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スズキ「ジムニー」は人生を豊かにする相棒! 本気で趣味を楽しむ人におすすめの1台でした

フロントのグリルやバンパーひとつとってもカスタムのやりがいがある

趣味人ほどジムニーとの相性は抜群?

編集部員それぞれの目線で印象をリポートするAMWリレーインプレ。第8弾はスズキ「ジムニー」。東北出身の筆者は子どもの頃から見かけることが多く、「雪道のジムニーは面白いんだよ~」と言われながら育ってきました。そんな経緯もあり今回の試乗は待ってました、と心の中で密かに叫んだのは内緒です。あらためて試乗した印象をお届けします。

歴代のいいとこ取りをした現行モデル

あらためてジムニーの歴史をさらっと振り返ると、1970年に登場した初代ジムニーは、軽自動車初の本格四輪駆動オフローダーとして発売。改良を重ねながら1981年にはフルモデルチェンジを行い、2代目になった。3代目は1998年に登場し、それから20年を経て2018年に登場したのが現行型のジムニーとなる。

歴代のいいとこ取りをしている同車は、長年の技術を継承しつつ、ジムニーに求められる本格的な四輪駆動車としての性能を進化させている。

例えば「新開発ラダーフレーム」に、「FRレイアウト」、「副変速機付パートタイム4WD」、「3リンクリジッドアクスル式サスペンション」というジムニー伝統の車体構成を継承。さらに「ブレーキLSDトラクションコントロール」を全車に標準装備している。フロントに搭載されるパワーユニットはジムニー専用にチューニングした「R06A型ターボエンジン」と気になる話題ばかり。

ジムニーの説明はここまでにし、早速実体験へゴー。

ドアを開け乗り込むと、ボンネットがよく見え、車幅感覚が掴みやすそうだ(もっとも軽自動車だから全幅が短いというのもあるのだけど)。長い歴史のジムニーだが、現行型はキーでエンジン始動ではなく、ダッシュボード右側のプッシュボタンを押すだけ。今回の試乗車はマニュアルなので、ギアをニュートラルにしクラッチを踏んでから。

インテリアはとにかくシンプルだ。水平基調でありながら立体感のあるデザインがかっこいい。メータークラスターはヘアライン仕上げを採用しているあたりもグッド。表面処理には、ボコボコ、ザラザラした太陽の反射を抑え、傷や汚れが目立ちにくい表面処理を採用しているとのこと。ジムニーが置かれるシチュエーションはそんじょそこらの甘ったるいものではないということが読み取れ、なぜかホッとする。また、ハザードのスイッチ、パワーウインドウといった操作性も抜群だ。

もろもろの確認を済ませ、いざ試乗へ。

ギアを1速に……というところで、ジムニーマイスターの杉本大輔氏からの「2速発進がオススメですよ」という言葉を思い出した。杉本氏は交通タイムス社で、『Kスタイル』(現在は休刊)や『ジムニースタイル』の編集長を務めている人で、言うなれば業界でもジムニーにうるさい日本屈指の「ジムニーおたく」(失礼)といえる大先輩だ。

さて、一度ニュートラルに戻し、ギアを2速に入れそっとクラッチを繋ぎつつアクセルペダルに足を乗せるとノッキングすることなくタイヤが転がり始めた。そのまま車速に乗せながら3~4速とシフトアップ、意外にもショートストロークのトランスミッションが気持ちいい。4速で50km/hは2500rpm 、5速では1900rpm、この時、車内は静かで会話もしやすい。

いつものホームコースを走らせていると道が開けた場所が出てきたので、クルマを停車させ1速発進を試してみた。するとあっという間にエンジンが吹けきってしまった。なるほど、1速を多用するとある程度の車速に乗せるまで忙しくなるということか。

と、同時にふと気になったのが、トランスミッションの入りがやや硬いこと。これは憶測だが、1速は林道やぬかるみを走ったとき用のギア比にされているのと、ギアが抜けないように渋めになっているのかもしれない。

エンジンはRA06型の直列3気筒ターボを搭載。最初はトルクが細いのかなとも思ったが、動き出してしまえば全くそんなことは感じられなかった。個人的には3000~4000rpmの領域が気持ちよく、2速や3速といったギアをセレクトしているときに力強さを体感することができた。

乗り味は、あくまでも個人の意見だが、細かな振動に加えてステアリングを切り込むときの「ややアソビが大きい」感じが気になり、強化スタビライザーやステアリングダンパーを交換するなどで改善できるのでは……と思ったりもした。どんなパーツを付けると改善するのかなと悩むのもまたモノ好きにはたまらない。

2名乗車でも2人分のゴルフバッグは余裕

では実用性はどうか。

今回も過去に何度も登場している知り合いのKくんに手伝ってもらい、昨今ブームとなっているゴルフをテーマにキャディバッグを載せてみた。正直なところ、ゴルフバッグは乗らないだろうなあと思っていた。なぜなら、リアシートはお世辞にも座りやすいとは言えず、子どもが短い距離で乗るなら問題ない一方で大人が乗ると……。

しかし、ラゲッジスペースの容量は、VDA方式で4名乗車時が荷室床面長240mm(荷室開口850mm)だが、リアシートを倒すと980mmを実現し、室内幅は1300mmと想像よりも広い。ひょっとして入るかも? なんて疑いながら、実際にキャディバッグをラゲッジに載せると、友人のバッグサイズは8インチ(1180mm×300mm)だが、あっさりと入った。

ただし、リアシートを倒したままの状態では、バッグが固定できないためズルズルと動いてしまう。なので、今回はリアシートを元に戻してから載せてみると横Gでも滑り落ちてくることなく、無事に収めることができた。つまり8インチほどの荷であれば、2名乗車で2人分のバッグとシューズや着替えなどが入ったボストンバッグも問題なく入ることがわかった。

Kくんにもジムニーの印象を聞いてみた。

「カクカクしたデザインがカッコいいね。丸目のライトもどこか懐かしい感じがする。助手席に乗って移動した印象は、揺れは大きいけど、ジムニーだからって思うと気にならないかも。もっと乗り心地が悪いと予想していたけれど、そんなことがなくて普通に乗用車みたいで驚いた。でもシートのサイドサポートはもう少しあるといいかな。それから、自分はゴルフが趣味だから、荷室に保護剤を貼ったり、荷物の出し入れをしやすいように自分流にカスタムをしても面白いかもね」

と、想像以上に印象が良かったKくん。ただし、口を合わせて「う~ん」と思った点がひとつだけあった。それはドリンクホルダー。助手席側はあまり問題がないかもしれないが、センターコンソールに用意される純正のドリンクホルダーでは、ドライバーは体を左にねじらないと手が届きにくい。アフターパーツでエアコンの吹出口に装着できるようなアイテムが必須だと感じた。

せっかくなので、知り合いの免許を取ったばかりの大学生数名にもジムニーの印象を聞いてみた。

「レトロなデザインが可愛い」、「乗ってみたい」、「自分好みの1台に仕上げられるのがいい」

といった、意外にもジムニーの存在を知っているような回答だった。

と、いろんな意見を聞いて、あらためてじっくりエクステリアを見ると、筆者もまたいろいろとカスタム欲がムラムラと。例えば、バンパーの丈をもっと短くしたい、車高はあえて下げてもいいかも……? 背面タイヤのカバーデカールも変えたい、なんて……。ジムニーは、どんなイベント会場に行っても今もカスタムが熱い1台。自分で手を加えたり、自分流の使い方をしたり、自分流のスタイルを実現したりなど、これまでミニバンやセダンでカスタム&チューニングをして遊んでいたクルマ好きでも妄想するだけで1日を楽しむことができてしまう魅力もある。

朝から撮影を含めた試乗はいつの間にか夕方になり、あっというまの1日だった。アドレナリンが出すぎた今日の疲れをとるために、風呂に入りたいと思った。どこへ行こう……と考えたとき私は急に「MISA(ミサ)」に会いたくなった。

「MISA」とはサウナ本場フィンランドの「コンパクト」なサウナストーブ。このところ日本でも導入されることが多く、自宅サウナやテントサウナ、サウナカーといったコンパクトな室内でもしっかり温めてくれる実力を発揮するストーブとして注目を浴びている。

そのMISAに会いたくなったのはきっとジムニーに近しい接点があるからでは……。そう考えて、軽自動車であるジムニーの「コンパクトなボディ」とジムニーの特性が活かせるからこそ辿り着くことができる、狭い路地を通り抜けた先にある行きつけの銭湯へ向かうことにした。

1938年創業で透かし彫りの七福神が出迎えてくれる北千住のタカラ湯はキングオブ縁側で有名な足立区の銭湯だ。水曜日だけ男女入れ替えデーの同店には、女湯にしか用意されていないお目当てのサウナがあるのだ。ギリギリ4人入れるかどうか……のコンパクトなサウナ室に採用され温めているのは、前述のフィンランドで生産しているMISA製のサウナストーブ。

このストーブは、コンパクトながら十分なパワーを発揮。さらに湿度を上げたいときは、セルフロウリュが可能で、1杯かけるだけでアチアチな室内へと変わる。それはまるで、街なかでも十分なパワーを発揮する一方で、山遊びをすると行った場面でもトランスファーレバーで駆動方式を切り替え本領発揮するジムニーのようなもの。その姿が、個人的には似ていると思った。

なんて事を考えながらサウナ→水風呂→休憩を何セットかしながら「ジムニーはひょっとするとディープな趣味を持つ人ほど、人生を豊かにしてくれる素敵な相棒なのかもしれない」などという結論に達したのである。

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