モンスター級のパワーと異次元の航続距離を両立するBEV
アウディは電動グランツーリスモ「e-tron GTシリーズ」を全面的にアップデートし、S e-tron GTと、アウディ史上最強の市販車となるRS e-tron GT performanceを発表しました。e-tron GTはアウディのフラッグシップEVグランツーリスモとなります。一充電走行距離は約20%伸び、Sで648km、RSで631kmを達成。最大150kW急速充電対応で利便性も向上とのこと。また全世界299台の限定モデルも同時発売です。
ポルシェと共同開発のプラットフォームをさらにアップデート
アウディ「e-tron GT」は2021年に発売され、ポルシェと共同開発した電動用「J1 performanceプラットフォーム」を採用する初のグランツーリスモとして注目された。今回の刷新では快適性とスポーティ性能を高次元で両立し、デザイン、バッテリー性能、動力性能、サスペンションに至るまで大幅な改良が施されている。
外観はワイド&ローのプロポーションを持つ4ドアクーペスタイル。ボディ同色のシングルフレームグリルや新コーポレートアイデンティティである2次元デザインのフォーリングスが現代的な印象だ。RS performanceはハニカム構造の専用デザインを採用し、よりスポーティな存在感を演出。サイドビューは伸びやかなルーフラインと彫刻的な造形を備え、リアは格納式スポイラーや新型ディフューザーが特徴的だ。
パワートレインは総電力量105kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、従来より容量を12kWh増加させつつも重量を9kg削減。急速充電は最大150kWに対応し、33分で10~80%まで充電可能となった。一充電走行距離(WLTC)は従来比20%アップで、S e-tron GTで648km、RS e-tron GT performanceは631kmを達成している。
スーパーカーレベルのハイパフォーマンスを発揮する4ドアクーペ
最高出力はS e-tron GTで500kW(680ps)/740Nm、RS e-tron GT performanceでは680kW(924ps)/1027Nmに達する。RS performanceはアウディ史上最もパワフルな市販モデルで、0-100km/h加速はわずか2.5秒(最高速度250km/h)、Sモデルでも3.4秒(最高速度245km/h)を記録する。さらにPush-to-Pass機能により、RSでは通常走行中も一時的に70kWを上乗せでき、瞬間的な加速性能を発揮する。
シャシーには新開発の2チャンバー/2バルブエアサスペンションが標準装備され、オプションでアクティブサスペンションを選択可能。これにより快適性とダイナミクスを両立する。さらにオールホイールステアリングを備え、低速域での小回り性と高速域での安定性を両立する。RSモデル専用のRS1、RS2カスタムドライブモードは、サーキット走行に最適だ。
内装には環境に配慮した素材が多用され、ダイナミカ(リサイクルポリエステルを含むマイクロファイバー)、カスケード(染色なしのリサイクル繊維ファブリック)、エコニール(漁網リサイクルナイロン)などを使用し、サステナブルかつ上質な仕上がりを実現。12.3インチのアウディバーチャルコックピットや10.1インチMMIタッチスクリーンを備え、バッテリー温度や急速充電予測などの新しい情報表示も可能となった。また、標準のスマートパノラマガラスルーフはPDLC技術により透明・不透明を切り替えられる。車両価格はS e-tron GTが1728万円、RS e-tron GT performanceが2469万円。
さらに全世界299台限定の「Audi RS e-tron GT performance exclusive edition」も発表された。日本には25台のみ導入され、価格は3129万円。専用色「アラビカグレーメタリック」、専用21インチホイール、カーボンカモフラージュパッケージなどを装備し、インテリアにはミントグレーとモラバイオレットの専用カラーを採用する。限定車にはアクティブサスペンションやオールホイールステアリングも標準装備される。
【AMWノミカタ】
新型e-tron GTシリーズの最大の進化は、バッテリーと駆動系の改良により走行性能と航続距離が同時に向上した点にある。Sで648km、RSで631kmという数値は、従来の「走り重視のEV=航続距離が短い」というイメージを覆し、日常ユースとロングツーリングの両方に対応できる実用性をアピールする。
また、RS e-tron GT performanceは680kWの圧倒的な出力を誇り、アウディ史上最強の市販車という称号を得た。680kWは約924馬力に相当し、スーパースポーツモデルと比べても遜色のないパフォーマンスを実現した最強の4ドアクーペと言える。さらにサステナブル素材や新世代デザインCIの採用により、ブランド全体の方向性も鮮明となった。
日本のBEV市場はテスラやBYDなどの新興ブランドにより拡大しているが、既存ブランドのBEVモデルの販売は依然苦戦している。S e-tron GTは1728万円、RS e-tron GT performanceは2469万円と高価格帯になるが、デザイン、巡航距離、パフォーマンス、シャシー性能、環境性能などの進化はBEVに否定的な人々にも魅力だと思う。
