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「小さなセルシオ」を目指した「プログレ」「ブレビス」「ヴェロッサ」を再評価。トヨタの1代限りのセダンがなんだかイイ感じ【カタログは語る】

2001年6月登場のトヨタ ブレビス

9代目「マークII」から派生した1代限りのトヨタセダンたち

街を歩きながら、なんの根拠も前触れもなく、ふと昔の歌のメロディラインが頭をよぎることがある。そして「題名は何だっけ? 誰のいつ頃の歌だっけ?」とモヤモヤさせられたりして……。クルマの場合も、カタチが思い浮かぶけれど車名が出てこない(またはその逆)、などということが、ままある。往々にして多いのは、1代限りで終わったクルマだ。とはいえそういうクルマの多くは案外と強い個性の持ち主であったりすることも少なくなく、だからこそ1代限りで消えていったケースもあったのかも知れないが、記憶にはポツンと残っていたりするものだ。ここで取り上げる「ブレビス」、「ヴェロッサ」、「プログレ」も、トヨタの商品ラインナップから1代限りで終わったクルマたちだった。

プログレ:クラスを越えた静粛性を誇った

まずプログレだが、このクルマは1代といいながらも、1998年5月の登場から終わりは2007年5月だったから、じつは9年と長く続いた。カタログの最初にかかれたコピーは「“進歩”という名の高級車。」とあり、広報資料には「ラージサイズの性能・品質を日本で普遍的なミディアムサイズに凝縮したクルマ」だと、「センチュリー」も手がけたチーフエンジニアの言葉がある。

諸元上は全幅が1700mm、エンジンは3L(2JZ-GE型)と2.5L(1JZ-GE型)のため登録上は3ナンバー車だったが、当時の「コロナプレミオ」より短い4500mmの全長と2780mmのロングホイールベースの組み合わせ。ドアガラスを立てて室内空間を広げ、発泡材などを十分に使い、高い静粛性にも配慮するなどしていた。取材時にたしかドアガラスの厚みは当時の「セルシオ」並みとの話を聞いた覚えがある。5層コートの塗装、縁までクリアなアウターレンズとしたテールランプなど、見栄え品質にもこだわりがあった。

厚紙の表紙のカタログは、ページのレイアウトもさながらセルシオのようなゆったりと上品なもの。説明文の文字サイズを少し大きめにしてあるのも、かつてのクラウンやセルシオなどと同様にベテランのユーザーへの配慮だ。

ブレビス:意外な新機構を世界初採用

一方でプログレと同じプラットフォームから生まれた1代限りのセダンは他にもあった。2001年6月登場のブレビス、同年7月登場のヴェロッサの2台がそうだ。じつは2000年10月に「マークII」の最終モデルとなった9代目(X110型)が登場。このときにそれまで兄弟車だった「チェイサー」、「クレスタ」の登場がなく、マークIIもセダンのみの設定となったため、販売店対策のためもあり用意されたのがこの2車だった。

ブレビス、ああ、そういうクルマがあったよなぁ……と思い出す方も多いとは思う。プログレ同様に厚紙を表紙に使ったカタログは、手にした瞬間から「高級車感」が味わえるもの。ページを開くと「ACTIVE ELEGANCE BREVIS」、「輝くクオリティは、アクティブサイズに凝縮される」と情感に訴えるコピーが記され、しばらくは細い縦パターンのメッキのフロントグリルのブレビスの外観写真が続き、クリスタル調オプティトロンメーターが備わるインパネ、ギャザーの入った本革シートが備わる室内のカットへ。さしずめミニ・セルシオ(当時)といった風のクルマの狙いがストレートに伝わってくる構成だ。

だが意外なことにこのブレビスには、情感に訴えるだけでなく機構的な新機軸も投入されていた。それが「パーソナルドライビングポジション」と銘打たれたシステムの一環として備わった「パワーアジャスタブルペダル」。なんとブレーキとアクセルペダルが、堅牢なリンクを介して前後70mmの範囲で位置調整ができるというものだった。操作はドアトリムのシーソースイッチで行うことができ、パワーシート、ステアリング位置とともに2名分がメモリーさせられるということで、たしか当初は世界初をうたっていたはずだ。

ヴェロッサ:イタリアンな雰囲気のスタイルをまとい登場

それともう1台が、ヴェロッサだった。車名はイタリア語の「Vero(真実)」と「Rosso(赤)」を組み合わせたもの、開発のキーワードは「Emotional」と聞けば、おのずとイタリアのあのクルマやこのクルマを連想しないわけにはいかなかった。カタログもトップページからイタリア語で「Una Guida Emozionante(刺激に満ちた導き……といったところか)」とあり、ページをめくっていくと今度は「ミラノから片側3車線のアウトストラーダを南に走る。トスカーナ丘陵地帯のワインディングロードをしなやかに駆け抜ける。そんなドライビングをイメージしながら……」といったボディコピーが載せられていた。

このヴェロッサのプレス向けの試乗会が開催された際(たしか山梨・小淵沢周辺。客室にはカッシーナの椅子が備え付けられた、マリオ・ベリーニ設計のホテルがベースだった)、個人的な話ではあるが筆者は自分のクルマをアルファ ロメオ「156」かあるいは「166」に乗り換えた頃で、そのどちらかで会場に向かった。そして現地でヴェロッサの実車を見てじつに感慨深いものがあり「ウーム」と唸ったことを思い出す。

エンジンは直列6気筒ツインカム24バルブVVT-iでトップグレードのターボは280ps/38.5kgmの性能が与えられ、前後異サイズのタイヤまで装着していた。その走りは言葉で表現すれば、理屈抜きで夢中にさせられる気持ちのいいものだった。

だが、そのスタイルは「じつに奮ったもの」であったことは間違いないが、ジックリと眺めていたくなったかどうかというと話は別。ただし時代が違うが、セダンが貴重になりつつある今見返すと印象が好転して、個性を味わう気持ちの余裕がコチラにも生まれたかもしれない……とこの記事の原稿を書きながらカタログを久しぶりに眺めて、そう思っているところだ。

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