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常用10000回転のエンジンを目指すスズキ「アルト」! オーナー自らがセッティングを始めたいきさつとは

ターボエンジン搭載の猛烈マシンは進化中

新規格のNAエンジン搭載軽自動車で争われる「東北660選手権」。その派生シリーズとして、ターボエンジン搭載車で戦うのが「東北660ターボGP」です。今回は強烈な速さを見せつけている、スズキ「アルト」を駆る齋藤博文選手を紹介します。

アンチラグまで搭載し刺激的な加速を味わえる

2023年12月3日に開催された、東北660ターボGPの最終戦。100ps以上を発揮するタービン交換車を対象とした1クラスに、ライバルたちの度肝を抜くマシンがエントリーした。

アクセルオフ時に強烈な爆発音を響かせ、ホームストレートを駆け抜けるHA23V型スズキ「アルト」だ。K6AエンジンにF4タービンをボルトオンし推定170ps、WRCなどでお馴染みの『アンチラグシステム』も搭載する。

ドライバーの齋藤博文選手は以前から東北660選手権に参戦しているが、今シーズンはレース直前に不運なアクシデントが続いており、ボディもエンジンも一新してようやく復帰することができた。ほとんどを齋藤選手がプライベートで作り上げた、1クラス制覇を目指すマシンのディテールを紹介する。

最大のポイントは何といってもエンジン系。NAしかないHA23Vアルトに「ワゴンR」などのK6Aターボをスワップしており、エンジン型式が一緒で構造変更が不要なためレギュレーション的にもOKだ。

この仕様は派生シリーズの「ターボGP」でもよく見かけ、F4タービンを使う車両も過去にいた。齋藤選手がすごいのはここから先のチューニングで、まずはスロットルをZC72S型スズキ「スイフト」の電子式に変更。HA23Vのほうが純正よりも口径が大きいうえにブーストの立ち上がりがよく、さらにアンチラグシステムを搭載するためには必須のメニューだったという。

新エンジンは常用10000回転を目指す!

アクセルオフのときもスロットルバルブを開いて空気を流す最新の制御は、電子スロットル化とフルコンの「ハルテック」があってこそと齋藤選手は話す。セッティングもすべて自らの手で行っているが、ノウハウの根底にあるのは原付のキャブレターだ。そこで燃料と空気の関係、すなわち空燃比の基礎を学び、サブコンで経験を積んだ後にフルコンへステップアップ。まだエンジンの内部パーツが揃わず暫定ではあるものの、ブーストは1.7kg/cm2でレブリミットは9800rpmに設定し、当日のベストタイムは予選で記録した1分8秒853だ。

660ccにF4タービンは大きすぎて低速トルクが細いのかと思いきや、3500rpmからブーストが立ち上がり5000rpmでフルブースト、そのままレブリミットまでタレることなくパワーが持続するとのこと。

1クラスの絶対王者であるダイハツ「コペン」を駆る金澤延行選手には惜しくも届かなかったが、シェイクダウンと考えれば十分すぎる結果であり、実力の片鱗は見せ付けたといっていい。2024年シーズンの開幕までに強化パーツを組んだエンジンを製作し、排気系も作り直して常用10000rpmを目指すという。

正真正銘のフルチューンでありながら、齋藤選手には譲れないコダワリがある。ひとつはタイヤで、極端に太いサイズは履かず、165/55-14のストリートラジアルで走ること。パワーを考えれば185でも足りないくらいであり、レギュレーションでも特に規制されていないが、それは軽自動車の『当たり前』から逸脱すると考えた。

ふたつめはエアコンやオーディオなど快適装備を絶対に外さず、ナンバー付きのままで当たり前に街乗りをこなせることだ。このコンセプトは2024年を戦うニューエンジンになっても変わらない。

なお最終戦の決勝レースでは一時的に金澤選手をオーバーテイクしトップに躍り出るも、後半でハイブーストの宿命といえるパイピング抜けのトラブルに見舞われてしまった。凄腕プライベーターが真価を発揮するのは2024年3月24日(日)、エビスサーキット東コースでの開幕戦に持ち越し。オフシーズンでどれほどの進化を遂げるか期待大だ。

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