幼少期からのカート経験で培ったバトル時の冷静な判断力
毎年、新たな才能をもつドライバーが登場する軽自動車レース「東北660選手権」ですが、2025年はひときわ印象的だったのが”20歳”の大学生です。経験豊富なライバルを相手に、速さだけでなく安定感のある走りもあってシリーズを制しました。なぜこれほど完成度の高い走りができたのか。そして、その先に見据える次のステージとは。若きチャンピオンの歩みを追います。
圧倒的な強さでシリーズを制した20歳の大学生
毎年シーズンごとに新しいヒーローが誕生し、レースを盛り上げる東北660選手権の3クラス。2025年はなんといっても、弱冠20歳の大学生、高岡威の圧倒的な強さと速さに耳目が集まった。
まずは2025年の戦績を振り返る。開幕戦の予選こそ5番手だったが、決勝では3位へ躍進。そして第2戦と第3戦は連続ポール・トゥ・ウィンを成し遂げた。シリーズチャンピオンを確定させて臨んだ最終戦も、予選2番手から追い上げて3連勝をもぎ取った。
終わってみれば2位に32ポイント差。ここ一番の速さはもちろん、冷静なレース運び、そしてポイントを取り逃がさない安定感は、まるで経験豊富なベテランドライバーのようだ。聞けば幼少期からカートレースに参戦していたそうで、路面コンディションの変化を苦にしない対応力の高さや、接近バトル時における優れた判断力、危険回避能力は、熾烈なカート経験によって培われたのだろう。
完成度の高いマシンと類まれな適応力
18歳になると運転免許を取得し、大学では自動車部に入る。また東北660耐久レースでもチーム躍進の大きな原動力となり、所属する日本大学工学部は学生クラスでシリーズ2位となった。愛機L275は「レースがしたい」と探していたときに出会い、東北660で活躍するオートリサーチ米沢の車両ということで、完成度が高く購入してから変更した箇所は一切ないという。あえて言えば、路面コンディションに合わせてダンパーの減衰力やタイヤの空気圧を細かくセットアップした程度だ。
改造範囲が大きく制限されている3クラスで勝利するには、高度なテクニックとセッティング能力が必要不可欠である。今シーズンの東北660選手権は、新路面に変わったスポーツランドSUGOが雨と猛暑、エビスサーキット西コースもヘビーウェットと決していいコンディションではなかった。セットアップに苦しむベテランドライバーも多いなか、高い適応力を発揮したのはカートの経験があってこそか。
東北660から世界へ!WRCへの大きな一歩
2025年を代表するドライバーとなった高岡だが、現在さらに大きなチャンスが舞い込んでいる。それはTGR(トヨタ・ガズーレーシング)が若手ドライバーを発掘・育成する目的で実施している「WRCチャレンジプログラム」で、高岡は100名のなかから見事5名のファイナリストに選ばれたのだ。
1次選考をクリアできるのは約20名という狭き門。続いて適応力を含むドライバーの総合力が試される2次選考は、ウェットコンディションで見せた高岡の走りが高く評価され、12月にフィンランドでの最終選考に挑むことになった。季節やロケーションから、雪上もしくは氷上でのテストになると予想される。
高岡は次のようにコメント。
「後輪駆動車の氷上走行はそれなりに経験しており、少しは自信があるので全力を尽くして頑張ります」
東北660から公認競技へ進んだドライバーは多いが、WRC(世界ラリー選手権)への挑戦は初めてだ。最終選考に合格することを願いつつ、高岡の今後に注目していきたい。
