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世に出るはずのないラ フェラーリの開発車「F150 M4」が登場!公道もサーキットも走行不可でも約1億7882万円で落札

121万5000ドル(邦貨換算約1億7882万円)で落札されたフェラーリ「F150 M4」(C)Courtesy of RM Sotheby's

F150 M4プロトタイプがオークションに登場

フェラーリ初の市販ハイブリッド「ラ フェラーリ」の開発過程で誕生したプロトタイプ「F150 M4」が、2025年8月15日に開催されたRMサザビーズのモントレー・オークションに出品されました。開発段階で実走テストに使用された実験車両で、通常はメーカー内に保管されます。市場にその姿を現すことは極めて稀なことなのです。

フェラリスタなら喉から手が出るほどほしい開発車両

「288GTO」、「F40」、「F50」、そして「エンツォ」に続くスペチアーレ(特別なカスタマーにのみ販売される、限定生産を前提としたスペシャルモデル)として2013年に誕生した「ラ フェラーリ」は、フェラーリ初の市販ハイブリッドカーだった。

そのパワーユニットは、この時代にシリーズモデルとしてフェラーリが生産していた「FF」や「F12ベルリネッタ」をベースに、独自のチューニングを施した6262ccのV型12気筒DOHC自然吸気エンジンを核に、F1マシン由来のハイブリッドシステム「HY-KERS」を組み合わせた。

エンジン単体で800ps、さらにエレクトリックモーターが163psをサポートすることで、システム全体の最高出力は963psに達した。それが当時のスーパースポーツのなかで最高水準の運動性能を実現したのは言うまでもない。

フェラーリが「F150」のプロジェクトコードを掲げて、ラ フェラーリの開発をスタートさせたのは2010年前後のこととされる。そして、生産型が完成するまでの間には、当然のことながらさまざまなプロトタイプ(試作車)が製作された。

通常、このようなプロトタイプは、その役割を終えた後はメーカー自身によって保管されるか、あるいは廃棄されるのが一般的だ。しかし、フェラーリの熱狂的なエンスージアストにとっては、それさえも貴重なコレクターズアイテムとなる。

開発テストを重ねたプロトタイプ

今回RMサザビーズがモントレー・オークションに出品した「F150 M4(ムレット4)」と呼ばれるプロトタイプもその1台だ。実際に製作されたのは2011年で、フェラーリは主に、前述のパワーユニットの開発を直接の目的として、フィオラノ・サーキットや公道での実走行テストに供していた。

V型8気筒エンジンをミッドシップする「458イタリア」に採用されていた、アルミニウム製の「F142」プラットフォームを改造して製作されたF150 M4に与えられたボディデザインは、ラ フェラーリのそれとは一切の関連性がないアピアランスを持っていた。マットブラックにペイントされたボディのフロントビューは、独自のエアインテークとフェンダー、そして巨大なエアアウトレットを持つボンネットなどによって、ミステリアスとも感じる独特なデザインに。

トランクリッドにはエンジンルームへのエアフローを高めるための追加の冷却ベントが採用されている。ヘッドライトやテールライト、サイドミラー、フロントフェンダーに埋め込まれたエンブレムなどには、458イタリアの面影がわずかに残るが、それには特別な意味があるわけではない。

実験車両としての貴重なディテール

一方でインテリアには、458イタリアのデザインがほぼ継承されている。ブラックのレザーシートとタン色のカーペットは、F150 M4が製作された時のままの仕様だ。ダッシュボード上に走行実験中に必要となるトグルスイッチを新たに装備したことや、ステアリングホイールのセンターにあるカバリーノ・ランパンテ(跳ね馬)のバッジの上に、高電圧を警告するステッカーが貼られていることなどは、F150 M4という実験車が製作された背景を知る上で重要なディテールと言える。

今回のチャンスを逃せば、再び入手できる機会は永遠に訪れないとも考えられるF150 M4。このオークションに対する話題性はやはり高く、RMサザビーズもその事情を考慮して、90万ドルから120万ドル(邦貨換算約1億3246万円から1億7662万円)という予想落札価格を提示した。

ちなみにF150 M4は、公道はもちろんのこと、サーキットでの走行さえも認められないことが、ファーストオーナーへのデリバリー時にフェラーリとの間で取り決められていたモデルだ。しかし、フェラーリのコレクターにとって大きな問題とはならなかったようだ。それは、最終的に121万5000ドル(邦貨換算約1億7882万円)で決着した落札価格が、何よりも的確に物語っている。

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