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『西部警察』の劇中車「SUPER-Z」はガルウイング!? 大門団長が駆った「フェアレディZ」こだわりのディテールを紹介します!

ガルウィングドアを開けた「SUPER-Z」。ゴールドのフロントノーズ先端にNISSANのロゴが眩しい

特殊装備満点のSUPER-Z

映画やテレビドラマに登場するクルマは、ファンにとっては“もう一つの主役”となっています。例えば2012年に放映されたテレビ朝日系の人気ドラマ『相棒~season11』で主役の杉下右京の愛車として登場した日産フィガロは、1991年から2年間販売されたクルマですが、ドラマによって中古車市場での人気が再燃した、とも伝えられています。何よりもアクションシーンで登場するクルマの迫力や存在感は他を圧倒するものがありました。今回はテレビ朝日系の『西部警察』に登場した“SUPER-Z”を振り返ります。

カーアクションが人気を呼んだ西部警察

「西部警察」はテレビ朝日系列で1979年10月に放映が開始された刑事ドラマです。オリジナルシリーズに続いて1982年5月からは「西部警察PART-II」、そして1983年4月からは「西部警察PART-III」が1984年10月まで放映され、実に5年間にわたって放映が続いた人気シリーズでした。

目玉となったのはやはりカーアクションで、しかもそれを演じるクルマたちが日産プリンス自動車販売の特販推進室(現在の日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社のオーテック事業所)で改造されたスーパーマシンとあって、ドラマの人気もうなぎのぼりとなっていきました。

そんな「西部警察」シリーズで圧倒的な存在感を見せていた特殊車両の1台が「SUPER-Z」でした。これは亡くなった渡 哲也さんが演じていた主人公で警視庁西部警察署の捜査課、通称“大門軍団”を率いる大門圭介部長刑事の愛車。それまでの愛車だったKHGC211型スカイライン、通称“ジャパン”のハードトップ2000GTターボをベースにした“MACINE X”の後継車両として1982年9月にオンエアされた「西部警察PART-II」の第15話で登場していました。

ガルウィングドア以外にベースモデルからの変更点はあまり多くなかった

“SUPER-Z”のベースとなったのは、フェアレディZの2代目であるS130系の中で、1980年のマイナーチェンジに際して追加設定されたフェアレディ280ZのTバールーフ2by2(HGS130)です。最大の特徴は、ガルウイングドア……より正確に言うならドアをショルダー部分で分割して、上半分をルーフまで回り込んだ透明のアクリルパネルを使って、ガルウイング状に跳ね上げて開閉するタイプに変更していたことで、下半分は独自に開閉するタイプとなっていました。

クルマ自体、ガルウイングドア以外ではブラック&ゴールドの2トーンに塗り分けられたボディカラーのほかに、ベースモデルからの変更点はあまり多くはありませんでした。フェアレディZの2トーンカラーと言えば、ブラックをベースにフロントのボンネットと左右のドアのショルダー部分をシルバーで塗り分けたマンハッタンカラーが有名です。

ブラックとシルバーでシックな感じに仕上がっていたマンハッタンカラー(ブラックとシルバーを入れ替えた逆マンハッタンカラーもありましたが)に対して、ブラック&ゴールドで塗り分けた“SUPER-Z”の2トーンカラーは、シックというよりも圧倒的な存在感を漂わせていたことが、今でも思い起こされてきます。またリアのサイドウインドウ部分にはルーバー状のパネルが貼られ、これもルックス上の大きな特徴となっています。

ボンドカーもびっくりのさまざまな特殊装備

クルマにさまざまな特殊装備を組み込む、といえば思い起こされるのが映画『007』シリーズに登場したボンドカー。第3作となった『007/ゴールドフィンガー(原題: Goldfinger)』アストンマーティンDB5をベースにした初代ボンドカーが誕生して以来、さまざまなボンドカーが登場してきました。そんなボンドカーにも搭載されていたような特殊装備が、この「SUPER-Z」にも装着されています。

まずはボンネット上、ウインドディフレクターの直前に備えられた左右一対の催涙弾発射装置が目につきます。左右の催涙弾発射装置の発射角度は左右に60度、上方に40度、下方に15度の可動域を持っていて、それを運転席からリモートコントロールできるようになっていました。

助手席側の催涙弾発射装置をボンネット裏のモーターで作動させ、運転席側の催涙弾発射装置は助手席側のそれとリンケージで繋げられています。またリアバンパー下には5本のテールパイプが顔を見せていますが、本物のエキゾーストパイプは中央の1本のみで、両サイドの2対4本は煙幕発射装置なっていました。

また運転席周りには催涙弾発射装置や煙幕発射装置のスイッチが装備され、助手席前には警察無線に加えて船舶や航空機、アマチュアの避難自動通報など各種無線が備わっています。ステアリングやメーター類、ATのセレクターレバー、そしてシートなどはベースモデルと同様のものが装着され、意外にも乗用車ライクなインテリアなのです。

公称の最高出力と最高速度はベースモデルと同じだった

最後になりましたが、パフォーマンスやメカニズムについても紹介しておきましょう。搭載されたエンジンは2.8L 直6のL28Eで、2753cc(ボア×ストローク=86.0mmφ×79.0mm)の排気量から155psの最高出力を絞り出していました。

ストーリー的にはエンジンもチューンナップされていることになっていたようですが、公称の最高出力はベースモデル(フェアレディ280Z型後期仕様)と同じでした。さまざまな特殊装備を組み込んだことで車両重量は1645kgまで膨れ上がってしまいましたが、それでも最高速度は推定180km/hと公表されていました。

警官が街中でショットガンを発砲するなど、リアリティでは疑問符の残る設定でしたが、それを差し引いても高い人気を誇った『西部警察』。なかでも根強い人気を誇っているのが「SUPER-Z」をはじめとする特殊車両です。2022年末に行われた「NISMO FESTIVAL in FUJI SPEEDWAY 2022」でもピットに展示されていた「SUPER-Z」には多くのファンが集まり、あらためて人気の高さを感じさせられました。

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