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旧車なのに新車!? 総額6億円近いジャガー「Cタイプ」と「Dタイプ」を試乗。70年以上前の乗り味とは?

CタイプとDタイプの走り

貴重な2台に試乗する機会を得た

希少車のステアリングを握る機会に恵まれた!

現代の技術も投入しコンティニュエーションモデルとして復活した、伝説の名車ジャガー「Cタイプ」および「Dタイプ」。希少な2台が日本でも披露され、その際、特別に試乗する機会に恵まれました。山崎元裕氏のインプレッションをお届けします。

低速からの力強さを存分に味わえる「Cタイプ」

初挑戦した1951年のル・マン24時間レースで総合優勝の栄誉を手にしたジャガーCタイプ。そのステアリングを握る機会など、いかにジャガー自身が再生産したコンティニュエーションモデルとはいえ、人生の中で一期一会の経験と考えるべきだろう。

参考までにその価格が150万ポンド(約2億6850万円)と聞けば、正直なところ試乗コースとして用意されたのが富士スピードウェイのショートコースであることを知り、まずは一安心といったところ。だが、それでも走行前のプレッシャーは大きい。

足元のペダルの位置を何回も確かめ、エンジンをスタート。するとフロントに搭載される、トリプルウェーバーキャブレターを組み合わせる3.4Lの直列6気筒エンジンは、アクセルの踏み込みが足りないと言わんばかりに少し強めの振動を感じさせながら回転数を高めていった。

ピットロードから本コースへと入る手前の坂で、ブレーキのタッチを確認するようにという指示があったので、そのとおりにブレーキを踏む。ちなみにCタイプは1951年のデビュー時にはドラムブレーキを愛用していたが、すぐにディスク方式に改められた。この試乗車ももちろんダンロップ製のディスクブレーキを装備している。タッチはじつに自然で、もちろんその利きも219psの最高出力に対しては十分な余裕が感じられる。

コースに出たCタイプで、まず感じたのはフロントのいわゆるXKエンジンのフレキシビリティだ。このショートコースならば2速ホールドで十分にラップできるという話を事前に聞いていたが、たしかにきつい上り傾斜を伴うコーナー以外では、そのフレキシビリティ、いや低速域から発揮する298Nmの最大トルクの厚みに助けられたという印象が強かった。

高速域でのスムーズさも、さすがはジャガーの誇るXKエンジンであり、またこの再生プログラムのために9カ月の製作期間と、1000マイル(約1600km)にわたる高速走行テストをクリアしただけのことはある。

Cタイプより洗練された印象の「Dタイプ」

続いて試乗したDタイプは、Cタイプと比較すると一気に現代的な印象を抱くことができるレーシングモデルだった。生産が25台の限定で行われることや、その理由に関してはすでに解説しているとおりだが、ジャガー・クラシックによる精巧な職人技によって新車時と同様に、いやそれ以上の魅力を持って誕生しているのは言うまでもないところ。

ボディはショートとロングの両タイプが用意されているが、今回の試乗車は前者であった。したがって搭載エンジンもCタイプと同様、3.4Lの直列6気筒トリプルキャブレターとなる。最高出力は295psだ。

Dタイプを駆ってのサーキット走行は、そのアベレージスピードこそ控えめではあったものの、素直な操縦特性の恩恵で、非常に楽しく、同時にジャガーの歴史を顧みることができるものだった。

ステアリングの感触も良く、路面の状況をフロントタイヤから正確に伝えてくれる。一方後輪の状態は、シートからこれもまた一切の遅れを感じることなく伝わってくる。175万ポンド(約3億1325万円)という価格には、あいかわらず驚嘆の言葉しか出てこないが、それでも世界にわずか25台のこのコンティニュエーションモデルをオーダーした、あるいはしたいと願うカスタマーは多々いるのだろう。

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またジャガー・クラシックからは先日、ル・マン24時間レースでのCタイプの初勝利を称える限定モデル、「Eタイプ ZPコレクション」も発表された。オールトンブルーのドロップヘッドクーペと、クリスタルグレーのフィクスドヘッドクーペの2台1組で販売される、往年のEタイプからインスピレーションを得たというこのシリーズは7組限定。こちらもその争奪戦は激しさを増しそうだ。

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