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ランボルギーニ新型「レヴエルト」を現地で見た! 0-100km/h加速2.5秒、最高速度350キロ以上のモンスターの中身を徹底解説

アヴェンタドールの後継機種となる「レヴエルト」

“ザ・ランボルギーニ”の風格漂う新型フラッグシップ「レヴエルト」をサンタアガタで見た!

パワートレインなど一部だけ公表されていた、アヴェンタドールの後継となるランボルギーニの新型フラッグシップが、ついにサンタアガタで限られたメディアのみに公開されました。その名も「レヴエルト」。“ザ・ランボルギーニ”の風格漂う新たなフラッグシップの詳細をレポートします。

内燃機関と電気モーターを“かき混ぜて”、恐るべきパフォーマンスを発揮する

1880年8月1日。バルセロナのアレーナにおいて、1頭の猛牛がマタドール相手に果敢な戦いを繰り広げた。マタドールを追い詰めては柵を越え、ところせましと暴れまわる。観客は逃げ惑い、アレーナは混乱と興奮の坩堝と化した。阿鼻叫喚の修羅場を生み出したその闘牛につけられたニックネームこそ、“レヴエルト”。スペイン語で“引っ掻き回す”という意味である。

サンタアガタはアヴェンタドールの後継として開発した新型フラッグシップモデルを、伝統に則り猛牛の名“レヴエルト”と名付けた。かなり以前よりアヴェンタドールの後継モデルはプラグインハイブリッド車(PHEV)であると言われてきたから、内燃機関と電気モーターを“かき混ぜて”、恐るべきパフォーマンスを発揮するという点で、その名はいかにもふさわしい。

世界から限られたメディアを招いてのプレビューはチェントロ・スティーレ(デザインセンター)で発表前に行われた。新たなデザインが生まれるサンタアガタでも秘中の場所。そこにオレンジのレヴエルトが飾られていた。この場所を率いるようになったミッティア・ボルカートにとって、初めてのゼロから創り出した量産モデルデザインである。彼は幼い頃よりカウンタックの大ファンで、我々と同じような憧れを持ってサンタアガタにやってきた。彼がディレクションをしたレヴエルトのスタイリングは、歴史的なデザインもモダンに解釈したうえで新鮮さを表現することにも成功しており、どこからどう見ても“ザ・ランボルギーニ”という風格がすでに漂っている。

個性的なY字シェイプのヘッドライトは電動コンセプトのテルツォ・ミッレニオや限定車シアンを思い出させるし、すでにウラカンテクニカにもそのアイデアは使われていたが、まとまりという点ではやはり別格だ。曲線と直線を融合させたワンモーションのウェッジシェイプにエンジン丸見えで上方排気のリアセクションなど他にも見所はたくさんある(写真をじっくりご覧ください)。もちろんエアロダイナミクス性能も、派手なエアロデバイスを纏うことなく大幅に引き上げた。

モダンになったインテリア

インテリアもモダンに刷新されている。最新モデルらしくセンターには大きなモニターを備え、最新の運転支援(ADAS)までもが装備された。室内高はアヴェンタドールに比べて26mm上がっており、背の高いユーザーがヘルメットを着用しても問題なくドライブできるようになったという。13種類ものドライブモードをハンドル上の2つのダイヤルで選択できることも特徴だ。

すでに公開されている通り、PHEVパワートレインはV12自然吸気エンジン+電気モーター3基+リチウムイオンバッテリーである。システム最高出力はなんと1015cv。パワーウェイトレシオは1.75kg/cvで、その結果、0-100km/h加速2.5秒、0-200km/h加速7秒、最高速度350km/h以上を誇るという。

6.5リッターV12自然吸気エンジン(L545)は完全なる新設計であり、アヴェンタドール用のL539に比べて17kgも軽くなった。最高出力825cv/9250rpmで、最大トルクは725Nm/6750rpm。9500回転まで回るというからドライブが楽しみな超高回転型エンジンだ。これに前2+後1の電気モーターとリチウムイオンバッテリー、これまた新たに開発した8速DCTを組み合わせている。前輪と後輪との物理的なつながりこそなくなったが、ディアブロ以来の伝統というべき四輪駆動は継承された。

2機のフロントモーターはYASA製でスペックは各々110kW/350Nmというから、かなりの力持ちだ。トルクベクタリングや回生ブレーキとして働くほか、後退を含めた電動走行はフロントモーターが担う。MAHRE製のリアモーターは110kW/150Nm。スターターやジェネレーターとして機能するほか、走行モードや状況に応じて駆動にも関わる。完全電動の4WD走行も可能だという。

新たに考案されたパワートレーンレイアウト

パワートレインの発表を聞いてマニアほど驚愕しただろう。かくいう筆者もプレビューに参加してパワートレインの実物を見た時、大いに驚かされた。カウンタック以来の伝統というべきパワートレインレイアウトをついに諦め、180度逆、つまりキャビンからみてエンジン→トランスミッションと配する常識的なレイアウトとなっていたからだ。

カウンタックからアヴェンタドールまでは、センタートンネルに大きなトランスミッションが置かれていた。それは天才パオロ・スタンツァーニが生み出した奇跡のレイアウトであり、これがあったからこそカウンタックの衝撃的なシルエットが必然的に誕生したのだ。

しかしPHEVとなったレヴエルトは重くてかさばるリチウムイオンバッテリーをどこかに置かなければならない。そこでトランスミッションを退けて代わりにバッテリーをおき、トランスミッションはエンジンの後方においた。後方に置くデメリット(スタンツァーニが嫌った所以)を解消すべき新たに軽量かつコンパクトなDCTを自社で開発(サプライヤーはグラツィアーノ)している。このDCTの上に電気モーター載せてリアアクスル上に横置きするという、またもや新しいレイアウトが考案されたと言っていい。

センタートンネル内に鎮座するVALMET製リチウムイオンバッテリーは高出力密度(4500W/kg)を誇っている。容量は3.8kWhと、PHEV用としては低容量(フェラーリ SF90の約半分)だが、繰り返し最大性能を得るために走行中でも短時間で再充電できることを優先した。ちなみにプラグイン充電ソケットはフロントブート内にあり、小さく隙間を開けた位置でフードをロックして充電を行う。

モノコックのキーワードは「ロッカーリング」

これもまた発表済みだが、レヴエルトの高性能を支える骨格はもちろんCFRPモノコック構造を採った。ただし先代アヴェンタドール用に比べて、更なる軽量化と高剛性を達成している。複数の成型法を組み合わせたユニークな設計で、さらに量産ロードカーとしては初めてフロントサブフレームにもCFRPを採用するなどカーボン化が進んでいる。

レヴエルト用モノコックボディは“Monofuselage(=単胴体)”と呼ばれる。メインのバスタブ、フロントファイアウォール、フロントサブフレーム、アンダーパネルなど50%以上の部位をサンタアガタが得意とする成型方法で作られたフォージド(鍛造)コンポジットとした。これは細かな炭素繊維を樹脂に混ぜてホットプレス(5000トン級)する手法。加えて伝統的なハンドレイアップ・プリプレグ成型はピラーからルーフにかけて、軽量かつ高剛性であると同時にクラスAの表面クオリティを必要とする部分に使われた。ちなみにフォージドカーボンとプリプレグ、新たに自動レイアップのプリプレグ・ホットプレスによるパーツは自社CFK工場にて生産される。CFK工場は以前に比べておよそ1.5倍の規模に拡張された。

工場で見せられたCFRPパーツの中で、最もユニークだったのは“ロッカーリング”と呼ばれる巨大な一体成型品だった。RTM(レジン・トランスファー・モールディング)で生産され、フロントサブフレームの接合部から両サイドシル、リアバルクヘッド下をリング状に一体成型する。その中にすっぽりとフォージドカーボン製バスタブがハマる仕掛けだ。ロッカーリングのみサプライヤーから供給を受ける。ちなみにこのボディ骨格コンセプトは今後、グループの他のモデルにも採用されるという。

モノコックボディと前後サブフレームの総重量はアヴェンタドール用に比べて10%軽く、捻り剛性は25%もアップした。驚異の動力スペックを支えるボディ骨格もまたマニアにとってはたまらないエンジニアリングの成果であった。

伝統の本社工場に入ってみれば、工場内は全くもって新しくレヴエルト用のアッセンブリーラインとなっていた。より働きやすく効率的で環境に優しい工場を目指したという。当面、その生産台数は日産7台。3月頭の時点ですでに60台余りのプリプロダクション個体が生産されていたようだった。

近々、日本でのお披露目もあるに違いない。とはいえすでに向こう何年かは完売とも噂されている。残念ながら現物をじっくり見てからオーダー、では遅い時代になってしまった。

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