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知らぬ間に「ハイビーム」で煽ってる? 「配光不備」が巻き起こす「厄介なトラブル」とは

上向き・下向きの切り替えは適時

 ヘッドライトの照射を上向きにしたハイビームは、夜間、暗い郊外路や山道などで遠くまで照らして視界を確保するためのもの。道路交通法・第52条で「夜間走行時は原則ハイビーム。常時ロービームは違反」と定められていて、教習所でも法規に則ったヘッドライトの使い方を指導しているという。

 ただし、同法規では同時に、対向車や前走車などを認めた際の減光、つまりハイビームからロービームへの切り替えを義務付けていて、怠ればこれも違反の対象になる。

 ところが「原則ハイビーム」だけがひとり歩きして、道路の明暗や、ほかの車両、歩行者などおかまいなく、常時ライトを上向きにしたまま走っている “ハイビーマー”が増殖。ここ最近、看過できない交通問題になっている。

知らずに上向く照射角度に要注意

 一方、ロービームの状態でも「まぶしい!」「ハイビームじゃないのか!?」とヒンシュクを買っているクルマも少なくないようだ。さまざまな原因が考えられるが、例えば多人数乗車で荷室に重い大量の荷物を積み込むなどした場合。リヤ側のサスペンションが大きく縮み、相対的にヘッドライトの照射角度が極端に上向いてしまうことがある。

 その対策として、HID(キセノン、ディスチャージとも呼ばれる)など、高輝度のヘッドライトを装着した2006年以降に製造された新車では、照射角度を自動調整する“オートレベライザー”の装備が義務化されている。

 問題は一般的なハロゲンヘッドライトだ。照射角度を手動で調整できる“レベライザースイッチ”を装備した車種も少なくないが、それを活用するどころか存在すら知らない人もいる。とくに、走行距離の伸びた旧年式車はサスペンションがヘタっていて、リヤが沈み込む度合いも大きい。レベライザーで補正しきれないほど照射角度が上向いてしまうこともあり、許容範囲に収まるようにディーラーなどで調整する必要がある。

バルブ交換では光軸・配光を再調整

 クルマ好きが注意したいのは、ヘッドライトを明るくする目的でハロゲンをLEDにするなど、バルブ=電球を純正品から汎用の高輝度タイプに交換した場合だ。

 ここでは、上下方向の照射角度と同時に照射範囲も問題になる。DIYではもちろん、カーショップなどでバルブ交換した際、“カットオフライン”と呼ばれる、前方・左右を適正な高さと角度で照らす「配光」が狂うことがある。正しく路面を照らせないばかりか、強い光が対向車を照射して相手ドライバーを眩惑させる恐れがある。
 カットオフラインの調整は素人でもできなくはないが、やはりプロに任せるのが確実。専用のテスターを持っているディーラーや、自動車用品の量販店などに依頼したい。地域や店舗による差はあるものの、例えばAPITオートバックス東雲の場合、工賃は左右2灯で2000円から。高輝度バルブのメリットを安全かつ最大に引き出すための出費と考えれば決して高くないだろう。  

 もっとも数ある汎用LED/HIDバルブの中には明るさの問題だけでなく、光軸・配光がいい加減で、調整すら効かない粗悪品もあると聞く。カーショップなどで購入する際はスタッフにアドバイスを求め、通販の場合はWEBのクチコミなどを参考にしたい。

レベライザーは万能の機能にあらず

 そもそもヘッドライトは、長期間にわたる走行時の振動でユニットを固定しているネジなどが徐々に緩み、高い確率で照射角度/範囲に狂いを生じる。だからこそ車検ごとにシビアにチェックされ、再調整が求められるのだ。

 ちなみに、ごく普通のクルマで(おそらく)ハイビームでもないのに、ヘッドライトのまぶしいクルマに出くわすことがある。これは、車体前部を破損した際の修理が完全でない疑いがあり、中古車の売買では事故履歴を知る判断材料になるとも言われている。 

 ロービームで走行中、頻繁に対向車からパッシングを受けたり、すれ違う歩行者・自転車がまぶしそうにしていたら、光軸・配光が狂っていると思ってほぼ間違いない。とくに、前を走るクルマにとっては迷惑な話で、相手ドライバーに「煽られた」と誤解されてトラブルの原因になる可能性も否定できない。
 冒頭で触れたハイビームの話もさることながら、まずは、自分のクルマがロービームの状態で周囲にまぶしい思いをさせていないかを確かめるべきだろう。

 なお、前述のレベライザーは、自動、手動にかかわらず、経時変化のほか、フロントまわりにダメージを負った事故の不完全な修理や、バルブ交換、サスペンションの交換=車高の高低などで生じる光軸・配光の過度のズレまでカバーする機能ではないので念のため。

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