世界最高峰の走りとカオスなパドック。ドイツ在住ライターが体験した濃密な1日
いよいよモータースポーツのシーズンが開幕したドイツ。開幕戦が雪で中止となったニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)の第2戦にも、レッドブル・レーシングの現役F1ドライバーで最高峰と言えるマックス・フェルスタッペン選手が再参戦するということで、現地は開幕戦に勝る熱気に包まれました。アウトバーンを駆け抜け、パドックの裏側から驚きのメディアセンターの朝食まで、現地在住ライターがリアルなNLS第2戦の1日をお届けします。
春の陽気に包まれる草レースのニュルに、F1最高峰ドライバーが降臨!
さて、いよいよドイツのモータースポーツも開幕し、NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)の開幕戦へ行ったものの、レース当日の朝には雪景色が広がり、残念ながら中止となってしまいました。気を取り直して、その翌週に開催された第2戦で再びニュルへ。
2025年にニュルのレースへ参戦できる専用ライセンス(パーミット)を取得した、レッドブル・レーシングの現役F1ドライバーであるマックス・フェルスタッペン選手が、メルセデスAMG GT3を駆りNLSへ参戦するということで、今度こそは(笑)ととても楽しみにしていました。
金曜日のパドックはフェルスタッペン効果でどこも大盛況
NLSは1日完結レースで、土曜日の朝8時半から10時に予選。そのあとピットウォークを経て、12時にレーススタートとなります。前日の金曜日が占有走行日で、任意でテスト走行をしたり、ゲストやスポンサーの同乗走行をしているチームが数多くあります。レース日ではないものの、のんびりとした雰囲気ながら多くの人で賑わいます。
フェルスタッペン選手もこの日に練習走行をする可能性があるため、朝早く起きてニュルへ愛車を走らせました。自宅からニュルブルクリンクまでのアウトバーンでは、シュトゥットガルトなどのいくつかの渋滞区間を通るのですが、基本的に金曜日はかなり混雑します。前週のNLS開幕戦の際には短い休憩を2回取っただけなのに、約8時間もかかってしまいましたが、この日は快調に流れていました。
ニュルの駐車場に到着したものの、フェルスタッペン効果でしょうか、どこも満車状態。偶然にも空きスペースを見つけてラッキー! 急いでパドックへ。
2025年にフェルスタッペン選手がニュルを訪れた際にはめちゃくちゃ警備が厳しくて、ほとんど彼の姿を見ることができませんでした。今回はチームスタッフの護衛はあるものの、ピットロードのシャッターは開けられており、彼の様子がよく見えました。もちろんピット内は関係者以外立ち入り禁止です。
エイプリルフールの冗談から誕生したBMW M3ツーリング GT3!?
このNLS第2戦の目玉は、フェルスタッペン選手だけではありませんでした。なんと、BMWが「M3 ツーリング」のGT3版を出してきたのです(シャシーや技術基盤は純粋なレーシングカーであるM4 GT3 EVOと共有)。「なんですか、コレは!?」と一瞬目を疑いました。
もともとは2025年のエイプリルフールに、冗談でBMWがBMW M3 ツーリング GT3のフェイク画像をSNSへ投稿したところ、あまりにも反響が大きかったため「実際に作っちゃった!」というユーモアたっぷりの企画なんだそうです。しかもBMWモータースポーツが、わずか8ヶ月で実車を作り上げたという、異例のプロジェクトとなったのが、このクルマです!
もちろん、BMW M社が作るのだから超本気。NLSを予行練習として、2026年5月に行われるニュルブルクリンク24時間レースへの参戦を表明したそのマシンの正式名称は「M3ツーリング 24H」です(笑)。しかもボディに描かれたコピーが秀逸でシャレが効いています。
「YOU DREAMED IT. WE BUILD IT.」、つまりキャッチコピー風に言うなら「あなたの夢を、現実に!」とか「その夢を、我々が創る」でしょうか。
メディアセンターの朝食は「生のブタひき肉パン」で歓待!?
さて、迎えたNLS第2戦のレース日。前レースが雪で中止となったことから、とてもワクワクする実質的な開幕戦です。朝7時半頃にメディアセンターに到着してさっそく朝食をいただいたのですが……「メットブロートヒェン」という生の豚挽肉が載ったパンが並んでいてちょっとビックリ!
じつは、このメット(豚の生挽肉)の取り扱いは、ドイツの「動物性食品衛生規則(旧・ひき肉令)」という国家レベルの超・厳格な法律で守られているんです。製造時の温度管理はもちろん、「製造したその日のうちに販売・消費しなければならない」という絶対的なルールがあるので、一般的に加熱用として販売されている挽肉とはまったく別レベルで違って新鮮で、安心して食べることができます。美味しさはわかっていても、朝からはなかなか手が伸びず、私は別のパンとコーヒーをいただきました(笑)。
この日のニュルには、スーパーGTやスーパーフォーミュラで活躍する坪井 翔、福住仁嶺、小高一斗、小山美姫選手をはじめとした多くの日本人選手の姿を見かけました。普段、日本人選手とはなかなか接する機会のない私にとって、みなさんの活躍を目の前で観ることができる、とても嬉しいひとときです。
F1王者に4度も輝いたドライバーの超本気アタック、BMWの冗談から生まれたGT3マシン、そしてメディアセンターで振る舞われる生肉パン。ニュルブルクリンクという舞台は、モータースポーツの最高峰たる格式と、クスッと笑えるようなカオスな日常が混然一体となっています。そこに頼もしい日本人ドライバーたちの姿が加われば、もはや言うことはありませんね。厳しい冬を越えたドイツのサーキットで、第2戦目にしてようやく最高の「春」の訪れを感じ取ることができました。
