ギャラリー・クリーンルームとは?
英国ウェスト・サセックス州グッドウッドにあるロールス・ロイスの本社は、手作業で製造される世界で唯一の場所です。1台のクルマを製造するには600時間以上を要し、複雑な場合は4年を要することもあります。今回はロールス・ロイスのクラフツマンシップについて4回のシリーズに分けて紹介します。最終章となる第4弾は、ギャラリー・クリーンルームです。
徹底した無菌環境で守られる、唯一無二のアートピース
近年ロールス・ロイスを特徴つけてきた特別な装備であるカーボンファイバー、ウッドパネルへの装飾、スターライトヘッドライナー、そしてビスポークオプションを装着するギャラリー・クリーンルームについて紹介しよう。
「ファントム」は、クルマそのものを芸術作品を展示する空間として位置づけるという、これまでにない概念を提案している。この特別な空間はギャラリーと呼ばれ、インストルメントパネルの全幅にわたる一体型ガラスケースが設けられている。アート作品をこの空間に安全かつ慎重に取り付けるため、工場内にはギャラリー・クリーンルームが設けられている。
この部屋に立ち入ることができるのは、一度に2名の作業員のみである。汚染を防止するため、化粧品、ヘアケア製品、デオドラントの使用は禁止されており、医療グレードの糸くずの出ない手術用衣服の着用が義務付けられている。さらに、汗による湿気が完全に手袋内に封じ込められるよう、特別に調達された非粉末のラテックス手袋を使用している。すべてのギャラリーは、最終組み立ての前に紫外線検査を受ける。
ギャラリーに宿る唯一無二の作品群
これまでに制作・設置された特注のアート作品の多くは非公開であるが、ロールス・ロイスはギャラリーの無限の可能性とビスポーク・コレクティブの卓越した技術を示す例として、手織りおよび手描きによるシルクのコンポジション、何千もの木片を組み合わせた寄木細工の傑作、9万以上のステッチを施した複雑なレザー刺繍、スピリット・オブ・エクスタシーに着想を得て水中でなびくシルクの動きを再現したアルミニウム製アート、シルクで作られた立体的な蘭、職人が手描きで描いた龍のアート、微細なセラミック仕上げを施した削り出しアルミニウムのコンポジションなどが含まれる。
顧客が多様化し、ますます複雑化するビジョンと夢をかたちにしていく中で、ロールス・ロイスは真のラグジュアリーブランドとしての地位を確立し、世界で最も著名なスーパー・ラグジュアリー層に対して、今後も深い共鳴をもたらし続けていくであろう。
AMWノミカタ
ロールス・ロイスはほかのブランドでは思いつかないようなことを実践する会社だが、「ギャラリー・クリーンルーム」もそのひとつである。ファントムのダッシュボードはギャラリーと呼ばれ、特別なアート作品と展示するガラスケースが存在する。
ギャラリー・クリーンルームはガラスケースに作品を収納する際に、完璧な透明度と清潔さを保つために工場内に特別に作られた部屋で、空気中の塵や汚れを厳密に管理し、作品を傷や汚れから守るという。R&Dならともかく、自動車会社のしかも製造の現場でクリーンルームとは聞いたことがないが、このようなストーリーがやがて伝説となりブランドをより強固なものとしてゆくのであろう。
