良好な視界と快適性が大幅進化
シトロエンのコンパクトハッチ「C3」がフルモデルチェンを行い、4代目になりました。丸みのあるデザインや見晴らしのよい着座位置など、気軽に使える工夫が盛り込まれたモデルです。街中で扱いやすく、日常の移動にちょうどいい存在として進化した新型C3。このクルマがどんな魅力を持っているのか、実車で確かめてみました。
表情豊かに仕上げられたスタイリングと遊び心満載のインテリア
今回試乗したのはシトロエン「C3 MAX ハイブリッド」。メーカーの資料には“全高は従来比+95mm”とあり、シートポジションもBセグの平均より約100mm高い(旧型C3より76mm高い)。とはいえ決してAIRCROSS SUVなどではなく、遡れば2CVに辿り着く、あくまでもシトロエンの実用コンパクトカーの系譜にあるのがこのC3だ。C3としては数えて4世代目となる。
2022年のコンセプトカーOLI(オリ)の要素を取り入れた前後灯体やオーバルの最新CIロゴをアクセントにしつつも、後部ドアのアウターハンドルもウインドウエリアにカモフラージュしていないなど、全体のデザインはハジけ過ぎず比較的オーソドックス。骨格そのものは箱形の大真面目なもので、それを柔らかな曲線と曲面で包み込むことで表情豊かに仕上げられたスタイリングだ。
ひと昔前ならやや風変わりなスタイルこそシトロエンだったが、試乗車が赤いボディだったせいか、普遍的に見せて、より広いユーザーに受け入れられることも大事なこと……かもしれない。
インテリアもデザインそのものはじつにシンプル。ステアリングホイールは真円から上下をやや潰した形状だが、その上からメーターに目をやるレイアウトに初代C4を思い出す。ちなみにインパネ上面はスッキリとしたフラット形状で、そのラインの向こうに重なるようにエンジンフードが薄く視界に入り、車両感覚を掴みやすくしている。ミニマルで雑念を排した空間としたコンセプトは“C-ZEN”と呼ぶそうで、フランスでは日本の“禅”の人気は相変わらず高いらしい。
ほかに裏にソフトパッドが貼り込まれたインパネのファブリックを始め、“have fun”などのメッセージが記された各ドアの赤いタグや、リアウインドウの黒セラ部分にパリの名所や雄鶏のイラストが描いてあったり、グローブボックスを開けるとアミ/メアリ/2CV/Hトラック/トラクシオン・アバンの可愛らしい姿が現れたりと(いずれも写真参照)随所に遊び心もちりばめられている。
ワンコもまったりするほどのリアシート
また現代文明に慣れ親しんでいると(!)新鮮な思いも。エンジンキーがステアリングコラムのキーシリンダーに差し込んで捻る方式であったり、そもそもキーを携帯してクルマに近づいても、キーフォブのアンロックボタンを押して初めてドアが解錠される仕組みだったりするのはその一例。出自のプラットフォームは“CMP”だが世代、種類は複数あり、そのなかで比較的簡素な仕様をベースとしているらしく、そうしたシンプル指向の仕立てになっているようだ。とはいえ試乗車は上級仕様のMAXで、前席左右のシートヒーターステアリングヒーターは標準装備になっている。
一方で「何だこれは!?」と感動したのがリアシート。座面クッションは押してみると拳骨が半分は沈むほどのソフトさ。実際にシートに腰を掛けると、座った瞬間に目をつむりたくなるほどの心地よさ。で、この快適さをたいそう喜んだのが我が家のシュンで、愛用のマットを座面の上に敷き、いつものように乗せてみると、マット越しでも自分の体重(15kg)でシートが沈み込む“フカッ!”とした心地よさに気づいたようで、まるで家のソファの上にいるつもりで(!?)、乗った次の瞬間からウトウトし始めたほど(証拠写真は画像ギャラリーにてチェック)だった。もちろん後席は背もたれがやや起き、座面が高めで、人にもスッキリと快適な着座姿勢がとれるようになっており、頭上空間、レッグルームもタップリとしている。
それと快適な走りもこのC3の見るべき部分だ。とくに乗り心地は“プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)”と呼ぶ、いわばダンパー・イン・ダンパーを用いた効果が絶大。走っていると路面からの小さな入力をいなして吸収しつつ、全体としてフラットライドを実現しているところがじつにシトロエンな味付けだ。
1.2Lの3気筒ターボ(101ps/205Nm)にモーター(15kW/51Nm)を組み合わせた48Vマイルドハイブリッドのパワートレインも、じつに爽快にC3を走らせる。可能な場合は30km/hまでならモーター走行し、ベルトスターターによりエンジン始動もスムースなこともあり、ごく一瞬3気筒特有の小さな振動が短く伝わる場面もあるが、街中から高速走行まで十二分な力強さを発揮してくれる。
