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マセラティ MSG レーシングが2年連続優勝を達成! 波乱のフォーミュラE 東京を乗り越えた勝者の言葉とは

FIAフォーミュラE世界選手権のレース当日は豪雨に見舞われ、セカンドプラクティスに加え、フォーミュラE史上初となる予選の中止という事態に

マセラティ MSG レーシング、東京で2年連続の快挙

2025年5月17日〜18日に行われた「FIAフォーミュラE世界選手権」の第9戦東京E-Prix決勝において、マセラティ MSG レーシングの2号車をドライブするストフェル・バンドーン選手が今期初優勝を果たしました。マセラティ MSG レーシングにとって、2024年の優勝に次ぐ2連勝となった東京でのレースの様子を紹介します。

14番手からの逆転劇とは

マセラティ MSG レーシングは昨年の東京大会優勝の勢いを維持し、今大会も勝利に向けて再スタートを切った。ストフェル・バンドーン選手は完璧なタイミングでピットブーストを使用し、14番手から今シーズン初勝利を挙げた。

レース当日は豪雨に見舞われ、フォーミュラE史上初となる予選が中止となったため、FP2の結果を基にグリッドが決定された。マセラティ MSG レーシングのストフェル選手は14番手、ジェイク・ヒューズ選手は15番手からのスタートとなった。選手ふたりはスタートを無難にこなし、第1コーナーを無事に通過。大きな順位変動はなかったが、ジェイク選手はわずかに順位を落とし、フロントウイングに軽微なダメージを負った。それでも両者ともレースを続行した。

マセラティの2台は、必ず1回行わなければならないピットブースト(超高速充電)を使用するタイミングを慎重に見極めていた。ストフェルは果敢に先手を打ち、最初にピットイン。この決断が勝利を左右する一手となった。ストフェルがコースに復帰した直後、マクシミリアン・ギュンター選手が停止し、赤旗が提示された。これにより、ストフェル選手はピットブーストを使えたことにより、他車がピットに入る間に大きく順位を上げることに成功した。

ジェイク選手はストフェル選手を支える役割を果たし、2台は連携して3位と4位に浮上した。しかし、ジェイク選手はまだピットブーストを使っておらず、同じ戦略は取れなかった。さらに、ピットでのトラブルにより大幅なタイムロスが発生し、終盤には19位まで後退。前方のマシンとのギャップは28秒に広がった。その後、ストフェル選手がスピンする場面もあったが、幸いにも大きなダメージはなく、リードを25秒から20秒に縮めながらもレースに復帰。以降はリスクを避けて着実な走行を重ね、マセラティ MSG レーシングに今シーズン初勝利をもたらした。

予測不能な一日が生んだ奇跡

優勝を飾ったストフェル・バンドーン選手は、

「久しぶりの勝利でちょっと変な感じがしますが、本当に嬉しいです。予想外に見えるかもしれませんが、勝てる可能性は十分にあると思っていました。序盤に多くのエネルギーを使って早めにピットブーストを行う大胆な戦略をとりました。

作戦通りにすべてが進むのはフォーミュラEでは非常に珍しいのですが、今日はそのとおりに事が運びました。ピットブースト後のエネルギー管理は大変でしたが、エンジニアのティボーが冷静にサポートしてくれたおかげで、必要なペースコントロールとバッテリーの節約ができました」

とコメントした。またマセラティ・コルセ責任者であるマリア・コンティ氏は、レース後このように語った。

「予測不能で信じられない1日でした。2024年に続く東京での勝利は、感無量です。この市街地サーキットは非常にテクニカルで魅力的であり、雨とピットブーストにより、さらに予測不可能な展開となりました。世界でも象徴的な都市・東京の中心で、温かいファンの皆さまに囲まれて、忘れられない感動を体験しました。

マセラティが築いてきた約100年のモータースポーツの歴史に、またひとつ記憶に残る章を加えることができました。チームの努力、完璧な戦略、そしてストフェルの決意が、この勝利をもたらしてくれました。明日も全力で戦い、トップ争いに挑みます」

AMWノミカタ

現在のフォーミュラEはどのチームもGen3の共通のプラットフォーム、バッテリー、ボディー、タイヤを使用する。故に大きな差を生み出せるのはチームの戦略となる。通常は300kWのモーターで2輪を駆動させるが、レース中に8分間だけ350kWのパワーを生み出し、4輪駆動で走行できる「アタックモード」を使用することができる。この「アタックモード」をどのタイミングで使用するかが勝敗を分けるひとつの鍵となる。

また、第8戦ではレース中にピットレーンで30秒間で600kW超高速充電を行い、レースカーに10%(3.85kWh)のエネルギーを追加供給する新機能「ピットブースト」を各チームが行わなければならないルールとなっていた。ピットに入れるタイミングも戦略の重要な鍵となる。今回のマセラティはどのチームよりも早く「ピットブースト」を行い、レース後半にタイムロスをなくす作戦を立てた。スタート順位が後ろだったため、いわば「賭け」に出た訳だが、これが功を奏した結果となる。

これまでのフォーミュラレースと違いエンジンサウンドはなく、静かなレースとなるが、電力の放出と回生なども巧みに制御することが求められるじつにインテリジェントな戦略ゲームであることがわかる。都市型レースというのも魅力である。ルールが浸透すれば今後大きくファンを拡大できるのではないだろうか。

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