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【特別インタビュー】JASMA事業部長水口大輔氏が語る「EV時代におけるJASMAとマフラーの役割」とは?

NAPACのJASMA事業部長であるHKS代表取締役社長でもある水口大輔氏に、EV化時代におけるマフラーの今後についても伺った

安心・安全を担保するための厳しい「JASMA基準」

前回は、JASMA(ジャスマ:日本自動車スポーツマフラー協会/The Japan Automotive Sportsmuffler Association)事業部の生い立ちとその目的について、NAPACのJASMA事業部長であるHKS代表取締役社長でもある水口大輔氏にお話を伺った。今回はJASMA認定や保安基準適合、車検対応の違いや、マフラーの今後についてお話を伺うことにしよう。

排気系パーツの規制は3つ

まずはJASMA基準についてお話を伺った。

「排気系パーツの規制は、大きくわけると熱害、加速騒音、近接騒音という3つがあります。さらに、2013年4月1日から、2010年4月1日以降に生産された車両については『事前認証』を取得したマフラーでなければ、車検を受けることができなくなっています。

それまでもJASMAでは、熱害や騒音値について、第3者試験機関で計測下数値を書面化し、陸運支局に送付していましたが、現在はより厳しくJASMA基準を体系化して、車両型式とエンジン型式ごとに製品登録番号を発行し、定期的に運輸支局や自動車検査独立行政法人の各事務所、軽自動車検査協会各事務所に送付をしています」

JASMA基準の体系は以下のようなものとなっている。

・A-002 排気系マニホールド系部品の技術基準
・A-003 最低地上高に関する基準
・A-004 熱害防止のための技術基準
・A-006 排気マニホールド系部品の認定に関する基準
・A-007 スポーツマフラーの騒音試験方法
・A-008 自動車近接排気騒音試験の認定に関する基準
・A-009 テスト車両に関する基準
・A-010 スポーツマフラーレイアウトの技術基準
・A-031 スポーツマフラーの技術基準
・A-035 スポーツマフラーの認可に関する規定

JASMAではこれらの基準に則った状態で試験をおこなうわけだが、その試験は非常に厳しい。

たとえば騒音試験は、A-031のスポーツマフラーの技術基準に規定された試験をおこない、規制値よりもマイナス2dbをJASMA事業部目標とし、目標値に届かない場合には耐久性の書面を提出しなければならない。

また同時に、近接排気騒音値は保安基準よりも厳しいものとなっている。当然テストに使われる車両は、JASMA基準A-009に規定されているものでなければならないし、試験方法もA-007に沿ったものでなければならない。定常走行騒音や加速走行騒音については、保安基準の第30条を遵守することが求められている。

そしてこれらの試験をおこなうのは、A-008で認定された国内外の試験機関となる。国内では財団法人日本自動車輸送技術協会と財団法人日本車両検査協会がそれにあたり、国外ではドイツのDEKRAやイギリスのVETAC、フランスのUTAC、イタリアのCPAが認定されている。

車検対応との違いはある?

こうした試験をクリアした製品につけられるのが「JASMAプレート」「H22規制会員専用プレート」「EXマニプレート」だ。同時に認定書も製品に付属している。

「JASMAプレート、H22規制会員専用プレート、EXマニプレートというのは、これらの厳しい自主規制値をクリアした製品のみに与えられるものです。H22規制会員専用プレートは、平成22年4月1日以降に製造されたクルマ用の製品に取り付けられるもので、会員コードと試験機関、性能等確認済表示番号、原動機型式が表示されています。つまり、JASMA認定品というのは、車検対応・保安基準適合品であるのと同時に、JASMAの基準をクリアしたことが試験機関によって確認されている製品であるということになります。

一方保安基準適合品というのは、車両運送法で定められた基準をクリアしているものです。車検対応品というのは、保安基準適合品と同義となりますが、マフラー単品でいう場合に使われていることが多いですね。いずれにしても事前認証制度というのが、JASMAにとってもアフターパーツ業界にとっても、大きいことでした」

規制緩和で一気に注目を集めたJASMA

規制緩和によって、クルマのチューニングの自由度が大きく広がったのは、1995年のことだった。それまではわずかな車高ダウンですらアウトであったのが、最低地上高90mmが確保されていれば40mmまでのローダウンが可能となり、溶接やリベット止めなど、簡単に取り外せないものはNGだが、ネジ止めやビス止めなどのエアロパーツの取り付けも可能になった。マフラー交換も音量などが規制値に収まっていて、出口がバンパーから飛び出していなければ、車検に通るようになったのだ。

「このとき、多くの人はチューニングやカスタマイズの自由度が増したことを歓迎していました。もちろん、パーツメーカーもそうでした。しかしその後、保安基準に適合さえしていればいいんだろ? というパーツが増えてしまったのです。

そのため、製品によっては購入したときは大丈夫でも、いざ車検のときには保安基準に適合しなくなっている、ということも起こりはじめました。そこで見直されたのがJASMAでした。

JASMAの認定品であれば大丈夫という認識となっていったわけです。これは、それまでJASMAが厳しすぎるといわれることもあった基準の中で活動してきたことが大きかったと思います。もちろん、JASMA認定品であっても経年劣化によって車検時には保安基準をクリアできない場合もあります。

しかしこれは、純正マフラーであっても同じことです。腐食して穴が開いたりした純正マフラーは、交換しなければ車検には通りません。

そんなとき、純正マフラーの新品を付けるのではなく、JASMA認定品を装着していただけるケースも増えてきました。マフラーの腐食はおもに排気ガス中の水分によって起こりますので、ちょい乗りが多い方はたまには排気ガスの温度が上がり、内部を乾燥させられるように高回転を使っていただければ、マフラーが長持ちします」

EV時代におけるJASMAの役割とは

最後に、今後のマフラー業界の展望について、水口氏に伺った。

「2017年ごろから、JASMAとNAPACの合流についての話し合いが始まりました。今後のクルマを取り巻く変化を考えたとき、社会との共存、環境との共存ということが重要になっていくと思います。そのとき、個別に活動をしていくよりも全体でまとまって活動範囲を広げていくことが重要なのではないか。その観点からJASMAもNAPACに合流していくこととなりました。

クルマというのは、移動の手段であるのと同時に五感で愉しむものでもあると思っています。今後EV化が進むという予測もありますが、同時に内燃機関も、バイオフューエルや水素などを燃料とした環境性能の高いものへと変化していく可能性が高いです。

そのとき、マフラーはやはり必要です。EVであっても、走行音が必要といわれているように、5感の中の『聴く』という部分は運転者にとっても歩行者にとっても重要なものです。こうした点からもマフラーメーカーは今後も新たな開発を進めなければなりませんし、JASMAとしても社会情勢の変化や環境における影響をふまえて常に変えるべき部分は変えていく必要があると思っています」

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