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商用車のトヨタ「プロボックス」がスポーツカーを抜き去る。手動ピット作業で挑んだS耐チャレンジの全貌

トヨタ・プロボックス:商用車のイメージを覆すしなやかで安定したコーナリング性能が走りの要となった

サーキットを揺らした黄色い商用車! 栄建設プロボックスが挑む熱き下克上

「なんだあのプロボックスは!?」——スポーツランドSUGOの観客席とパドックがどよめいた。スーパー耐久の入門カテゴリー「S耐チャレンジ」に登場したのは、街で見慣れた黄色い商用車だった。北海道岩見沢市の栄建設が運営する「SAKAE MOTORSPORTS」は、フロアジャッキと十字レンチを用いる手動ピット作業を完璧にこなし、またファイナルラップにゴールライン寸前で抜き去るという劇的なレース展開を披露し見事クラス優勝を飾った。彼らはなぜ身近な働くクルマでサーキットへ挑み、いかにして勝利を掴んだのだろうか。その秘話をリポートしよう。

身近な工具と情熱で掴み取ったクラス優勝! S耐チャレンジの革新的ルールでプロボックスが本格レースに参戦

スポーツランドSUGOのパドックや観客席、そしてライブ配信のコメント欄に、驚きと歓喜の声が広がった。普段、街中や工事現場でごく当たり前に見かけるあの四角い商用車が、爆音を響かせながらサーキットのコーナーを果敢に攻め立てていたからだ。

スーパー耐久シリーズの入門カテゴリー「S耐チャレンジ」SUGOラウンド。上位争いの渦中に飛び込んだそのマシンは、ストレートスピードや車重でのハンデを跳ね返し、テクニカルなSUGOのコーナー群を道路公団ルックの810号車(ゼッケンの810は「8月10日道の日」にちなんで採用)黄色いプロボックスがスムースな荷重移動でクリアしていく。

圧巻だったのは、レース中盤に迎えた義務ピットインだ。ピットストップと同時に差し込まれたのは、なんとフロアジャッキ。メカニックが汗を流しながら手動で車体を持ち上げ、十字レンチを素早く回してホイールナットをゆるめていく。

日頃の自社整備で鍛え上げられた俊敏なピットワークにより、ライバル勢を上回るタイムで前後タイヤのローテーションとドライバー交代を完了。見事にコース復帰を果たした810号車プロボックスは、そのまま安定したラップタイムを刻み続けた。

そこからは同クラスの456号車ヴィッツとチェッカー受ける瞬間まで抜きつ、抜かれつのバトルを展開。そしてドラマは最終ラップに訪れた最終コーナーからのバトル。810号車プロボックスは、最終コーナーからの上り勾配でヴィッツの後ろにぴたりと張り付きスリップストリーム。

そこから下りに入ったところで横に並び、ゴールライン寸前で抜き去るというプロ級の技でチェッカー。会場を大いに沸かせ、見事にクラス1位(総合5位)で表彰台を獲得した。

北海道岩見沢の栄建設が率いるSAKAE MOTORSPORTSの挑戦

この快挙を成し遂げたのは、北海道岩見沢市に拠点を置く建設会社・栄建設が運営する「SAKAE MOTORSPORTS」だ。チームの指揮を執るのは、代表兼監督を務める佛田尚史氏。かつて「D.R.C」として活動し、鮮やかなイエローのボディカラーからファンや関係者に「公団ちゃん」の愛称で親しまれた歴史を持つ名物チームである。

今回投入されたマシンは、かつて開催されていた「プロボックス/サクシード選手権」のレース車両をベースに再構築された1台。N1規定(市販車をベースにし、改造できる範囲を厳しく制限した、限りなくノーマルに近い競技車両のカテゴリー)に準拠した足まわりや安全装備を施し、サーキット仕様へと高められたスペシャルマシンだ。

佛田代表は語る。
「弊社は建設業者ですので、プロボックスは日頃の現場回りや資材運搬など、まさに会社の日常を支えてくれる頼もしいパートナーです。そうした日常的に使い込んでいる身近な働くクルマで本格的なサーキットに挑み、最高の結果を残すこと。それはチームにとって長年の夢であり、最大の目標でした」

普段使いの工具でのタイヤ交換とイコールコンディションが魅せるS耐チャレンジ

今回彼らが快走を見せた「S耐チャレンジ」は、国内最高峰の参加型耐久レースであるスーパー耐久シリーズの本戦へと続く扉であり、モータースポーツ本来の熱量を体感できる育成・ステップアップカテゴリーだ。JAF国内A級ライセンス保持者を対象とし、競技は60分間のミニ耐久方式で実施。

ドライバー2名、ピットクルー3名以内というコンパクトな体制で参戦が可能となっている。車両規定においては、ロールケージや安全帯といった厳格なJAF安全規定の装着を義務付ける一方、エンジンやECU(エンジンコントロールユニット)のチューニングは制限され、前述したN1規定に準じた「車検対応+α」のイコールコンディションが保たれている。

スーパー耐久の歴史を振り返れば、過去にはコンパクトカーやワゴン車が参戦した例もある。しかし、プロボックスは一般的なコンパクトカーと比較して車重が100kg近く重く、通常の本戦クラス(ST-5など)にそのまま参戦するにはハードルが高かった。「本戦の規定では参戦が難しかった車両でも、S耐チャレンジという新たなカテゴリーが創設されたことで挑戦の道が開けました」と佛田代表が語るとおり、まさに門戸を広げる画期的な舞台なのだ。

さらに本カテゴリーの特徴である「フロアジャッキと十字レンチを使用したタイヤローテーション」の義務付けも、レースを面白くする大きな要素だ。プロ仕様のエアジャッキやインパクトレンチに頼らない手動作業は、資金力に左右されない人身一体の工夫と鍛錬を評価する試みであり、デジタル化が進む現代モータースポーツにおいてアナログな技術と情熱を最前線に呼び戻す重要な意味を持っているのだ。

熱き意気込みを胸にプロボックスで夢の本戦舞台を目指す

「ドライバーの素晴らしい走りはもちろん、現場で汗を流してくれたスタッフ全員の力が実を結んだ最高の結果です。レースの歴史を振り返れば、全英ツーリングカー選手権(BTCC)で世界を驚かせたボルボ・850エステートや、S耐本戦を駆けたランサーエボリューションワゴンのように、レースファンを熱狂させるバトルを繰り広げる姿こそがモータースポーツの醍醐味です。今回のSUGOでの勝利を弾みに、今後はさらにチーム体制とマシンを磨き上げ、S耐チャレンジでの実績を重ねていきたいですね。そして将来的には、このプロボックスでS耐本戦の舞台に挑みことができれば!! というのが私たちの大きな目標であり夢ですね」

働くクルマの象徴であるプロボックスを駆り、北の大地・岩見沢からサーキットへ爽快な旋風を巻き起こしたSAKAE MOTORSPORTS。無駄を削ぎ落とした商用車の機能美に熱き情熱を注ぎ込み、身近な道具で頂点を掴み取った彼らの挑戦は、クルマを操る純粋な歓喜と夢の可能性を教えてくれる。プロボックスとともに夢を追い続ける彼らの熱き走りに、これからも温かい声援を送り続けたい。

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