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「ドブロ」日本導入はフィアットを愛する人々のため。EV版も真剣に検討しています【Stellantis上級副社長ビリー・ヘイズ氏インタビュー】

ステランティスでインド&アジアパシフィック地域のセールス・マーケティング・オペレーションを統括する上級副社長ビリー・ヘイズ氏

ステランティスのインド&アジアパシフィック地域を統括するビリー・ヘイズ氏にインタビュー

2023年5月にフィアットの新型MPV「ドブロ」が日本上陸。姉妹車シトロエン「ベルランゴ」やプジョー「リフター」に続けてドブロを投入した意図は? そして今後EVバージョンの導入もあるのか? ステランティスでインド&アジアパシフィック地域のセールス・マーケティング・オペレーションを統括する上級副社長(SVP=senior vice-president)であるビリー・ヘイズ氏にインタビューしました。

2019年に日本上陸した姉妹車ベルランゴ&リフターは絶好調

──同じステランティスの小型MPVとして、すでにリフターとベルランゴがありますよね。まずそれらの販売状況はどうでしょうか。

ベルランゴはステランティスが日本で展開するMPVでナンバーワンとなっていて、2023年も4月いっぱいまででトータル2200台販売しています。ベルランゴは熱心なファンが多いクルマで、今年1月に7人乗りが新たにラインナップに加わり、さらに好調な成績が予想されます。ベルランゴはファミリーに最適なクルマですし、そもそもシトロエンがファミリーや人を中心にとらえているブランドです。このクルマがあれば、例えばサーフボードを載せて鎌倉に行こうとか、いろんな使い方が想像できると思います。

次にリフターについては、やはりプジョー・ブランドということで、よりスタイリッシュさを前面に打ち出しています。i-Cockpitも当然搭載していますし、プジョーらしいキャラクターを前面に打ち出したMPVとなっています。こちらも5人乗りと7人乗り、両方が揃って、リフターの販売数もベルランゴとともに伸びています。

2022年デビューの3代目ドブロが2023年5月に日本発売

私は個人的にもクルマ好きですので、やはりMPVやミニバンに対してエキサイトすることがまずなかったのですけれども(笑)、ドブロを初めて自分の目で見たとき、とても良いクルマだと思いました。親しみやすいフレンドリーなデザインでファミリー向けで、これがあれば何でもできると感じることができました。ファミリーでどこかに出かけるもよし、荷物を積んで遊びに行くもよし、良い驚きがありました。

とくにフィアット・ブランドの中では、これまで最大のクルマはSUVの「500X」だったんですね。今回ドブロの投入によって、よりファミリー向けというのが前面に出てきました。

皆さんご存知のとおりフィアットは日本で非常に人気をいただいていて、とくに「500」の人気は圧倒的です。ですので今回フィアット・ファミリーからMPVが出せるということで、我々も非常に期待しています。

日本でフィアット・アバルトのショールームはとても美しく素晴らしい店舗になっていて、本当に人が集まって楽しめる場になっています。そしてディーラーの方々も営業スタッフの方々も非常にパッションを持って接してくださいますし、私個人も休日に自分の家族を連れて遊びに行きたいと思える所です。そんな良いタイミングで、ドブロを導入することができました。

──すでに好調なリフターとベルランゴが存在している日本市場に、ここへ来てドブロの導入を決めたのはなぜでしょうか。

なぜドブロかというご質問ですが、やはりそれはフィアット・ブランドを長年愛顧されてきたお客様のためです。フィアットが好きだというお客様は多いので、そういった方々のためにMPVをフィアットから出すことに意味があると思います。こういったお客様はプジョーやシトロエンからではなく、あくまでもフィアットから欲しいのです。

また、日本ではMPVセグメント自体がかなり大きく、そこでお客様が個性を表現したいとなったときに、フィアットらしさとかシトロエンらしさといった、「らしさ」を出せる。個性を表現するツールであるのもクルマだと思います。

イタリアブランドのドブロは「ジブン時間」がテーマ

──同じステランティスの中にミニバン3姉妹ができて、ドブロが持っている強みは何でしょうか。例えばベルランゴだったら乗り心地が素晴らしい、リフターだったら上質でスポーティとして、フィアットとしての特色はどうでしょうか。

それぞれ3種類のMPVで共通項は多いのですが、フィアットのブランドでいうと、フレンドリーさ、オープンさ、そして「ジブン時間」をスローガンとしています。ブランドそれぞれ独立したDNAがありますので、それを打ち出して差別化していきたいと思います。

ディーラーもそれぞれ高いレベルで差異化されていて、雰囲気も違うのが分かっていただけると思います。例えばプジョーだったらスタイリッシュで営業マンもパリっとしていますけれども、フィアット・アバルトは明るくて子どもの遊び場もあったりします。ですので例えば「私はイタリアブランドが好き」「フランスブランドが好き」という方は、そういったブランドが表れているクルマを選んでいただきたいです。

私はインド&アジアパシフィック地域を担当していて、25カ国の市場でクルマを扱っています。これらの地域内には12のブランドがあります。それぞれのブランドが対応しているお客様の層が違いますし、それぞれに対応していきたい。そして皆さんに見合ったものを提供していきます。

EV版のEドブロが日本導入される可能性は?

──本国ではステランティスとして電動化を推し進めていて、欧州にはEVの「Eドブロ」もデビューしています。今回、ベルランゴやリフターと同じ1.5Lディーゼルを入れた理由はどこにありますか。

日本でこのセグメントの25%がディーゼルと、安定して強いマーケットがあるため、まずはディーゼルを選定しました。しかし、Eドブロを日本に持ってくることは真剣に検討しています。

やはりステランティス全体としてEVに対するコミットメントをしていますし、すでにご存知のとおり2030年に向けた戦略も展開しています。その中で2038年までにカーボンニュートラルにするとしていますので、今後EVなどを次々ローンチしていきます。その一環でEドブロの日本導入も検討しています。

日本の市場もかなり変化してきていますが、例えば私が担当しているアジア・パシフィック地域でもニュージーランドではクリーンカー法によって人々のクルマに対する消費行動がガラッと変わったんですね。日本が必ずしも遅れているわけではないのですが、こういった地域で出しているものから日本市場に向けて、一番いいものを一番いいタイミングで投入できる・選べるというのが我々の日本でのメリットだと思います。なのでつねに我々はラインナップを検討し、ここぞというタイミングで出せるようにしています。

具体的に今後どうするというお話はできないのですが、今年度末までには日本でステランティスとして19台のBEVやPHEVの電動化モデルが揃う予定です。

昨年日本に導入した「500e」は素晴らしいクルマで、フィアットとして初めてのフル電動車、しかもコンバーチブルなんですよね。排気ガスの無い完全にクリーンな状態でフルオープンの走りを楽しめるということで、日本のお客様にもぜひ運転してもらいたいと思います。

ステランティス全体として環境問題に取り組んでいく

──EVに向けて、問題は日本の充電環境だけですね。

やはりこれは環境全体、インフラとしての問題なので、関与する全員がそれぞれの面から取り組んでいく必要があります。ですから我々はENEOSとパートナーシップを組んでいますし、ディーラーでは全国350カ所で充電器を設けました。お客様がいつでも立ち寄っていただいて充電できるように取り組んでいます。

ステランティスとして1点強調しておきたいのは、我々は当然クルマの開発から製造まで行っていますが、それをただのビジネスのためにやっているのでは決してありません。我々全員が地球に対して責任を持たなければいけないと強く考えています。昨今非常に多い自然災害や世界的なCO2レベルの高まりという危機的な状況がありますので、私たちは今だけでなく、子どもたちや孫、未来の世代のために責任ある行動をとるべきです。

これはメーカーだけでなく、みんなが責任感を等しく持って進めていくべきですね。ですので私はそういった意識を強く信条として持っているステランティスの一員として働けることを非常に誇りに思っていますし、我々が住む地球という星のためにいかに貢献できるかを考えて事業活動を進めていきます。

既存エンジンのeフューエル対応も検討中

──欧州委員会がこれまではEVのみという方針だったのが、eフューエル(合成燃料)は認めると方向転換しました。それを踏まえてステランティスは今後どのように動いていくことが予想されますか。

ステランティスの中では2014年から2029年までに28のエンジンファミリーがあるのですが、それら全てについて、どれだけeフューエル対応ができるのか検討を始めています。やはりガソリンだけだと当然問題はありますし、企業戦略としてカーボンニュートラルを目指すことに一切変わりはありません。とはいってもICE(内燃機関)のクルマをeフューエル対応とできるのであれば、そのパワートレインを使ったクルマであってもかなりのCO2削減になると思います。

およそ3000万台ほどステランティスのクルマが走っていますので、これらがeフューエル対応できるとなったら、90%くらいのCO2削減になると思います。私個人としても、そういった取り組みをちゃんとしている会社のクルマを買いたいと思います。

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