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1万回転OKなエンジンも積んでいた2代目「サニー」! レースシーンで大活躍したファミリーカーでした【国産名車グラフィティ】

王座を長年守り続けた名機A12型エンジンを搭載

初代モデルからトヨタ「カローラ」と販売台数で壮絶な戦いを繰り返したダットサン「サニー」。2代目サニーはエンジンだけでなく内外装のデザインを向上し、一気に引き離しをかけてきた。しかもレースシーンではデビューウィンを飾るほど走りの実力は高く、マイナーツーリングカーレースでも大活躍をしたのである。

存在感のあるフォルムで快適性も向上

乗用車の生産台数が300万台を超え、欧米に追いつき追い越せと勢いづいていた1970年、ベストセラーカーの座を争っていたサニーとトヨタ カローラが相次いで2代目に生まれ変わった。正月気分冷めやらぬ1月6日、先手を取ってモデルチェンジを断行したのがダットサンブランドのサニーである。2代目に与えられた型式は「B110」だ。

初代サニーは、優れた機能性と信頼性の高さを売りに登場した。できのいいファミリーカーだったが、実用性において少し心づかいが足りなかったため、後から登場したカローラにベストセラーの座を奪われている。そこで2代目は見栄えをよくするとともに、快適装備も充実させた。

小ぶりに見えたボディも大きく見せるように工夫している。エクステリアは初代の面影を残しながら車格を高めたストレート基調の伸びやかなデザインだ。ボディタイプは2ドアと4ドアのノッチバックセダン、そしてファストバックの2ドアクーペと商用のバンを設定している。

初代B10型サニー1000と比べると全長は10mm、ホイールベースは20mmしか延びていない。だが、全幅を50mm広げ、全高も45mm高くしたから押しが強い。サイドにカーブドガラスを採用したことも効果的だった。「隣のクルマが小さく見えま〜す」のCMコピーからわかるように、存在感は際立っている。

フロントマスクはセダンとクーペでデザインを変えた。ともに丸形2灯式ヘッドライトだが、セダンはライトとグリルの横バーをつなげ、ワイド感を強調している。これに対しクーペは、横バーを長方形のグリルで囲んだことで印象は大きく違う。リアコンビネーションランプは横長の端正なデザインだ。サイドビューで目を引くのは前席の三角窓で、歴代サニーで最後の採用となっている。また、クーペはドアの後方、キャラクターラインにメッキのガーニッシュを並べ、アクセントとした。

2代目サニーは新開発のA12型直列4気筒OHVエンジンを積む1200シリーズでスタートする。だが、1971年4月にエクセレント1400シリーズを仲間に加えた。ボンネット部分を130mm、ホイールベースを40mm延ばしたロングノーズが特徴で、キャッチフレーズは「ハナがたか〜い1400」である。フロントマスクは角形フォグランプを内蔵した専用デザインとした。

エクセレントが搭載するのは、510型「ブルーバード1400」から譲り受けた1428ccのL14型直列4気筒SOHCだ。シングルキャブレター仕様とSUツインキャブ仕様が用意された。このエンジンを積むためにフロントピラーから前を延長したのである。タイヤもインチアップして13インチとするなど、かなり背伸びした印象が強い。

レース仕様なら1万回転も許容した直4 OHV

1200シリーズの心臓は、サニー1000のA10型直列4気筒エンジンのストロークを延ばし、ボア73.0mm、ストローク70.0mmとしたA12型直列4気筒OHVだ。総排気量は1171cc。カムシャフトを使ってプッシュロッドを押し上げ、ロッカーアームを介して燃焼室頭部のバルブを動作させるが、そのカムシャフトの位置を高くし、高回転まで気持ちよく回るようにした。吸・排気系の配置はカウンターフローだ。

耐久性に優れた鋳鉄のシリンダーブロックを採用し、クランクシャフトは3ベアリング支持から5ベアリング支持へと変更している。最初はシングルキャブ仕様のみの設定で、68ps/9.7kgmを発生。トランスミッションは3速コラムシフトと4速フロアシフトのMTで、最高速度は150km/hだ。

誕生から3カ月後の4月、ホットバージョンの1200GXを投入した。圧縮比を10.0まで高め、SUタイプのキャブレターを2基装着している。プレミアムガソリンを使用したこともあり、最高出力は83ps/6400rpm、最大トルクも10.0kgm/4400rpmへと向上した。ボディは軽量だから、4速MTを駆使すれば0-400mを17.4秒で走りきり、最高速度は160km/hとなった。

1972年8月、1200GXは、さらに豪快な走りを実現するために1200GX‒5を投入した。ツインキャブ仕様のA12型エンジンに組み合わされたのは、5速のギアレシオが1.000の直結5速MTである。しかもヒューランドパターンと呼ばれる、マニアックなローバックの5速MTだった。

1速ギアが左下に位置し、2速と3速ギア、4速と5速ギアは直線配置となっている。5速がオーバードライブではなく、エンジンのおいしいところを使える直結タイプのためピックアップも鋭い。レース仕様のチューニングエンジンなら1万回転まで回し切ることができた。

レースではデビューウィンを達成!

鉄板剥き出しでシンプルだった初代サニーと比べると、2代目のインテリアはグッと華やかだ。ソフトパッドをふんだんに使い、水平基調のダッシュボードをドライバーの前に組み込んでいる。メーターパネル以外はブラック基調だった。前期モデルのパネル部分には張り出しがほとんどないフラットな形状で、丸形メーターの縁を少し盛り上げている。

ステアリングはグレードによってウッドと本革巻きタイプ、樹脂素材が用意され、GXは中央のホーンボタンにGXの文字を埋め込んだ。フロントシートはヘッドレスト付きで、最適なドライビングポジションを取りやすい。

サニーは1972年1月にマイナーチェンジを行い、エクステリアとインテリアを手直ししている。外観は、フロントマスクとリアコンビネーションランプ周辺のデザインを変え、セダンはゴージャスに、クーペはキリリと引き締まった。インテリアでは3眼メーターの縁取りが丸形から角形になり、立体感を増したから車格が高まったように感じられる。

後にSUツインキャブ仕様のGX系は公害対策に取り組み、最終モデルでは圧縮比を下げ、キャブレターも換えたレギュラーガソリン仕様も登場。だが最高出力は80ps/6400rpm、最大トルクが9.8kgm/4400rpmへとダウンしている。

B110型サニー1200クーペは、カローラと熾烈な販売合戦を繰り広げたが、サーキットでも名勝負を演じた。デビュー戦は1970年11月に富士スピードウェイで開催されたレース「トランスニック」で、鈴木誠一がデビューウィンを挙げている。熟成が進むまではカローラクーペに苦戦したが、きめ細かい改良によってTSレース界の常勝マシンへと成長。マイナーツーリングレースでも大暴れし、公認が切れる1982年まで王座を守り続けている。

2代目サニーは、全盛を誇った1972年には24万台を超える販売を記録するほど多くの人に愛された。今でもサニーの代名詞的な存在で、海外にも熱狂的なファンは多い。

サニークーペ1200GX-5(B110)
・年式:1972年
・全長×全幅×全高:3825mm×1515mm×1350mm
・ホイールベース:2300mm
・車両重量:705kg
・エンジン:A12型直列4気筒OHV
・総排気量:1171cc
・最高出力:83ps/6400rpm
・最大トルク:10.0kgm/4400rpm
・変速機:5速MT
・サスペンション(F/R)ストラット・コイル/リジッド・リーフスプリング
・ブレーキ(F/R)ディスク/リーディングトレーリング
・タイヤ:6.00-12-4P

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