日本ではマイナーな存在の英国車「トライアンフ」
ヒストリックカー趣味の入門編でもあり、究極の到達点とも言われる王道ブランドが、イギリスのスポーツカーメーカー「トライアンフ」だ。トライアンフのラインアップを大別すると、メジャーな存在で今でも人気がある「トライアンフ・ロードスター(TR)」シリーズと、現役オーナーの皆さまには大変失礼な話なので先に謝っておくが、マイナーで通好みの存在となっているクーペ、サルーン、コンバーチブル、エステートに大別することができる。
つり目4灯で一周回ってカッコイイ「ヴィテス」
2輪車のメーカーとして設立され、1923年から4輪車の世界に進出したトライアンフは、戦後まもないころにスタンダード社と合併したが、「スタンダード テン」および「テン・コンパニオン」といった地味なクルマたちを生産していた時代の野暮ったさを、1959年にリリースしたトライアンフ「ヘラルド」あたりではまだまだ払拭することができなかった。ヘラルドはミケロッティ・デザインだったとはいえ、その渋いスタイルは分かる人にしか分からないものであった。
1962年に登場したトライアンフ「ヴィテス」もヘラルド譲りのシャシー&ボディを採用していたので、あかぬけしない感じ……といえばそうなのだが、ヴィテスは「チャイニーズ・アイ」と呼ばれる「つり目」の4灯式ヘッドライトが外観上の特徴となっており、フロントマスクがヘラルドよりもカッコイイのだ。明らかに男前だといっていい。
一周回ってカッコイイといえば分かりやすいかもしれないが、とにかくヴィテスはマイナーなトライアンフの中におけるヒーロー的存在で、少ないながらも熱心なファンのもとで大切にされている。
肩ひじ張らず「ちょうどいい」スポーツサルーン
松村敬太さん(51歳)も、ヴィテス=「一周回ってカッコイイ」と思っているオーナーのひとりだ。10年以上前から1969年式のトライアンフ・ヴィテスMk-IIを愛用しているらしいが、かつてはスーパーカーブーム全盛時に子どもたちを魅了した世界的ブランドのスポーツカーたちを所有していたそうだ。
「このヴィテスは、自身にとって初めてのトライアンフです。たまたま縁があって、購入することになりました。いまの自分のライフスタイルにちょうどいいスポーツサルーンだと思っています」
松村さんと筆者は同世代なので、彼の言っていることに心から賛同してしまった。50歳ぐらいになってくるとアルファ ロメオのような「乗るとアドレナリンがバンバン出るクルマ」だとちょっと疲れてしまい、適度にスポーティなトライアンフのようなクルマのほうが身体にやさしく、しっくりくるのだ。
さまざまなスポーツカーを乗り継ぎ、その結果としてチョイスした松村さんとヴィテスの付き合いは、20年、30年と続いていくかもしれない。