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【実録】フェリーならEVを充電しながら移動は超快適! 九州から「大阪オートメッセ」に行くのに超オススメです【復路編】

スバルのBEVソルテラのオーナーが東京から大分オートポリスまで往復してみた

2023年6月にスバルのBEV「ソルテラ」が納車された筆者が同年10月にソルテラで東京から大分県のオートポリスまで行った往復2175kmの充電旅。往路は8回の充電を行い熊本を経由して大分のオートポリスに到着し、熊本の宿とオートポリスでの往復では、回生ブレーキを駆使しながら電気をうまくやりくりすることをお伝えしました。今回はフェリーを活用した復路編です。

帰りは別府から大阪南港までフェリーを利用することに

往路に東京・新宿の都庁から熊本を経由して大分のオートポリスまで8回の充電を行った。復路で同じことをしても意味がない、ということで考えたのが、帰りはフェリーに乗り大分・別府から大阪南港まで移動するプランだ。

オートポリスでスーパーGTのレースが終わり、すぐに帰ることを選択すると熊本空港の最終便の飛行機に間に合う。それで帰京・帰阪するドライバーや関係者は多い。

オートポリスから熊本空港までほぼ一本道となるため、渋滞にハマりながら帰るとなると、レンタカーを返却し空港でのチェックインもギリギリになるかもしれない。急いで帰ることに意識を持ちすぎると安全運転もおろそかになりがちだ。できることなら後泊も考えたスケジュールを組みたいところ。

筆者の場合はスーパーGTのドライバーやチーム関係者に取材を行いたいこともあり、急いで帰ることは諦めて後泊を選ぶようにしている。宿に戻り取材内容を整理して英気を養うことも重要だ。

月曜の朝は帰るだけなのでのんびりでも良いが、今回は大分の玖珠にて取材を行う予定のため早朝に宿を出発した。

前日に充電を行っていないが月曜出発時の走行可能距離は64%・254kmとなっている。BEVに慣れていないと64%は少し躊躇していまうかもしれないが、慣れてくると64%もあれば山越えしても目的地の玖珠には着けると思えるようになってくる。

玖珠の名物「戦車道」を取材しつつゆったり別府へ

玖珠に向かうにはオートポリスに行くのと同様にミルクロードを走り山登りを行うが、すぐに山下りをするので回生ブレーキで回収できていく。その後も何度か峠超えを行うが、山登りで消費しながら山下りで回収ということを繰り返す。全量の回収はできないので消費の方が多くなるが、それでも80km走って「道の駅 童話の里くす」に着いた時には走行可能距離は40%・160kmとなっている。想定よりかは残っている感じだ。

道の駅 童話の里くすでは自衛隊の戦車が一般道を走り抜けていくということを取材した。間近で見られる戦車の音や振動の迫力は一見の価値があるほど。この一般道は戦車道とも呼ばれており地元の方はもちろん、この戦車の移動を目当てに来る人もいるようだ。

その戦車道の周辺取材を行い電池を少し消費したので充電を行う。道の駅 童話の里くすに充電器はあるものの20kWとあまり期待はできないが、35%しか残量が無ければ充電はしておいた方が良い。この先別府まで移動するため湯布院を通るが、残念ながら道の駅 湯布院の他に急速充電器は見当たらないので、ここの道の駅 童話の里くすで充電するしかない。

35%から48%まで充電をしたところで出発する。別府を一望できる展望台や地獄プリン、別府市内をぐるりと周り、市内観光を堪能しながらついに別府港に到着した。

2023年4月に就航した新造船「さんふらわあ むらさき」

別府港に停泊しているのは「さんふらわあ」だ。船体に大きな太陽マークが描かれているので見たことがある人も多いだろう。

さんふらわあの航路は現在4つ。別府港~大阪南港、大分港~神戸港、鹿児島県の志布志港~大阪南港の関西~九州航路、そして茨城県の大洗~北海道の苫小牧の航路だ。現在は、2023年10月に新会社として発足した「商船三井さんふらわあ」がこれらのルートを運航している。

今回乗船した別府港〜大阪南港航路を結ぶさんふらわあはもちろん、他の一部の航路でも普通充電の設備が用意されている。つまり船に乗っている間にBEVの充電を行える。

大阪から大分までの区間を、行きは草津SA、岡山日産、吉備SA、宮島SA、壇ノ浦PA×2、熊本インターのミスターマックスと、この区間だけでも7回も充電している。この7回分の充電を乗船している間の1回で済むとなればこれは効率的だろう。

さんふらわあを運航する株式会社商船三井さんふらわあのご協力のもと、別府港でさんふらわあ むらさきと2ショットを撮らせていただいた。本来ならこの撮影場所は車両を置くことができないので、一般ユーザーのみなさんはここに置かないようにしていただきたい。

船内での充電には予約が必要なのでお忘れなく!

さて、このさんふらわあ むらさきでBEVやPHVを船内で充電するためには予約が必須だ。乗船予約をWEBや電話でとったあとに、電話でBEV電気自動車であることを連絡する必要がある。少々手間だがこの連絡を行わないと充電できない。

乗船のために待機場に行く際、スマホに送られてくる予約案内を見せることで待機列が変わってくる。BEVなど充電する車両のレーンをはじめ、ペット連れレーン、車椅子など介助が必要な方のレーン、そして一般乗用車のレーンなどに分けられていく。

今回乗船する別府港〜大阪南港航路では充電器を予約した場合、スマート乗船チェックインが対象外となるため、窓口に行き受付を済ませると「充電車両」のステッカーをもらう。船に乗り込む際はこのステッカーを見せながら乗船する。当日は出航時刻の90分前までに港に着くようにしたい。

別府港〜大阪南港を結ぶ航路では車両甲板に入る際の天井高の都合上、高さ制限が2.2mになっている。現状国内で販売している車両単体で2.2mに引っかかるBEVはないと思うが、キャリアなどを搭載した際にギリギリになることもあるので注意が必要だ。またBEVに限らずだが、極端に地上高が低い車両も利用できない場合があるので、こちらも注意が必要だ。

船内に設置されている3kWの普通充電器はすべて壁際に設置されているため、BEVはその近くに案内されるようになっている。その日の荷役状況により乗船まで時間がかかり、車両を離れて待合所に行くような場合は、周辺にいる係員にひと声かけておきたい。

3kWの普通充電で約12時間の船旅

いよいよ乗船となりトラックなどを置く甲板を通り過ぎて乗用車甲板に行く。そして壁際に行くと普通充電器が用意されている。コネクターを車両に繋ぎスイッチを押す。カード認証などはなく充電が開始される。操作はいたって簡単だ。

このスイッチは押した感触が若干わかりにくいが、ランプの点灯や点滅で状況を示してくれる。操作パネルだけでなく車両の通電状況なども確認すれば、充電が開始されたのが確実に分かるだろう。

今回この船内での充電を行うため、わざと道の駅 童話の里くすから別府までの間で充電を行わず、さらに別府市内でも電気を消費していくようにした。そのため別府市内で電気が減っていると、思わず充電したくなる衝動にかられるがここはぐっと我慢したいところだ。なるべく電池が空の状態からの方が充電効率が良いと言われているのと、充電がどのくらい行われるのか検証するという意味合いのため消費させてきた。

別府港を夕方6時45分に出航し、大阪南港に朝6時35分到着するため約12時間の船旅だ。船内の充電は30%からスタートして、12時間あれば3kWの出力であっても満充電になるだろう。

最新フェリーの中は豪華ホテルのような快適さ

船内に入り予約した部屋に行ってみる。今回は空席の都合上スーペリアツインの部屋を利用したが、スイートからプライベートベッドまで約20種と多様な部屋が用意されている。部屋の種類と車両の大きさにより金額は変わるが、今回のように車両1台(5~6m未満)と乗員1人分で、仮にシングルルームを利用する場合、4万2550円(2024年1月~3月、スーペリアシングルをA期間にインターネット予約で利用した場合の運賃)となる。金額を抑えたい場合は部屋のグレードを考慮していけば良い。

別府港から大阪南港まで高速料金と比べると船旅の方が高いと思われるかもしれないが、12時間のゆっくりとした旅が味わえるほか、高速道路での充電の不安、走り続けることでの疲労に比べると、船旅はなんともゆったりしていて疲れないのが良い。

辺りが暗くなった夕方6時45分に出航の合図となるドラが鳴り響き別府港を出航する。デッキに出てみると別府港の職員のみなさんがお見送りをしてくれた。これも船旅ならではの光景と思うと、こちらも思わずスマホのライトを点けて応える。一期一会の旅ならではだ。

船内にはレストランが用意されており、ビュッフェ形式で料理が並ぶなかには大分名物の料理や、さんふらわあ名物のカレーなどがいただける。別料金とはなるがアルコールもいただけるのがクルマ旅には無い楽しみだ。もちろん翌日には運転があるのでほどほどにしておきたいところ。

さらに展望大浴場もあるのでゆったりと湯船につかりながら夜の海を眺めることもできる。瀬戸内海を航行するので、波が穏やかなことが多いため揺れが大きくないのもこの航路の特徴だ。

今回乗船したさんふらわあ むらさきは最新のフェリーで、従来からある重油を燃料にしているフェリーではなく、LNGを燃料としており環境に配慮されている。さらに最新船ということもあり揺れや振動がほとんど感じられない。ベッドで寝ていても音や振動が伝わってこないためゆっくりと寝られる。従来のフェリーのように音や振動を気にしている方もいるかもしれないが、昔の船とは全く違うのを感じられる。

瀬戸内海を走っていくため、来島海峡大橋、瀬戸大橋、明石海峡大橋といった瀬戸内海の大きな橋をくぐる通過予想時間も客室のテレビなどで確認できるが、ぐっすり寝てしまっていたため全く見られなかったのは残念だ。

別府~大阪南港は「大阪オートメッセ」への移動にもオススメ

そうこうしていると大阪南港に近づいてくるのと同時に朝食ビュッフェもオープンする。朝食時間の終わりの頃に大阪南港が迫ってくる。この後東京までのロングランを考えればしっかり朝ご飯を食べていた方が良い。道中のどこかで朝ご飯を食べようとしていると、充電との兼ね合いやどこで食べようかと悩んでしまい時間も移動も無駄になってしまうことも考えられる。

いよいよ下船のために車両甲板に行くと充電器がまだ点滅している。まだ充電していたが接続を解除して車内の充電量を確認すると、92%となっており惜しくも100%に届かなかった。しかし92%充電されていて353km走行できるとなっていれば何も問題は無いだろう。

大阪南港といえば毎年2月に大阪オートメッセが開催されるインテックス大阪とほぼ直結の場所。自車を持ってくるのも良いが、人だけ乗船してフェリー移動をして、大阪オートメッセを堪能してまた別府に戻る、ということもできるわけだ。九州方面からの来場に使える交通手段ということもわかった。ぜひ皆さん活用してみてください。

大阪から東京までは2回の充電でラクラク帰還

さて大阪南港を走行可能距離92%・353kmで出発できればあとは楽々だ。名阪国道・新名神・伊勢湾岸道・新東名と繋いで浜松SAまで走り18%・72kmまで使い切ったが、150kW充電器で充電すれば79%・311kmまで復活する。次に海老名SAに着いた時は21%・82kmになっているが90kwで充電を行い88%・337kmになった。海老名SAは充電渋滞が起きることもあるが、40kW充電器であっても無事に新宿都庁まで帰ることができる。

こうして大阪南港からの帰り道は2回の充電を行ったが無事帰京し、新宿の都庁に着いた時は79%・303kmとなっていた。全行程トータル2175kmを無事に走り切ることができた。

もちろん充電スポットなどは考える必要はあるし計算も必要だ。しかし往路でガソリン車とほぼ同じ時間で走り切ったことを考えれば、BEVだから長距離は行けない、ということはないことは証明できたと思う。

高速道路やフェリーなどを駆使し旅を楽しむ。こういう方法もあるという参考になれば幸いだ。さて次はどのようなチャレンジを行おうか。

※充電器の設置状況は2023年10月現在の取材時の状況です。

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