富士3時間レースで見えた3メーカーの現在地
2026年5月4日、富士スピードウェイにてSUPER GTシリーズ第2戦「富士GT 3時間レース」の決勝が行われ、二日間で延べ8万3600人のお客様を動員したと言います。決勝はドライコンディションのなか、トヨタ「GRスープラ」が圧倒的なパフォーマンスを発揮し、見事に開幕2連勝を飾りました。3位表彰台に上がった日産「Z」、そして開発途上にあるホンダ「プレリュード」との現在地を比較しながら、熱戦の模様を振り返ります。
サクセスウェイトを跳ね返す驚異のパフォーマンスを魅せたGT500クラス
未明にメイストームが吹き荒れた5月4日、富士スピードウェイではSUPER GTシリーズ第2戦となる富士GT 3時間レースの決勝が行われた。ドライコンディションに恵まれた前日の公式予選の時点から、トヨタ GRスープラの優位は明らかであった。
いや、もっと正確に言うならば、ディフェンディングチャンピオンである#36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太)の速さである。開幕戦の岡山でも、#36号車は#38 KeePer CERUMO GR Supra(大湯都史樹/小林利徠斗)に続いて2番手グリッドを得ていた。今回は40kgのサクセスウェイト(成績に応じて搭載される重り)を搭載しながらも、#14 ENEOS X PRIME GR Supra(福住仁嶺/大嶋和也)に続く2番手タイムをマークしたのだ。
10kgのサクセスウェイトを搭載することで、パフォーマンス的には0.1秒遅くなるというのが定説だ。今回の予選タイムを考えると、#36号車のパフォーマンスは1分26秒0に相当する。#14号車のそれも26秒1と素晴らしいものがあった。
ライバルとなる日産勢では、3番手の#23 MOTUL Niterra Z(千代勝正/高星明誠)が26秒5。ホンダ勢では#64 Modulo HRC PRELUDE-GT(大草りき/I.オオムラ フラガ)が26秒7に相当する。ということは、この激戦のなかで、#36号車はライバル勢に0.5秒から0.7秒のアドバンテージを築いていたことがわかる。
少し乱暴な表現になるが、#23号車をGT500の基準とした場合、#36号車や#14号車はGT550クラス、反対に#64号車はGT480クラスと言ったら理解しやすいのかもしれない、と思えるほどだった。
未知のポテンシャルを秘める新型プレリュード
決勝では#36号車の強さが目立つこととなった。スタートではポールポジションから#14号車が好ダッシュを見せてリードを奪う。この速さについていけたのは#36号車のみで、#23号車以降は次第に離されていく。そして#14号車と#36号車の間隔も、序盤はじわじわと拡がっていった。
しかし、この間隔は一定以上に開くことなく、中盤にかけては反対に縮んでいく。このペースを考えて、#36号車はアンダーカット(他車より早くピットに入り逆転する作戦)を遂行した。76周目に2回目のルーティンピット(規定で義務付けられたピット作業)を行った#36号車に対して、トップを行く#14号車は2周後の78周目にピットインした。
#36号車に対するロスタイムは3秒弱長くなり、その鼻先でピットアウトしたものの、代えたばかりの温まっていないタイヤでは#36号車の攻撃を防ぎきれずトップ陥落となる。その後、#14号車の福住も目一杯の追い上げを見せたが、坪井が悠々と逃げ切って開幕2連勝を飾った。昨年の最終戦から数えると3連勝と、横綱相撲とも言える強さを見せつける結果となった。
日産勢のトップは、予選と同様に#23号車だ。#38号車との接近戦から接触してタイムロスがあったものの、最後まで粘り強く走り、#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/サッシャ フェネストラズ)の追撃を振り切って見事3位表彰台を勝ち取った。トップから約40秒差というレースタイムを考えると、ポテンシャルのさらなる改善と課題を残していると言えるだろう。
予選では5番手から9番手グリッドを獲得し、まずまずの速さを見せたホンダ勢だが、決勝では上位陣の争いに加わることなく中段に沈んだ形となった。#16 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT(野尻智紀/佐藤蓮)の5位がベストリザルトである。
事前に懸念されていたトップスピードの遅れは、チーム関係者によれば数km/h程度とのことだが、いまだ発展途上であることは間違いない。公式練習でルーキーがトップタイムをマークしたり、公式予選では唯一ダンロップタイヤを装着する#64号車が陣営のトップに立ったりとサーキットでの話題を呼んだ。
いずれも選んだタイヤがコンディションにマッチしていなかったのではと噂されており、やはり本丸ともいうべきARTAの2台や、#100 STANLEY HRC PRELUDE-GT(山本尚貴/牧野任祐)が開発共々、マシンを熟成しながらけん引するスタイルで、まずは日産 Zに追いつきたいところだ。
新型エンジンの激速BRZと熟成GT-Rが見せたGT300クラスの意地の張り合い
GT300で注目すべきポイントは2つある。公式予選で圧倒的な速さを見せた#61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)と、決勝で強さを発揮した#56 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(J.P.デ オリベイラ/木村偉織)だ。
前者は、昨年までの2リッター水平対向4気筒から、3リッターのフラット6へエンジンを換装した。限界を超えたパフォーマンスを生み出すゆえにたびたびトラブルにも見舞われてきたが、排気量が1.5倍になったことで余裕が生まれ、結果的にトラブルフリーになるのではとの見方が強かった。
まずは公式予選前のフリー走行から全セッションでトップタイムをマーク。しかも公式予選のQ2では山内が、自ら持つ富士のコースレコードを更新するスーパーラップを叩き出し、自身17回目のポールポジションを奪った。
しかし決勝では不運に見舞われる。スタート前のウォームアップで左フロントタイヤのバーストに見舞われ、予選での勢いに陰りが差し始めた。スタート直後は1周につき1秒のタイム差で後続を引き離しにかかったが、10周を過ぎた辺りからペースが鈍り、25周目には再び左フロントタイヤがバーストしてしまう。これで大きくポジションを落とすと、レース終盤には駆動系のトラブルからコースサイドにストップし、そのままレースを諦めることになった。速さな魅せたものの、まだまだ信頼性というところでは課題が残っているようだ。
一方の後者は今シーズン、チームの基本パッケージは不変のまま、オリベイラのパートナーに元ホンダ育成ドライバーだった木村偉織を抜擢。ルーキーではあるが昨年の最終戦でGT300初優勝を飾っており、勢いのある存在としてライバルからも注目されていた存在だ。
実際、公式予選のQ1を走った木村はB組で2位につけてエースのオリベイラに繋ぎ、あっさりと役割を果たしてみせた。これを受けたオリベイラも3列目、5番手グリッドを得ることになった。
決勝ではオリベイラが最初と3回目のスティントを担当する。2番手でマシンを受け取った木村は、全車が最初のルーティンピットを終えた段階でトップに立っていた。その後も安定したペースで周回し、残り45分となったところでピットに向かい、1位ポジションのままオリベイラに交代した。
最終スティントを担当したオリベイラは、ベテランらしく安定したペースでリードを拡げていく。結果的には2位以下を全車周回遅れにする圧勝劇で今季初優勝を飾った。木村は昨年の最終戦以来となる自身2勝目を挙げ、勢いが継続していることをアピールした。
2位は#65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟/黒澤治樹)で今季初表彰台。3位は#31 apr LC500h GT(小高一斗/小山美姫/C.ブルツ)で2戦連続表彰台を獲得し、ランキングもトップから3ポイント差の2位に進出した。
スーパーGTはまさに群雄割拠の混沌とした戦いのまま、次戦はまたしてもこの富士での灼熱の350kmレースとなって戻ってくることになるから、シリーズの盛り上がりを含めてそれまでの各陣営のマシン熟成や改善、モチベーションの奮起に大いに期待したいところだ。
