのアイコン的存在としても世界的な認知を受けることになった。

じつは現在でも、メイヤーズの商標を獲得した会社がセルフカバー的なリプロ車両を販売してはいるものの、やはり当時モノ、本物のメイヤーズ マンクスがコレクターに求められ続けているのは当然のことのようである。

“当時モノ”オリジナルのメイヤーズ マンクスは米ポップカルチャーの象徴としオークションでも高評価

このほどRMサザビーズ「MIAMI 2026」オークションに出品された「メイヤーズ マンクス」デューンバギーは、シャーシナンバーから1961年の下半期に製造されたフォルクスワーゲン ビートルをベースに組み立てられていることが分かる。そして、1970年3月に製造されたメイヤーズ社製FRPボディを用いて製作され、組み立てた当初のボディカラーは「ブリリアントレッド」だったようだ。

ただし、バギーとして製作されたあとの経緯やオーナーシップ歴は、この種のキットカーの宿命として不明である。しかし、のちにニューヨーク州ロングアイランドにて、おそらくオリジナルのブリリアントレッド塗装のまま「バーンファインド」。そして、このとき手に入れた現オーナーの委託を受けて、コネチカット州ウォリングフォードの「コブラ・オートモーティブ」社によってフルレストアされることになる。

遺された書類によると、マンクスの完全な再生には、じつに約6万ドルが投じられたと記されており、これにはカリフォルニア州トーランスにある「パワーハウスVW」社製の1914cc水平対向4気筒エンジンのコンバートも含まれるという。

約100psを発生すると言われているこのフラット4には、フォルクスワーゲン ビートル用として「ランチョ」社が製作した「タイプ1プロストリート」スウィングアクスル・トランスアクスル(ファイナルギヤ比4.12)が組み合わされている。

また、もともと作られた時代を反映した装備として、VW用アフターパーツの老舗「EMPI」社製トリガー式シフトレバーとブラックトリムつきバケットシート、「BFグッドリッチ」製ラジアルタイヤを装着したアメリカンレーシング製「トルクスラスト」ホイールを採用。仕上げには1970年代のカウンターカルチャーを彷彿とさせる、サイケ調のグリーンメタリック塗装を施した。

コブラ・オートモーティブ社による修復は2017年に完了し、その後マンクスの走行は限定的なもの。カタログ作成時点での走行距離計は、わずか81マイル(約130km)を示していた。また「メイヤーズ・マンクス登録機構」にも登録済みであり、ダッシュボードに貼られた同機構発行の小さな金属製プレートには「0611」の登録番号が刻印されている。

RMサザビーズ北米本社は、自社の公式オークションカタログ内で「アメリカ史における革新的で自由奔放な時代の象徴とも言えるメイヤーズ・マンクスが誘う太陽の下での楽しみは、時代を超えて色あせません。この完全修復されたマンクスは、目を惹く鮮やかなグリーンメタリックで、ビーチサイドの夏の別荘にぴったりの1台となるでしょう」と謳いつつ、5万ドル〜6万ドル(邦貨換算約785万円〜約942万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定。そのうえで「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」での出品となった。

この「リザーヴなし」という競売形態は、価格の多寡を問わず落札できることから、とくに対面型のオークションでは会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が跳ね上がる傾向もある。その反面、たとえ価格が売り手側の希望に到達しなくても、強制的に落札されてしまうリスクも内包している。

そして迎えた競売ではリザーヴなしのメリットが存分に発揮され、終わってみればエスティメート上限を超える6万1600ドル。現在のレートで日本円に換算すれば約967万円という、なかなかの高価格で競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。

ただしこのハンマープライスは、9年前のレストアに要した金額とほぼ同じ。エスティメート設定の段階で分かってはいたことだろうが、売り主側としてはちょっと複雑な思いが去来したことは想像に難くあるまい。

※為替レートは1ドル=157円(2026年3月29日時点)で換算

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