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ボディ外板に植物由来のコンポジットを採用! 見た目も変わった参戦2年目の「ウルト ハイラックス」がトップ10入り

古い畳みたいな色、とも言われた今年の135号車。植物の繊維の色をそのまま出すとこんな色になる、ということだ

2年連続でアジアを舞台にしたラリーに挑む

「アジアクロスカントリーラリー(AXCR)」はコロナ禍で2020年(第25回)、2021年(第26回)と2回の開催中止。そして2022年大会は会期が延期となり、2023年は無事にこれまで通りの8月の開催となり、2輪(モト)部門22台(サイドカーを含む)、4輪(オート)部門41台を集め、関係者も含めると総勢500名以上、車両は200台を超える規模で開催となった。WÜRTH(ウルト)のカラーリングを身にまとった「#135 Würth TRD Hilux MSB Tras 135」が2022年に引き続いて参戦した。

コ・ドライバーは里中謙太選手

第28回アジアクロスカントリーラリーが、8月13日〜19日の日程で開催された。AXCRは、東南アジアを中心に開催されるFIA・FIM公認国際クロスカントリーラリーのひとつで、1996年の初開催からこれまでタイ王国、マレーシア、シンガポール共和国、中華人民共和国(雲南省)、ラオス人民民主共和国、ベトナム社会主義共和国、カンボジア王国、ミャンマー連邦共和国など8カ国で開催されてきた。

コースは東南アジア各国の独特の公道はもちろん、山岳地帯やジャングル、沼地、海岸、砂漠、プランテーション、サーキットなど、毎年特徴あるルートが設定されている。今回はタイからラオスにかけての総移動距離2000kmのクロスカントリーラリーとなった。

「#135 Würth TRD Hilux MSB Tras 135(TOYOTAハイラックスRevo/T1Dクラス)」を走らせているWÜRTH(ウルト)は、1945年にドイツのキュンツェルスアウでアドルフ・ウルトが創業し、工具&ケミカル・メーカーとして、自動車、建設、一般工業といった分野で事業を展開。ウルトはこのアジアクロスカントリーラリー自体への協賛も行っている。

135号車のドライバーは新田正直選手である。新田選手は、LEXUS IS F CCS-Rニュルブルクリンクプロジェクトや、TEAM SUZUKI ECSTAR MotoGPのチームパートナーとしてカーボンコンポジット製品を供給していた、静岡の本拠を持つ「Tras(トラス)」の代表であり、コンポジットスペシャリストである。

2022年はモーターサイクルジャーナリストの松井 勉選手と組んでいたが、今回のAXCRには当初からほかの選手とのペアを模索していた。そして、この135号車でペアを組むことになったのは里中謙太選手。新田選手は次のように語る。

「名門ラリーチームでしっかり仕事しているような人がいいなと思っていました。それで、できればAXCRの現場を知っている人と組めたらいいと探していました」

いっぽうの里中選手は、今年の参戦予定はなかったことから、この5月に声をかけられ、承諾したという。里中選手は、2022年のAXCRでは、スズキ「ジムニー」で参戦の夷藤新基選手(eArk sports WRT)のコ・ドライバーとして参戦していた。

今シーズンは、オートバックスカラーのヤリスCVTに乗り、冨本 諒選手のコ・ドライバーとして全日本ラリー選手権に参戦中でもある。ちなみに冨本選手は、同じTRDハイラックスMSBに乗る増川 智選手のコ・ドライバーとして今回AXCRに初参戦している。

ボディ外板に天然素材のコンポジットを使用

135号車は、トヨタ「ハイラックス」をベースとして仕立てられたTRDが手掛けたTRDハイラックスMSBである。2022年も同様にウルトカラーの一台と、もう一台、オートバックスカラーのハイラックスが参戦したが、どちらも同じくボディ外板に天然素材のコンポジットを使用することとなった。

2台そろって同じ素材を使用しているが、135号車はより素材をアピールしたいということで、あえて素材がわかるようなクリア仕上げとし、2022年の黒いボディカラーと比較すると、朽葉色という感じになっている。

ちなみに、ボディカラーは、スイスB Comp社が提供する素材そのものの色で、B Compと新田選手のトラスと共同で開発中のもの。さまざまな仕様のものを試しているが、この外板には間にカーボン(CFRP)を挟んだパネルが使われている。2回目の参戦だったが、カーボンに割れがなく、ラリー競技として利用するのはありだと感じたようだ。

新田選手は次のようにコメント。

「クルマの信頼性は2022年同様高いし、今回はタイヤをヨコハマ ジオランダーに変更したけれど、これも信頼性が高い。今回のSSではタイヤをヒットさせてバーストさせたことがあったがその1本だけ。それ以外はトラブルなく、すべてにおいて安全性が高く、このタイヤに助けられ、依存するところも多かった」

まだまだ(アクセルを)踏んでいけるよというエンジニアからのアドバイスを受けながら、このラリーウィーク中も「日々スキルアップしている」と語っていた。

TRDではユーザーのリクエストに応えて車両を仕上げ、さらに車両のサポートも行っており、TRDのスタッフと現地からTCD Asiaのスタッフも同行してカスタマーサポートに従事する。これについては、里中選手とともに、このサポートがあるため、選手は競技に集中できるし、しっかり身体を休めることができる、という。クルマのことはプロフェッショナルなチームに任せる。これも順位を上げる近道だという。里中選手も「エントラントとして競技に集中できるいい環境でした」と話す。

今回の参戦にあたり「ランクルの神様と呼ばれる人から走り方を教わった」と新田選手。

「AXCRで想定されるシチュエーションの走破法を教わりました。これまで怖くてアクセルを踏めなかったところを、どう踏んでいけばいいのかがわかり、前日でこの特訓が活きていました」

135号車は、初日19番手、2日目には15番手、3日目は11番手といった具合に大きなトラブルもなくコンスタントに成績を上げていく。そしてラオスに入った4日目には日本人ペア最上位となる8位でフィニッシュ。初日の前半がキャンセルとなったことで2日目から総合順位では15位につけていたが、ここで一気に10番手までポジションアップ。コース後半セクションがキャンセルとなった5日目は22番手、そして最終日も21番手としっかりと走り切った。そして6日間のSSを13時間35分45秒のタイムとなり、総合10位クラス9位でフィニッシュした。

この結果について、新田選手は「最高の出来だったし、しっかり楽しめた」とコメント。「この結果がわれわれの今後の挑戦にどうこうということではないですが……」と笑って答えていた。三菱ラリーアートチームやTOYOTA GAZOO Racingタイランドといったワークス勢、そしてTOYOTA GAZOO Racingインドネシアチームやいすゞスファンチームなど競合がひしめいているが、さらに上位を目指して次回も参戦を予定している。

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