妥協なき性能を追求した究極のスポーツカー
生産された瞬間からコレクターズアイテムとなる特別なクルマたちが、オークションを賑わせています。アメリカで開催されたポルシェ専門の競売に、走行距離わずか190kmというほぼ新車状態の「718ケイマン GT4 RS」が出品されました。総額約1000万円にもおよぶ希少な純正オプションを満載した、究極のミッドシップスポーツが持つ圧倒的な価値と魅力に迫ります。
ポルシェの最高峰モデルに本気で挑んだ意欲作
生産された瞬間からコレクターズアイテムとなる特別なクルマは、とくに近年では自動車メーカーも積極的に展開している。なかでもスーパーカーやスポーツカーの分野では、新車に近い高年式の車両がオークションを賑わす事例が多くなっている。
アメリカ合衆国のオークションハウスであるブロードアロー・オークションズ社が、2026年4月25日にカリフォルニア州で開催したポルシェのワンメイクオークション。そこには、ほぼ新車に近いポルシェ「718ケイマン GT4 RS」が出品された。その驚くべきオプション内容とマーケットの評価に、現代ポルシェの愛好家から注目が集まったのである。
2代目となるポルシェ「987ボクスター」のクローズド版として、2006年にケイマンが登場して以来、多くの愛好家たちが卓越したドライビングダイナミクスを称賛してきた。しかしその一方で、ポルシェが長年トップレンジに据えてきたポルシェ「911」の優位性を守るため、ケイマンの性能は意図的に制限されているのではないかと疑われていたのも事実である。
ところが2015年ごろ、ポルシェの市販GT部門責任者であるアンドレアス・プロイニンガーと、研究開発責任者のヴォルフガング・ハッツが動いた。すでに素晴らしい性能を誇っていたポルシェ「ケイマン GT4」に、自然吸気エンジンの最高峰であるポルシェ「911 GT3」系のエンジンを搭載する方法を模索し始めたのだ。これにより、ケイマンのオーナーたちを悔しがらせていた状況は一変する。
こうして量産モデルへと進化したのが、718ケイマン GT4 RSである。最高出力500psを発生する4.0リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンを搭載。機能的なサイドエアインテークと、9000rpmというレッドラインによって引き立てられた偉大なメカニズムのシンフォニーは、ポルシェに精通したエンジニアたちをも魅了した。
アメリカを代表する自動車専門誌による徹底的なロードテストを経ても、「一切の妥協を許さないケイマンである」という結論が下されている。
総額6万4000ドルもの純正オプションを装備
このほど出品された718ケイマン GT4 RSは、北米カリフォルニア州の正規代理店を介して新車としてデリバリーされた個体だ。当時の総額で6万4000ドルという、非常に高額な純正オプションがふんだんに装備されている。
もっとも重要なのは、1万3250ドルの「ヴァイザッハ・パッケージ」である。カーボンファイバーがむき出しになったフロントのトランクリッド、サイドエアインテーク、ドアミラー、リアウィングが含まれる。さらに、「サテン・ホワイトゴールド・メタリック」塗装の20インチ鍛造マグネシウムホイール、フロントアクスルのリフト機構(段差を越える際に車高を上げる機能)、PCCB(強力な制動力を発揮するカーボンセラミックブレーキ)なども追加され、これらの料金だけで1万5640ドルに上った。
さらに、オーダー時には1万4750ドルの追加料金を要したPTS(メーカー特注の特別塗装色)のエクステリアカラー「アズールブルー356」も選ばれている。ポルシェ創業期に採用されていたペイントを引用したこのカラーは、「緑がかったニュアンスを帯びた深みのあるミディアムブルー」と表現されており、ディープシーブルーのステッチが施されたブラックレザーの内装とみごとにマッチしている。
718ケイマン最後の最強ICE搭載にして「RS」モデルという特別な限定車の価値とは!?
この718ケイマン GT4 RSには、魅惑的なエキゾーストノートを奏でる社外製エキゾーストシステム(外した純正品も添付)や、特別なシートインサートも装備されている。納車時に付属するアクセサリー、新車時のウィンドウステッカー、ワンオーナーであることを記した車両履歴レポートなども添付されての出品となった。
公式オークションカタログ作成時点でのオドメーターは、納車前テスト走行分を含むわずか119マイル(約190km)を指していた。また、フロント周りやロッカーパネルにはPPF(飛び石などの傷からボディを守る透明フィルム)が施され、美しさを保っている。
ブロードアロー・オークションズ社は「現代ポルシェの愛好家にとって究極の1台である」とアピール。充実したオプションで低走行距離、さらにメーカー保証の残存期間が長いことなどを評価し、23万ドルから26万ドルの予想落札価格を設定した。
迎えた競売では順調に入札が伸び、予想落札価格の範囲内である24万800ドルで落札された。現在のレートで日本円に換算すると、約3756万円となる。
718ケイマン GT4 RSの新車時における北米販売価格は16万2000ドルだった。豊富なオプションのために支払った対価(6万4000ドル)を考慮に入れると総額22万6000ドルという価格を考えると、今回のハンマープライスは間違いなくプレミア価格だったといえるだろう。
やはり由緒あるポルシェのRS(レーン・シュポルト)モデルであることと、ICE(純粋なガソリンエンジン)を搭載したケイマン・シリーズの、掉尾(とうび)を飾る最強モデルということを考えれば妥当な評価なのかもしれない。
※為替レートは1ドル=156円(2026年5月2日時点)で換算
