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不正ではあったが実際には「安全すぎるコペン」だった……ダイハツの一刻も早い復活を願います【Key’s note】

ダイハツコペン

コペンセロのエンブレムもオシャレなデザイン

ダイハツの不正問題が注目されている

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「安全すぎるコペン」についてです。いま、一連のダイハツ不正問題が連日話題になっています。すでに乗っているユーザーは、自身の愛車が安全なのか不安になっているという方も多いでしょう。しかし、少しずつ明るみになってきた真相から、意外な事実も見えてきたのです。今回のその問題について語ります。

会見時は厳しい質問を突きつけられて歯切れの悪い回答だったが……

ダイハツの型式認定の不正行為の実態が明らかになるにつれて、自動車業界のさまざまな課題も浮き彫りになりつつあります。

ダイハツがいわば国に代行して衝突試験をする権利を有しており、その立場を利用して不正を行ったというのが今回の問題の骨子ですが、世間が、ダイハツのクルマがすべて安全基準を満たしていない、つまり危険なクルマだと早とちりしたこととは、どうやら異なるようなのです。

ダイハツの奥平社長とトヨタの中嶋副社長が登壇した初の記者会見では、数人のマスコミからこんな質問が突きつけられました。

「このままダイハツ車に乗っていて危険ではないのか」

それに対する回答は、やや曖昧なものでした。

「危険だという報告は上がってきておりません」

歯に何かが挟まった答弁だったと思いますよね。衝突試験に不正があったのに、クルマは危険ではないと……。安全基準を満たしていないのに安全だと……。その言葉には整合性を感じられなかったのも道理です。

より厳しい条件で検査していても不正は不正という現実

ただ、次第に真相が明らかになるにつれ、その歯切れの悪い回答の意味を理解することになりました。たとえば「コペン」に関しての不正はこう報告されたのです。

「試験速度の改ざん:歩行者頭部及び脚部保護試験において、実際の衝突速度が法規で定められた基準幅の上限を超えており、当該条件下での測定結果でも合格と扱われる可能性があったものの、衝突速度が速いほど試験では不利になり、不利な試験条件で合格している以上安全性に問題がないと考え……(中略)……虚偽の衝突速度を試験成績書に記載して、認証申請を行なった」

つまり、より難易度の高い、定められたより速い速度で衝突させても安全が確認できたので、安全だと判断したというわけです。平たい言葉に言い換えるならば、「こんなに高い速度でオッケーなのだから心配ないよ」というわけです。つまり、誤解を恐れずにいうならば、「安全すぎるコペン」なのです。

100点でいいのに120点を取ってしまったというような……。素足で走った陸上記録が、シューズの基準を満たしていないので失格になったかのような……。軽量級ボクサーが体重を偽り、より重量級クラスで優勝してしまったかのような……。

多分に例え話を飛躍してしまったのは適切ではないかもしれませんが、よりハードルを上げてテストしたことが不正と判断されたわけです。条件が適切ではなかったためですからそれは厳密に言えば不正になるわけですが、そもそもその認証試験のありかたをわれわれに突きつけられたような気もしています。

謝罪会見の席で、歯切れの悪い答弁になった理由はそこにあったのではないかと想像できます。

「安全すぎるので心配はありません」

そう言いたかったのではないかと……。

国土交通省は先日、基準適合性の検証を発表しました。検証が終了した5車種は道路運送車両法の基準に適合しており、出荷停止を解除しました。他の32車種に関しても、ごく一般的に行われているリコールの対象に認定。今後検証が進むにつれて、出荷停止解除に該当するモデルが増えていくのであろうと想像します。

もちろん、すべてが「安全すぎる」というわけではありません。当該基準を満たしていないモデルもあるのでしょう。今回のダイハツの認証に関する不正を全面的に擁護するのは拙速です。今後このようなことが起こらないよう、早急な対策が求められます。ですが、素足で走った記録が認められない制度には疑問が残りましたね。

これまで魅力的なモデルを作り続けてきたダイハツの一刻も早い復活を期待したいと思います。

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