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欲しいと思うもので「ないものは作っちゃおう」そして使った人に喜んでもらえれば最高です【株式会社コラント代表取締役 堀 雅利氏:TOP interview】

社名はコーラルとプラントをひとつにしてコラントに。ルーツの観賞魚用の水槽の前で株式会社コラント代表取締役 堀 雅利氏

ランプのカスタムといえばヴァレンティ

「コラント」という会社名を聞いても、ピンとくる人は少ないだろう。しかし、「ヴァレンティ」というブランド名ならば、すぐにヘッドランプやテールランプ、そしてLEDバルブなどを思い浮かべることができるはずだ。トヨタ「ハイエース」や「アルファード」のランプをカスタムするとしたら、まず最初に候補に上がるのがヴァレンティの製品で間違いない。今回はこのコラントの創業者である代表取締役 堀 雅利氏に、ものづくりの原点についてお話を伺った。

コラントという社名の由来とは

まずはじめに、冒頭の「コラント」という社名について、説明をうかがった。

「最初に事業を始めたきっかけが、水槽なんですね。いわゆる熱帯魚とか海水魚とか観賞魚が大好きで、それを飼育している上で、こういうのがあったらいいな、こんなのがあったらいいなというのがあって。でも世の中にはない。じゃあ、作っちゃおう、と。そういう思いで立ち上げたのがコラントなんです。英語で珊瑚のことをコーラル、植物のことをプラントといいますよね、そのふたつの単語をひとつにしたのがコラントというわけです。サンゴや水草のある世界をみなさんのもとにとおもって、立ち上げたんです」

ないものは作っちゃおう、という堀氏の発想は、じつは現在のコラントの発展の原動力といってもよい。その発想がヴァレンティというブランドを現在の地位にまで高めたのは紛れもない事実だが、その件に関しては後述するとして、探究心旺盛の堀氏の片鱗は幼い頃のエピソードからもうかがい知ることができる。

「小学校の頃、裕福な家庭の子はモトクロス系の自転車に乗っていたりしたわけですよ。私の自転車と何が違うのか、よく見たらフレームだけ見たら似てるなぁと。余計な部品を全部取っ払っちゃえば同じようになるんじゃないの、みたいな。それで全部取り外したんです。見た目のかっこよさ重視ですから、中途半端にやるのは嫌で、ブレーキまで外しちゃって。それで当然止まることができなくて、怪我しちゃいましたけどね」

スタイルを求めるために、ブレーキまで外してしまうあたりの美意識は、現在のヴァレンティの製品づくりにも通じているようにも思える。では、いつからクルマへの関心が芽生えたのだろうか?

堀 雅利氏の愛車遍歴

「僕たち世代はみんな一緒だと思うんですけど、物心ついた時からスーパーカーブームもありましたし、『マッハGoGoGo』なども観てましたから、クルマは身近な憧れでしたよ。しかも高度経済成長の、かっこいい車がどんどんでてくる時代でしたから。フェアレディ130Zとかが出始めてましたよね。それに現役で30も240もフェアレディは走ってました。それこそサバンナRX-3なんかも走ってましたよね、かっこいい車だらけでした。

最初に免許を取って運転したクルマは、家にあったアルトでしたね。それから親父のセリカも借りて運転しましたね。自分で貯金して手に入れたのは、憧れていた20ソアラです。1G-GTEUの2000ccツインターボでしたね。ただ残念なことに事故でそれを廃車にしちゃったんですけど、保険がおりたので、7M-GTEUの3000ccを積んだソアラ3.0GTリミテッドに乗り換えました。

そのあと、いろいろなクルマに乗ることができたんですが、ソアラとともに一番思い出深いクルマは、ユーノス コスモですね。これはもうハイソカーとして文句なしに超エレガント、そして内装が素晴らしかったですね、なんだこれはというくらい、すごいの一言でした。20Bのトリプルローターに敵うのは、当時ちょっとなかったですよ。ただ、燃費は2キロくらいで、4速ATというのだけが残念でしたけど。いまでも欲しいですね。欲しいけど、もうエキセントリックシャフトが部品で出ないというので……。いい個体が出てきたら買おうかなとは思いますけど」

堀氏の愛車遍歴はその後、仕事のための勉強として、スバル インプレッサ WRX アプライドAやスズキ ワゴンR、そしてトヨタ86に200系のハイエースなどが続く。ワゴンRは自社製品のテールランプを装着して行商をしていたという、想い出深い1台だ。

あったらいいな、をクルマ用パーツで

話は冒頭に戻るが、観賞魚用のアイテムを取り扱う仕事は、軌道に乗せることができず、資金が底をついてしまう。そこで次に好きだったというクルマとバイクで、「こういうものがあったらいいのに」というパーツを作ることとなる。

「2007年ごろ、LEDが欧州の高級車の一部のブレーキなんかで採用されはじめたんです。それが普及すれば、デザイン性の非常にいいクルマが仕上がるんじゃないかと思ったんですね。ボディのプレスとかは技術が発達してかっこいいキャラクターラインが実現化していて、とても造形が進んでいるんです。でもランプっていまいちなんか古臭いというかスタイリッシュではないというか。そこにアウディなどがLEDを取り入れはじめて、それがスタイリッシュですごくかっこいいんですね。日本車もこういう風になればいいのにという思いが心の中にありまして、一念発起してチャレンジすることにしたんです。

最初は200系のハイエースから。200系が一部流行り始めていて、ホワイトレターのエムテクノのホイールを履かせてローダウンして。それをみてカッコイイななと思ったんですが、さらにランプが良ければもっとカッコイイのにと。

それとワゴンRですね。ワゴンRをやっておけば間違いないだろうと。これはこれでとても売れたんです。ひとりでやっていたんで、いろんなイベントに参加させてもらって。製品を持って行って実際に見てもらったりしてね。すると一般ユーザーの方が、『これ、私の車につかないの?』と。車種を聞くとワゴンRとは全然違う車種なんです。クルマに興味のなさそうな女性や一般男性の方にもいいなと思っていただけたので、そこに商機を見出したというわけなんです。

ランプの球だけなら金型を起こす必要もないし、台数が見込めない車種でも装着することができます。明るくするということだけだったら球だけで十分なので、まずは一般の人が振り向くような、本当にお金を払ってでも購入したくなるような球を開発することにしたんです。

そしてLEDの球が完成したんですけど、今度はどうやって売ろうかと考えました。雑誌やネットの広告だけでは伝わらないんですよね、その明るさが。そこで、業販店などに取り扱ってくださいと頭を下げに行ったんですけど、最初に値段を言ったらひっくり返られて。フィラメント球なんて1000円もしないのに、2個で9000円もするLEDですから、当然ですよね。そこで販促用のディスプレイを作って、まずは私が売り込みに行って、その反応を見てよかったら正式に商品をおろしてもらって拡販の許可をくださいということになったんですね。そうしたらすぐにドカドカドカっと売れるようになって、その資金を元に、新しい車種の展開を広げていったというわけです」

世界で一番最初に製品化したという自負

LED球で成功を収めた堀氏ではあったが、一番心に残る自社製品に関してのエピソードは、いい話ばかりでもないようだ。

「ヘッドランプにはH4とかH8とかありますよね。それをなんとかLEDにできないかとずっと開発してたんです。それこそ光学分析の数百万するソフト、一千万円近い機材を数台導入したりして。それで3年も4年もかけて開発していたんです。

なんとか形なるんじゃないかと見えてきた時に、台湾よりもいい設備を持っていたところが日本にあって、そこに作ってもらうことにしたんですね。しかし、出来上がってきたものは、こちらが指定している部品と違うものを、間に合わせのために使ってしまっていて、回収騒ぎのようなことになったんです。指定どおりの部品でに作ってくれていたら、何も問題はなかったんですけれども。

それがいい意味でも悪い意味でも話題になりましてね。いままでにない画期的だったもので世間に広がったんです。そしてわずか3カ月後には他社が同じような製品を出してきたんです。依頼した工場が、ほぼほぼ完コピして他社製品を作っちゃったんですね。そういう世知辛い思いもしたんですけど、世界で一番最初に製品化したという自負はあるんです。まあいろいろありましたけど、結果みんなが喜んでくれているということで、自分は満足をしています」

特許を申請すればよかったのにと考えてしまいそうだが、LED素子そのものの発明ではないため、特許申請は難しいと判断したのだそうだ。

安心・安全、そしてメーカーとしてのモラル

「NAPACに加盟したのも、意識を高めてこの業界全体の質──考え方・モラル──をあげて、みんなで協力して正しいもの、いいものを売りましょうという姿勢に賛同したからです。粗悪なものであったりとか、レギュレーションに合わないモノはやめましょうということに取り組んでいる団体なので。その考え方には大賛成です。バレンティの商品はすべて、国連欧州経済委員会が作成したECE基準に準じることを前提に製品化しています。

あと海外への販売に力を入れようと思っていますが、そうすると輸出先のレギュレーションをクリアしなければなりません。カスタム品だからといって無視するわけにはいかないんです。ヴァレンティはきまじめに輸出先のレギュレーションに合わせています。そういう意味でもNAPACの考え方と同じですし、こうした考え方をNAPACの一員として広めなくてはならないと思っています。どうしても『改造は……』と、思われがちなんですけど、そう思われないような活動をしていきたい、NAPACと一緒に活動をさせていただきたいと思ってます」

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観賞魚用のアイテムからスタートしたコラント。そして自動車用の部品を手掛けるようになってようやく経営は軌道に乗るようになる。さらにいま、おせち料理や犬用のペットフード、それにコスメに関するアイテムなど、事業は多岐にわたって展開中だ。

「僕がいいなとか、どうしてこういうものがないんだろうとか、こういうものが欲しいな、というのを気づく範囲で、自分が携わっている範囲内でどんどん作って、それをみんなに提供して喜んでもらいたいですね」

そう語る堀氏。「ないものは作っちゃおう」という精神で、さらに人々を喜ばせることになるだろう。

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