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昭和のクルマはタバコモクモクあたり前! 懐かしの愛煙家グッズと煙対策を振り返ろう

当時は灰皿にツブツブの芳香剤/消臭剤を入れるのも流行っていた

電車やバス、飛行機でも喫煙OKという時代がかつて存在した

JTが調査したところによると、2018年の成人喫煙率は男性が27.8%、女性は8.7%だったそうだ。ところがおよそ半世紀前の1965年は、男性82.3%、女性15.7%が喫煙者だった。昭和の時代、長距離を走る電車では座席に灰皿があり、クルマにも灰皿が装備されているのがあたり前だった。それが顧客満足度を高めるためには必要だったのだ。当時のインテリアデザイナーは、灰をこぼしにくく容量がある灰皿をインテリアのどの位置に装備するのか、頭を悩ませたことだろう。

今も残るシガーソケット、元はタバコのライターだった

自分で運転するわけではない電車では大きな問題とはならないが、クルマで問題となるのがライターだった。使い捨て式のライターだったら、手を放せば火が消えるからまだいいのだが、昔のライターはフタを閉めなければ火が消えないというものが多く、走行中にタバコを吸おうと思って火を点けたはいいものの、そこでライターを落として大惨事、なんていうこともあったことだろう。その危険性を防ぐために考案されたのが、いまはもう見かけない、車載の電熱式シガーライターだった。

このシガーライター、構造は簡単。押し込むことで電源回路が繋がり、電熱線が加熱されると押し込んだプッシュボタンが戻ってくるので、それを引き抜いてタバコの先端に電熱線を押し付けて吸えば、着火する。仮にシガーライターを落としたとしても電熱線はケース内にあるため、延焼する危険はない。

しかし喫煙者が減少したいま、シガーライターを装備しているクルマはほぼ絶滅してしまった。しかしその名残はいまでも残っている。12V電源を取るための通称シガーソケットは、シガーライター用として1960年にアメリカのSAEが決定した、SAE J563規格に則ったものなのだ。いまはアクセサリーソケットとして使われているあの穴は、もともとシガーライター用としてつくられたものなのである。

車内でモクモク喫煙していると換気が重要なポイントに

ところで、タバコを吸っていて問題となるのは、煙である。昔のパチンコ屋さんなどは煙が立ちこめていて遠くが見通せない、なんていうところもあった。健康がとか副流煙がとかもそうなのだが、煙が目にしみる、なんていうジャズの名曲があるけれども、直接的に煙が目にしみて涙が出たりショボショボしたりする、というのは困ったものだった。

余談になるが、そういう店内環境を改善するため、パチンコ屋さんは尋常ではないほどの換気状況を実現している。ベースとなっているのは建築基準法で、不特定多数の人が入る施設での換気回数が定められているのだが、ほとんどのお店ではその基準をクリアしているどころか、10分に1回は店内すべての空気が入れ替わるという換気能力となっているそうだ。映画館が約20分で1回空気がすべて入れ替わるそうなので、その倍の能力がある、ということになる。

さて、そんなに大きな施設ではなくても、煙はやはり問題となる。とくに車内では、タバコを吸うのはいいとしても、煙が目に入ってショボショボしてしまうと、本格的に危ない。そのため喫煙があたり前だった時代のクルマにとっても、換気は重要なポイントだった。

昔のクルマでは三角窓が優秀な換気システム

といっても、クルマには古くから、優れた換気システムが搭載されていた。三角窓である。エアコンどころかクーラーすらなかった時代、熱がこもった車内はじっとしていても汗が噴き出してくるような状態だった。筆者の両親が乗っていたスズキ「フロンテ」や、その次に買ったトヨタ「カローラ1100」にはクーラーなどなかったため、というかおそらくオプション装備すると予算を超えてしまうので装備できなかったというのが正解なのだろうが、夏場はとても暑かったことを記憶している。

しかし、走ってさえいればそれなりに快適だった。それは三角窓があったからだ。三角窓というのは、Aピラーとサイドウインドウの間に装備されている、回転して開く窓のこと。普通のサイドウインドウはドアの中に下がっていくだけだが、三角窓は上下に軸があって、前方が車室側に、後方は車外側に開くようになっているので、正圧と負圧の関係から開ければ車内の空気が車外へと引き出され、換気ができるようになっていた。

軸の部分にはある程度の抵抗がかかっているし、前方内側に開くほうは押し込まれ、後方外側に開くほうは押し出される空気の流れとなっているため、結構な速度を出しても閉まらないはずなのだが、実家のカローラ1100は、売る寸前には軸部分がゆるゆるになっていたせいか、開けても走り出せば勝手に閉まってしまうようになっていた。でも4速コラムシフトのカローラ、いいクルマだったなぁ。

そういえば昔乗っていた初代VW「シロッコ」にも三角窓は装備されていた。左ハンドル車だったが、ある日走行中に、右側三角窓のロック用金具がフロアに落ちてしまい、走行風で三角窓がぱたぱた動くようになってしまった。もちろんそのままでは困るので、とりあえずはガムテープで固定をしておき、その後ホームセンターでガラスにも使える強力接着剤というのを買って付けてみたのだが、すぐに落ちてしまってどうにも固定できなかった。結局はディーラーまで行って専用接着剤で付けてもらったのだが、あの接着剤はなんだったんだろう。

ドアバイザーは喫煙者ならずとも重宝する換気グッズ

三角窓がないトラックや箱バンなどでは、フロントフェイスに走行風を車内に取り入れるためのフタ、というかフラップがついているものもあった。こういうクルマの場合は、タバコを吸うときには外気導入フラップを開ければ、煙ることはない。

やがて、三角窓がデザイン上の問題や、ここを壊してドアロックを外すという盗難問題などからすたれてしまうと、煙を排除することが難しくなってしまう。そこで装備されるようになったのが、ドアバイザーだった。

ドアバイザーというのは、ドアウインドウ上部にセットするカバーのこと。これがなくてもドアウインドウを少しだけ開ければ、正圧と負圧の関係から車内の空気が車外へと引き出されるので換気はできるのだが、問題は雨の日。ドアウインドウを開けると雨が入ってくるけど車内は煙い、というとき、ドアバイザーをセットしていれば、雨を防ぐことができたのだ。そのためドアバイザーを付けていないクルマのほうが珍しい、という時代もあったのだが、喫煙者が減ったいま、ドアバイザーを付けているクルマはだいぶ少なくなった。

ドアバイザーは走行風によるノイズ増大の原因にもなるし、空気抵抗も増えるので燃費的にも不利。もちろんそういったデメリットを抑制した、空力解析から生まれた先進的なドアバイザーもあって、いまでも無限ではベンチレーテッドバイザーとして販売されているし、オートエグゼではスポーツバイザーとして販売されている。

またまた余談だが、内気循環のままエアコンで温度調節だけをおこなって長期間走り続けていると、車室内の空気が悪くなり、判断力が鈍りがちとなることもある。一般的には、車外の空気がキレイかな、というときには外気導入に切り替えて換気をすればいいのだが、煙という目に見えて環境が悪化しているものがないと、気が付きにくいものである。

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