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2023年最後のレースイベント「Goodyearドリームカップ」を制したのは4連覇の「神奈川トヨタ☆DTEC GR86」でした

今年のゴールシーンは雨。4周もの大きな差を付けていた98号車にとっては、最後のレース再開もまったく問題としなかった

FSWで開催される年末最後のレース

毎年恒例、年末最後のレースイベントである「Goodyearドリームカップ」。2023年も12月16日に富士スピードウェイで開催された。2011年にスタートしたナンバー付き車両による6時間耐久レースで、2020年の中止をはさみ、今回が12回目の開催となった。当初はトヨタ「ヴィッツ」だけだったが、2014年からは「86/BRZ」が加わり、2021年には「ヤリス」が参入、2022年は「GR86/BRZ」も加わった。そして今回はマツダ「ロードスター」が新参入。マシンレギュレーションは、それぞれのワンメイクレースに準じているので、シーズンを戦ったマシンそのままで参戦することができる。

5車種6クラスでの6時間耐久レース

ヤリスがMTとCVTで分けられ、5車種6クラスでのレースとなった。エントリー費用は約13万円で、6時間のスポーツ走行だと思えば割安。仲間4人で割れば約3万円+αで、正当なレースとして楽しめるのだから参加のハードルは低い。特徴的なルールとしては、給油する場合はピット滞在時間7分以上が必要となっている。

給油はパドック内のガソリンスタンドで行うために渋滞する場合があり、消費時間を大きくすることで余裕を与え、安全性を確保するのが目的だ。また1度に給油できるガソリンの量は、86勢が25リッター、それ以外が20リッターに制限されている。給油が1回増えると7分、周回数にして約3周+のタイムロスとなるため、燃費も無視できない。使用タイヤも3セットに制限されているので、86勢ではタイヤへの負担も気になるポイント。ペースコントロールを含めて、戦略的に取り組まなければならないのだが、それがまた、このレースの面白さでもある。

2023年のエントリー台数は63台。2022年が47台、2021年が42台だったから、大盛況といったところだろう。その内訳は、GR86/BRZが5台、旧型86/BRZが2台、ロードスターが6台、ヤリスが35台、ヤリスCVTが6台、そしてヴィッツが9台となった。人気の高いヤリスカップからの参戦が多いのは当然なのだが、一方でGR86/BRZが少ないのは、トラブルがあった場合に来シーズンに向けての新車の納車に不安があるためらしい。

98号車 神奈川トヨタ☆DTEC GR86が3連覇中

総合優勝の最有力候補は98号車 神奈川トヨタ☆DTEC GR86。なにしろ2019年から3連覇中で、通算4勝を挙げている常勝チームだ。ドライバーラインナップも、元嶋佑弥選手と柴田優作選手のコンビで、このチームのノウハウが後押ししなくても優勝争いを展開するに違いない。

対抗馬はGR86/BRZではなく、旧型86/BRZの50号車ATRACT/K BRZが有力。ラップタイムでは明確な差が出てしまうが、ドライバーに吉田隆ノ介選手と加藤潤平選手が加わっているのが大きい。耐久レースだからこそ、ドライバーの実力が大きくモノを言うのだ。残念なのは、エンジン排気量が小さいものの、燃費でそれほど優位性がないこと。

ベストなタイミングで給油できればチャンスとなる

6時間もの耐久レースだけに、セーフティカーが何度も登場するレースもあった。そのタイミングで給油中だったりすると、タイムロスが大幅に小さくなる。そういった混乱をチャンスにすることができたチームが優勝、ということも十分にあり得る。そういう意味ではヤリスが総合トップを獲得するケースも考えられる。レースラップでは、ペースコントロールが必要なGR86と、ほぼ全開で走れるヤリスの差は4秒前後と想定されていて、150周で600秒の差が生れる計算だ。給油回数でヤリスが1回少ないので420秒を差し引くと、180秒となる。ヤリスにも勝機はある。

そのヤリスで優勝争いを展開しそうなのは、123号車NETZ富山Racing Yarisと、1号車N中部GRGミッドレススノコ制動屋Yarisの2台。ネッツ富山は2021年から2連勝中で、ドライバーも松井宏太選手と水野大選手がアシストするという布陣。ネッツ中部ミッドレスはエースの神谷裕幸選手を含めて全員が社員ドライバーだが、2013年から4連覇を達成しているチームだ。

予選のポールポジションは98号車の元嶋佑弥選手だった

レース前車検で給油口のリッドに封印がされて予選を戦い、そのまま給油できずに決勝レースがスタートする。そのため昨年までは予選をスローペースで計測だけするチームが多かった。しかし今回からはクラス毎に予選上位3台の平均の110%以内でないと予選落ち(=ピットスタートとなるので1周遅れとなる)というルールとなったため、1ラップのみとはいえ普通のペースでの予選が展開された。

天気予報では前夜からの雨が上がるはずだったのだが、朝の公式予選ではまだ雨が降り続いていた。ポールポジションは98号車 元嶋佑弥選手で、2番手601号車 三觜正人選手に8秒近い差をつけた好走。3番手にはなんとヤリスの1号車 神谷裕幸選手が食い込んだ。

例年なら寒さに凍えて、ヒーターで温められたピットに長居したくなるのがドリームカップなのだが、今回は初冬としては暖かい気温だった。決勝レース前には雨も上がっていたものの、路面はウエットのまま。なかなかドライ路面にはなりそうにない。

ポールポジションからスタートした98号車 元嶋佑弥選手は、そのまま後続を一気に引き離しにかかる。しかし乾いていくウエットの路面、イージーにペースを上げるわけにもいかず、後続のマシンたちも引かずにピタリと食いついて来る。20周目に柴田優作選手へとドライバー交代。ライバルたちもほぼ同時期にドライバー交代をしたことで、トップをキープ。37周目に1回目の給油で7分の休憩となり、無給油で走り続けるヤリスクラスの1位、123号車 NETZ富山に総合トップを明け渡す。彼らが最初の給油となった53周目にトップに返り咲く。

その頃には後続のマシンとの差はかなり大きくなっていた。それでも、時として10秒以上もペースを大幅に落としての走行となったが、それは周回遅れをパスする時に十分な、万全なタイミングまで待ったためだ。もはや神奈川トヨタチームにとっての唯一最大の敵は、アクシデントでしかなかったのだ。

天気までも味方につけた神奈川トヨタGR86

61周目の2度目の給油でも、同じGR86/BRZクラスを戦う22号車ファルコンレーシングにトップを譲るが、63周目に彼らが給油に入ったために総合トップへ復帰。おそらくラップタイムでも、燃費でもクラストップだったのだろう、リードをどんどん拡げていく。

レースは5時間を経過したあたりで、再び雨がコースに降り注いだ。冷たい雨は大幅にグリップを低下させるのだが、幸運なことに前日の練習走行が雨だったため、多くのドライバーはウエット路面には対応できていたのだろう。それでもコースアウトするマシンは出てしまい、残り29分という最終局面でセーフティカーとなった。

毎回このレースではギリギリ間に合わないと判断し、最後に給油するチームやペースを落としてチェッカーフラッグまで燃料を持たせようとするチームが出現するのだが、今回はそういう事態は起きなかった。この最終局面でのセーフティカーによるスローな周回によって燃料は一気に楽になったからだ。

雨は一向に弱まらなかったものの、残り7分でレースは再開。最終的に98号車 神奈川トヨタは2位601号車KONG RACINGに対して、給油1回分以上に相当する4周もの差をつけてポール・トゥ・ウィン。4連覇を達成することになった。ヤリスクラスでは、最後に追い上げて逆転優勝を狙っていた1号車ネッツ中部ミッドレスだが、セーフティカーによって阻まれてしまい2位。クラス優勝は123号車ネッツ富山となり、こちらもクラス3連覇となった。

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