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マクラーレン「GT」が「GTS」にマイチェンして何が変わった?「スーパーカーの酸いも辛いも全てを知った人に乗ってもらいたい」真意とは

マクラーレン GTS:ハンマーヘッドと呼ばれるフロントバンパーのデザインを変更、リアにはエアスクープが新設された

GTの魅力は何ひとつ失われていない

快適性や利便性を備えたスーパースポーツ、マクラーレン「GT」がマイナーチェンジを受け「GTS」に進化を果たしました。その実用性の高さや信頼性を確認するために、あえて京都や奈良の観光地をドライブ。日本の一般道で改めて試してGTSの魅力を再確認してきました。

実は“マイチェン”というほど大袈裟な変身ではない

マクラーレン GTがデビューしたのは2019年のこと。新生マクラーレン・オートモーティブのデビュー作MP4-12Cを彷彿とさせる控えめなスタイリングに、水平に持ち上げられたノーズやエンジン上の使えるラゲッジスペース、そして何よりも毎日乗りたいと思わせるドライブフィールは、実用スーパーカーの嚆矢というべきホンダ「NSX」やアウディ「R8 V10」を思い出せた。もちろん最新モデルゆえグランドツーリング性能は両車をうわまわっていたし、サーキット性能に至っては他のマクラーレン製ロードカーに迫る実力の持ち主だから、R8の敵ではない。

そんなマクラーレン GTがGTSへのマイナーチェンジを果たした。エクステリアのディテールとエンジンパワーアップ、内外装色の設定といったあたりが主な変更項目だが、フロントリフターの改良といったいかにも実用スーパーカーらしく嬉しい改良もあった。

もっとも、そもそも完成度の高いモデルだったから実は“マイチェン”というほど大袈裟な変身ではない。日本で登録されたGTSを改めて一般道&長距離で試してみて、そう確信した。

なぜならGTからの進化を手に取るように感じる場面がほとんどなかったからだ。乗った印象を結論から言っておくと、走りそのものは相変わらず軽快で、中間加速はスムースかつ驚くほど力強く、ワインディングロードのハンドリングに至っては他のマクラーレンに優るとも劣らず意のまま。つまりGTの魅力はGTSとなっても何ひとつ失われていなかった。

自在に操っている感覚に満ちたスーパーカー

今回は韓国のジャーナリストで親しいパク君も一緒だったから、あえて京都や奈良の観光地をGTSで走り回ってみることに。決してスーパーカーで行きたい時期と場所ではなく、フツウなら別のクルマで行こうよとなるところが、「これで行ってみよう」と思わせてしまうあたり、GTSはやっぱり実用性が高く柔軟なスーパーカーだ。走り出してしまえばなんとかなりそうだ、という気分にさせる。フェラーリならプロサングエかローマ、ランボならウルスにしかそんな感覚はない。リアミドシップのスーパーカーでは極めて珍しい。

GTSの、そして実はマクラーレン製スーパーカー全てに当てはまる日常域における最大の魅力といえば、握り締めたハンドルから前輪までの距離がとても近く感じられることだろう。なんならドライバーの全身とフロントアクスルが近くて、結果的にノーズまでの車体との一体感の強さが他のミドシップカーとは段違いだ。そのうえ、カーボンモノコックボディのおかげでパワートレインを実際に背負っているような感覚もある。

要するにドライバーを起点にして車体の前後は非常にコンパクトにまとまる。だから、すれ違うことも億劫に思われるような街中の狭い道であっても、GTSなら怖気付くことなく入っていけるし、すれ違いもさほど気にならない。要するにとても扱いやすいのだ。

これほど自在に操れる感覚に満ちたスーパーカーは今のところマクラーレンモデルの他にはないだろう。街中の低い速度域でもすでにそうなのだから、カントリーロードからワインディングロード、そしてハイウェイへと、アベレージ速度が高くなればなるほど、ドライバーと車体との一体感はより密度を増し、ひとつの塊へと凝縮する。ワインディングロードを比較的速い速度でクルーズすると、まるでカーボンモノコックボディに4輪をつけただけで走っているようなコンパクトなドライブフィールさえ感じられるのだ。

高速道路のクルージングはまさに「グランドツーリングカー」

反応の速くなったフロントリフターもやっぱり使い勝手が良くて嬉しくなった。ちょっとした段差でもすぐに使える。そもそもノーズの下辺は通常よりも高い位置で水平に切られているから段差を越える行為そのものは不得意ではない。けれどもリフターがあればさらに安心で、ロードサイドへの寄り道も精神的にラク。そんなところもドライブのパートナーとして気軽に連れていけるだろうと気にさせる要因だ。

高速道路のクルージングはその名のとおりまさに“グランドツーリングカー”というべき快適さだった。フラットかつソリッドなライドフィールも硬いボディのおかげでサスペンションがしっかりと働くため、ショックは一瞬でしかもドライバーまで届くことはない。むしろ心地よくリズムを刻むメトロノームのように思えてくるほどだった。

ゆっくり走っていても楽しいのがスーパーカーだ。ならば、みんなと共に流れに乗って走ることが得意なモデルもあっていい。もちろん、いざとなればそのパフォーマンスは一級品でなければならないけれど。マクラーレン GTSは間違いなく、そういうスーパーカーである。ツウ好み、スーパーカーの酸いも辛いも全てを知った人にこそ乗っていただきたい。

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