「ツーリング」の名称は新時代を迎え「スピードトップ」に変換された!
ジャパンモビリティショー(JMS)2025のBMWブースのなかで、唯一仕切りのある空間に展示され来場者の注目を集めていたのは、最新のデザインスタディ「BMWコンセプト・スピードトップ」ではないでしょうか。3ドアツーリングスタイルのボディに最強のV8エンジンを搭載し、世界で70台だけ限定生産されることが発表されています。BMWの持つ美学とクラフトマンシップ技術の粋は魅力的です。
3ドアシューティングブレークの新たなるフォルム
スピードトップは、BMWが培ってきたツーリングの伝統に新たな解釈を加えた3ドアのシューティングブレークスタイルのモデルだ。ドライバーが車両の中心に位置するロングノーズ、ショートデッキフォルムはBMWの力強いパフォーマンスを予感させるが、さらに1930年代に製造された328ツーリングクーペの機能的な美しさや、1998年にピュアドライビングカーとして登場したZ3クーペ/Mクーペを想わせる3ドアクーペを洗練したデザインが特徴。
デザイン統括責任者エイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は「静止していても躍動感と優雅さを感じさせるのがBMWの本質だ」と述べる。その言葉どおり、スピードトップの外観は力強さと気品が融合し、フロントマスクにはかつてのE9クーペやE24型6シリーズを思わせるシャープなシャークノーズ形状と、かつてのZ8を感じさせるスリムなLEDヘッドライト、現代的な光るキドニーグリルが組み合わされる。V字型のボンネットラインが中央スプラインとしてルーフからリアスポイラーまで一直線に続くことで、流れるようなプロポーションを生み出している。
エクステリアの最大の特徴は、BMWが初採用したグラデーションペイントだ。ルーフ部分に採用されたペイントはフローティング・サンストーンマルーンからフローティング・サンダウンシルバーへ色が移り変わり、光の角度によって表情を変え、ダイナミックな造形をさらに際立たせる。
力強いリアフェンダーの盛り上がりとワイドなショルダーラインが車体の安定感を強調し、2トーン仕上げの専用14本スポークホイールがエレガントな印象を添えている。
高品位な素材を職人技で現代的なキャビンデザインに融合
インテリアはBMWの熟練職人集団のマニュファクチュア部門によって製作される。室内は外装色と調和するサンダウン・マルーンとムーンストーン・ホワイトの2トーンで統一され、上質なナッパレザーにはブタペストスタイルと呼ばれる伝統的なブローグ(穴飾り)加工が施されている。この均一で精緻なディテールは中欧の高級靴の意匠を彷彿とさせ、伝統的な職人技を現代的キャビンに調和させている。またルーフライナーには、外装のスプラインデザインを再現した間接照明が組み込まれ、夜間走行時には穏やかな光が室内を包み込む。
パワートレインには、BMW現行ラインアップ中で最強となるV8エンジンを搭載。具体的な数値は未公表だが、圧倒的なトルクと高回転域での滑らかな吹け上がりを両立し、長距離ツーリングにも対応。走りの質感だけでなく、音響面でもBMW伝統のエンジン音である、メカニカルシンフォニーを楽しめる設定となっている。
BMWブランド&プロダクトマネジメント担当シニアVPのベルント・ケルバー氏は、「昨年発表したコンセプト・スカイトップが50台限定で高い評価を得たことを受け、今年は70台限定でスピードトップを生産することを決めた」とコメントしている。すでに注文受付は開始されており、コレクターズアイテムとしての価値も高いのではないだろうか。
【AMWノミカタ】
ジャパンモビリティショー2025のBMWブースで展示されていたBMWコンセプト・スピードトップは、文句のつけようのない美しいスタイリングだ。3ドアのツーリングモデルということでシューティングブレークスタイルと表現した。しかし、BMWは「スポーティなツーリング」と表現しており、本質的にはパフォーマンスと美しさを楽しむためのモデルなのだろう。
電動化が進みクルマがより機能や効率で語られるなかで、BMWが8シリーズをベースに製作されたとも言われているこのモデルをあえて展示した意図は、クルマはこれからも人間を中心に感性を揺さぶる存在として進化し、BMWならではの電動化時代の最適解を訴えたかったのではないだろうか。
クルマを工業製品として見る人のためではなく、芸術的な美しさや、官能的なサウンド、スリリングな運転体験と安らぎ、過去のヘリテイジとクラフトマンシップをも楽しめる、そんな感性豊かな人に向けたのが「BMWコンセプト・スピードトップ」のように思えた。乗り手の感性が試されるクルマなのかもしれない。ただ、残念ながら日本への導入は予定されていないという。
