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BMWのマークはプロペラじゃなかった! バイエルン州の市民旗が起源だったロゴマークの歴史を振り返ります

BMWロゴのイメージ

EVに採用される青い縁取りのエンブレム

特徴的なデザインを採用するエンブレムの由来に迫る

 自動車界でもっとも有名なもののひとつである、BMWのエンブレム&ロゴマーク。歴史の古いメーカーの例にもれず、その誕生や進化については多くのエピソードが語られている。今回は誰もが知るBMWロゴマークの、あまり知られていないストーリーについてお話ししよう。

バイエルンの旗からインスピレーションを受けた紋章とは?

 ファンならば周知のことだろうが、BMWとは「Bayerische Motoren Werke(バイエリッシュ・モトーレン・ヴェルケ:バイエルン発動機製作所)」のイニシャルである。

 この社名の歴史は、1917年にまで遡ることができる。南ドイツ・バイエルン州の州都ミュンヘンで航空機エンジンを製造していたメーカー「Rapp Motorenwerke(ラップ発動機製作所)」が改称され、「BMW(ビー・エム・ダブリュー)」が誕生。社名は変更されながらも、技術的設備や資産、従業員はそのまま引き継がれたとされている。

 BMWという社名が1917年7月に初めて商業登録された際、まだこの会社に公式ロゴはなかった。同じ月に出された最初の広告にも、BMWのシンボルやエンブレムは見当たらない。しかしその広告では、新生BMWが航空機用エンジンだけでなく将来的には自動車、農業、船舶用のエンジンも製造する計画があることを示していた。

 商標登録から1917年10月5日、この新会社のロゴが初めて登場する。ドイツ帝国商標登録を受けた最初のBMWロゴは、象徴的なブラックの外周円を2本のゴールドのラインで縁どり、その内側にBMWの文字が配置された。

 また、旧ラップ社の紋章から円形の基本レイアウトは引き継いでいたものの、中央に置かれたチェスの「ナイト」像に代えて、BMWの故郷であるバイエルンが表現されることになった。

 内側の四分円は、バイエルン州を象徴する白と青のカラーで構成。これは現在のサッカーでもおなじみ、バイエルン州の市民旗にも使用されるロスンジ(菱形)の拡大解釈とみなされているそう。だが、当時の商標法では州や君主の紋章を民間企業が使用することは禁じられていたため、BMWのロゴでは紋章ルールとは逆順となる青と白のデザインに変更されたといわれている。

 つまり、都市伝説のごとく語られている「航空機のプロペラを図案化した」説は、どうやら正しくはないようなのだ。

プロペラという解釈も、完全な誤りというわけではない?

 今なお、BMWロゴは回転するプロペラを表現している、と多くの人が信じているようだが、それはいかなる理由によるものなのだろうか?

 BMWのプロペラ説は、同社初のブランドロゴが登場した12年後、1929年後に端を発しているという。1929年以降のBMWの広告には、回転するプロペラの中にBMWのエンブレムがコラージュされた航空機が描かれていた。世界恐慌が巻き起こったこの年、BMWはアメリカの「Pratt & Whitney(プラット・アンド・ホイットニー)」製航空機エンジンのライセンス生産権を獲得したことをアピールするものだったという。

 四分円をプロペラとする解釈は、航空機エンジン製造という会社のルーツと、専門技術の高さを強調することに成功。当時、オースティン・セヴンのノックダウン生産にも乗り出していたBMWの広告戦略に見事にマッチしたようだ。

 そののちBMWは、1942年にもプロペラを会社のシンボルに結び付けるパブリッシングを展開した。「Flugmotoren-Nachrichten(航空機エンジンニュース)」と名づけられた自社出版物に、プロペラとBMWロゴが重ねられた航空機の画像を掲載。BMWロゴが回転するプロペラであることを裏づけることになった。

 現在、BMWのヘリテージ部門を司る「BMWグループ・クラシック」のフレッド・ジェイコブズ氏は、以下のようなコメントでこの通説について言及している。

「BMWは長い間、自社のロゴがプロペラであるという通説を、積極的に正そうとはしませんでした。厳密にいえば、BMWのロゴがプロペラに由来するという解釈は正解ではないのですが、90年もの間繰り返し語られてきたこの解釈が、やがて都市伝説としてある程度正当化されるようになったのも事実なのです」

 BMWのロゴとエンブレムは、第二次世界大戦後も「B M W」の文字フォントが数回にわたって変更されたくらいで、基本的には長らく不変とされていた。しかし2020年春には、ウェブサイトや印刷物で用いられるコミュニケーションマーク限定ながら、大規模なマイナーチェンジを施行すると発表した。

 新しいロゴマークは、新たなブランドアイデンティティをアピールするものとのこと。デジタル時代に適応したシンプルな2次元デザインとし、開放性と明快さを伝える。また、新しいロゴマークにはこれまで黒だったリング部分が、モニター画面上や印刷物では地色と同色になる透過バージョンも導入され、従来の自動車の世界を中心とした企業から、テクノロジーやコネクティビティを重視した企業へ移行することを表現しているという。

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 誕生から一世紀以上の時を経たBMWロゴは、これからも伝統と現代的な感覚を追求するBMWの象徴であり続けてゆくことだろう。

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