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落札価格は驚きの48万円!? F1皇帝の名を冠したフィアット「スティーロ」限定車がオークションで激安だった理由

2250英ポンド(邦貨換算約48万円)で落札された「フィアット スティーロ シューマッハ リミテッド・エディション」(C)Iconicauctioneers

「皇帝」をオマージュした幻のフィアット、まさかの価格で落札

クラシックカーを扱う国際オークションでは、これから価値が上がりそうなリーズナブルなクルマも多数出品されます。今回は、2026年3月にイギリスで開催されたオークションに登場したフィアット「スティーロ」の限定モデル「シューマッハ・リミテッド・エディション」に注目しました。商業的には不遇だったハッチバックが、未来のコレクターズカーになる可能性とオークションの落札結果をレポートします。

フィアットの不人気車に設定された「シューマッハ」印の限定モデル

コレクターズカーを扱う国際オークションでは、高価なクラシックカーやヤングタイマー(初度登録から15〜30年ほど経過した少し古いクルマ)だけではなく、これからコレクターズアイテムとなりそうなリーズナブルなクルマたちも見受けられる。

英国のクラシックカー専門誌が主催するトレードショー「The Classic Car and Restoration Show 2026」に際して、アイコニック・オークショネア社が2026年3月21日から22日にかけて開いた公式オークションでは、そんな未来のコレクターズカー候補のひとつである、フィアット「スティーロ」の「シューマッハ・リミテッド・エディション」が出品されていた。

フィアット スティーロは、商業的には失敗に終わってしまったフィアット「ブラーヴォ」(3ドア)およびフィアット「ブラーヴァ」(5ドア)に代わるCセグメント(欧州の乗用車分類で全長4.2m前後のクラス)のコンパクトハッチとして、2001年3月のボローニャ・モーターショーにてデビューした。オペル「アストラ」やフォード「フォーカス」、プジョー「307」などの競合モデルとして、同年10月に正式リリースされている。

先代にあたるブラーヴォおよびブラーヴァが、イタリアンデザインを強烈に打ち出していたスタイリングを身上としていたのに対して、ヨーロッパのほかの市場にも適応できることを目指したスティーロは、2000年代初頭の常識的かつ実用本位の内外装デザインが与えられていた。

パワーユニットは同時代のフィアット「プント」などと同じガソリンの1.2リッターおよび1.4リッターの「FIRE」ユニットや、新世代の1.6リッター直列4気筒ガソリン、1.6リッターのディーゼルエンジン(自然吸気およびターボ)などを設定。加えて、最上級の「スティーロ・アバルト」には、170psを発生する2.4リッターの直列5気筒DOHC20バルブのガソリンエンジンが搭載された。

こうして失地回復を目指して登場したスティーロながら、フタを開けてみれば先代のブラーヴォやブラーヴァさえも営業成績が下回る大失敗モデルとなってしまう。「1台を売るごとに多額の赤字を生じさせる」とまで評され、その後のフィアット「グランデプント」やフィアット「500」の大ヒットで息を吹き返すまで、同社をしばしの経営難に追いやる惨禍をもたらしてしまった。

専用エアロとプロドライブ製足まわりを奢った希少なハッチバック

ところが現在では、現役時代に不人気だったゆえのレア車として、奇しくもカルト的な愛好家によって再評価されはじめている。

とくにアバルト版は持ち前の高性能に加えて、ダウンサイジングターボ(排気量を小さくし過給機でパワーを補う技術)化が進む直前の時代ならではの自然吸気のレスポンスや、5気筒エンジン特有のマルチシリンダーサウンドが独特のキャラクターを醸し出している。現状ではまだ安価なことも相まって、注目株となりつつあるようなのだ。

さらに、欧州および英国マーケットのみの限定バージョンとして用意された「スティーロ・シューマッハ・リミテッド・エディション」は、早くも国際オークションにコレクターズカーとして姿を見せ始めている。

この限定車のボディカラーは、フェラーリの指定色「ロッソ・コルサ」のみ。モータースポーツの名門である英「プロドライブ」社に委託してサスペンションをチューニングし、アイバッハ製スプリングとビルシュタイン製ダンパーで車高を下げるとともに、ハンドリング性能を大きく向上させている。

また、専用エアロパーツの「GPボディキット」や、18インチのOZ「スーペルトゥリズモ」アロイホイール、「Schumacher」ロゴ入りのバッジとフロアマット、そして製造番号を示すシリアルナンバー入りプレートを備えていた。この限定モデルは、持ち前の希少性とキャラクター性の高さゆえに、近い将来にはコレクターズアイテムとなる資質を秘めているという見方もある。

落札価格は驚きの48万円! 未来のコレクターズカー候補になるか

オークションに出品されたフィアット スティーロは、2.4リッターの5気筒エンジンを搭載した最高性能バージョン「アバルト・スティーロ」をベースに限定生産された「フィアット・スティーロ・シューマッハ・リミテッド・エディション」である。

F1界の「皇帝」ことミハエル・シューマッハが、イタリアの誇りであるスクーデリア・フェラーリとともにF1世界選手権5連覇を達成したことを記念し、英国市場向けに2005年に発売された200台の右ハンドル版限定車だ。そのシリアルナンバーは「#UK076」であった。

デフォルトにしたがってフェラーリの専用カラーで仕上げられたこの個体は、モータースポーツとフェラーリにインスパイアされた「シューマッハ・エディション」特有のコンセプトを現代に体現する。専用ボディキットがもたらすスタイリングやインテリアのディテールを、生産から20年の時を経た今なお忠実に残している。

販売に際しては、オリジナルの取り扱い説明書一式と、9回分の整備記録スタンプが押された記録簿も付属していた。この記録簿からは、直近では2025年4月に英国のフィアット正規ディーラーにてカムベルト交換を含む整備がおこなわれたことが記されているなど、定期的なメンテナンスがおこなわれてきたことがうかがえる。

オークションの公式カタログ作成時点で、オドメーター(走行距離計)が示していた数値は12万1258マイル(約19万4000km)。日本の感覚からすればかなりの距離を走っているといえるが、上記した整備記録が示すように、しっかりとしたメンテナンスが施されてきた個体であることは間違いないようだ。

アイコニック社では今回の出品にあたって、2000ポンドから3000ポンドのエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

そして迎えたオークション当日、巨大見本市会場の一角でおこなわれた競売では、エスティメートの範囲内に収まる2250英ポンドまで入札が進んだところで落札となった。すなわち、現在のレートで日本円に換算すると約48万円という、この種の国際クラシックカーオークションではあまり聞くことのないほど安価な価格で、競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。

もとよりエスティメートの段階から非常にリーズナブルな価格設定がなされていたのだから、これはきわめて順当な結果といっていいだろう。

スティーロが正規輸入されることなく終わった日本ではあまりピンと来ないかもしれないが、これまで1980年代から90年代のクルマたちが続々と高騰していることを考慮すれば、たとえば同時代のフォード「フォーカスST170」などとともに、近い将来には現在の数倍かそれ以上の価格で流通する可能性も否めない。

現時点に限っていえば、わざわざ高額な輸入・登録費用を費やしてまで日本に持ち込むのは現実的な話ではなく、あくまで欧州在住のカルトカーコレクター向け物件と見るべきだろう。しかし、いつかこの不遇のハッチバックが日本でも再評価される日が来るかもしれない、クラシックカー市場の面白さを感じさせる1台である。

※為替レートは1ポンド=213円(2026年5月26日時点)で換算

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