モータースポーツで企業イメージを高めるワークス・ドライバー
モータースポーツシーンにおいて、たびたび耳にする「ワークスドライバー」だが、果たしてどんなドライバーを指すのだろうか?
ワークスドライバー、海外では「ファクトリードライバー」と称されるが、文字どおりワークスチーム(ファクトリーチーム)の契約ドライバーで、プロとしてお金を貰いながら競技に参戦してベストリザルトを目指すことはもちろんのこと、マシンのパフォーマンスを高めるために開発サポートを実施する。
また時にはプロモーションやマーケティングの一環としてファン対応のイベントに参加したり、メディアの取材やコマーシャルおよび広告に出演するなど、ワークスドライバーの業務は多岐に渡る。
このプロ中のプロであるワークスドライバーは自動車メーカーが組織する直系チームおよびサテライトチーム、有力コンストラクターが起用しているが、近年は大手スポンサーを持つ主力チームやタイヤメーカー、パーツメーカーが独自にワークスドライバーを起用するケースも少なくはない。
F1から国内選手権まで多々ある世界・国内市場へアピール
各カテゴリーを代表するワークスドライバーを挙げるなら、フォーミュラレースの頂点、F1で言えばメルセデスAMGのルイス・ハミルトンやフェラーリのセバスチャン・ベッテル、ホンダがエンジンを供給するアストンマーティン・レッドブルのマックス・フェルスタッペンなどがそれにあたる。
ラリー競技の最高峰シリーズ、WRCならトヨタGAZOOレーシングのセバスチャン・オジェ、ヒュンダイのオイット・ナタクやティエリー・ヌービル、Mスポーツ・フォードのエサペッカ・ラッピなどがその代表的ドライバーだろう。
スポーツカーレースのトップシリーズ、WECでは中嶋一貴や小林可夢偉、セバスチャン・ブエミなどトヨタGAZOOレーシングのメンバーがWECを代表するワークスドライバーだと言えるだろう。
もちろん、国内モータースポーツシーンに目を向けても、各カテゴリーでワークスドライバーたちが活躍している。スーパーGTのGT500クラスやスーパーフォーミュラに参戦するドライバーの多くがいわゆるワークスドライバーたちで、全日本ラリー選手権に参戦する新井敏弘はスバル、奴田原文雄はヨコハマタイヤのワークスドライバーだと言えるだろう。
ちなみに、彼らワークスドライバーに対して、お金を支払って競技に参戦しているアマチュアドライバーたちが「ジェントルマンドライバー」で、各カテゴリーの最高峰シリーズであるF1やWRC、WECにもワークスドライバーのほか、ジェントルマンドライバーたちが参戦するなど、プロとアマチュアが同じ土俵で戦っていることがモータースポーツならではの特徴と言える。
推定年俸66億円のF1ドライバー
話をワークスドライバーに戻すとチームの財政状況やランク、またドライバーの実績にもよるが、ワークスドライバーたちの契約金は高く、トップチームに所属するチャンピオン経験者の年棒は破格のプライスで、メルセデスAMGのエースとして2020年のF1で活躍するルイス・ハミルトンの推定年俸は6000万ドル、約66億円と言われている。
WRCはF1より金額が下がるものの、それでもトップドライバーにもなれば10億円前後と言われており、スーパーGTのGT500クラスのワークスドライバーでもメーカーにもよるが、高級車をラクに変えるだけの契約金をもらっているようだ。
このようにトップレベルのワークスドライバーは高収入が望めるが、その一方で、リザルトを残さなければ翌年は解雇や減収……というシビアな世界でもある。実力が全ての厳しい立場だからこそ、ワークスドライバーは憧れの存在となっているのである。