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たった249台のシェルビーでも1600万円!? トランプ氏との不倫で注目を集めたプレイメイトの愛車だったから!?

11万2000ドル(邦貨換算約1670万円)で落札されたシェルビー「シリーズ1」(C)Courtesy of RM Sotheby's

前世紀末、ACコブラの復活を目指して誕生したロードスター

イギリスと並んで、世界最大のクラシックカー市場を有することで知られるアメリカでは、合衆国内ならではの、あるいはほかの開催国ではほとんど見る機会のないような、超レアなお宝に遭遇することもある。今回の主役は、アメリカに由縁のある超レアなヤングタイマークラシックのひとつ。2024年1月25日にRMサザビーズ北米本社がアリゾナ州フェニックス市内で開催したオークション「ARIZONA 2024」に出品されていた1999年型シェルビー「シリーズ1」をピックアップして、そのモデル概要とオークションレビューについてお話しさせていただこう。

キャロル・シェルビーが自らプロデュース

1997年のロサンゼルス・オートショーで発表されたシェルビー・シリーズ1は、キャロル・シェルビーのアイディアによって設計され、「シェルビー・アメリカン」社が生産・販売した大排気量の2シーターロードスター。伝説の「シェルビー(AC)コブラ」を現代的に再解釈することを目的として開発された。

パワーユニットに選ばれたのは、現在ではブランド休止状態となっているGMオールズモビル部門から供給されたV型8気筒4.0L・4カムシャフト32バルブの「オーロラ」エンジン。キャデラック部門の「ノーススター」エンジンのショートストローク版で、最高出力は324ps/6500rpm、最大トルクは40.1kgm/5000rpmをマークすると公表された。

エンジン配置はフロントアクスルの後部に置く「フロントミッドシップ」で、シリーズ1用に特別に改造された独ZF社製6速トランスアクスルに、トルクチューブでサポートされたドライブシャフトを組み合わせている。

シャシーはアルミ押し出し材を組んだ鋼管フレームによるセミモノコックで、レーシングカーのような構造とされた。サスペンションは、ロッカーアームによって作動するダブルウィッシュボーン式で、コイルオーバーのリモートリザーバーダンパーが内部に取り付けられている。そして2シーターのオープンボディは、シェルビー・コブラを連想させる「コークボトル」スタイルとされていた。

シェルビー シリーズ1は、完全にシェルビー・アメリカン社内で製造されると主張されていながらも、生産工程の多くはゼネラルモーターズ側によって監督され、パワープラントを含むコンポーネントの多くはGMから供給されていた。

ところが、同じキャロル・シェルビーが関与した初代「ダッジ・ヴァイパー」が大成功を収めたのに対して、シェルビーが自らの名で開発したシリーズ1のセールスは振るわず、シェルビー・アメリカン社が「ベンチャー・コーポレーション」社なる会社に買収されたこともあって、2005年までに249台を製作した段階でフェードアウトとなってしまう。

2006年には再びシリーズ1の生産権を取り戻した「シェルビー・オートモビルズ」社と投資家グループによって、「シリーズ2」も開発されるが、こちらも3台のプロトタイプを製作した段階で挫折。さらにこの2024年になって、こんどはガソリンV8/BEVの二本立てでの復活が発表されたそうだが、現時点で詳報は明らかにされていないそうだ。

プレイメイト・オブ・ザ・イヤーの賞品だったという数奇なストーリー

このほどRMサザビーズ「ARIZONA 2024」オークションに出品されたのは、シリアルナンバー125。そして「ザ・プレイボーイ・シリーズ1」とも呼ばれ、シェルビー・シリーズ1のなかでももっとも有名な1台とのこと。

モデルおよび女優として、あるいはトランプ元大統領との不適切な(?)関係を告発したことでも知られるカレン・マクドゥーガルが、「プレイボーイ」誌の1998年版「プレイメイト・オブ・ザ・イヤー」を受賞した際の賞品としてプレゼントされたものである。

このとき、カレンのガレージにはすでにBMW「528i」とトヨタ「カムリ」が置かれていたそうだが、彼女は10万ドルの小切手とともに、このシェルビー・シリーズ1を新車で受け取っている。そして「Mr.キャロル・シェルビーのサインをどこかに書いてもらいたいわね」というコメントを発したという。

当時のプレイボーイ誌がマクドゥーガルを「カーマニア」と評したのは、誇大広告ではなかったようだ。彼女は、ポリッシュ仕上げのスーパーチャージャーにアップグレードされたクラッチ、4ピストンのブレーキ、ブレーキ用のダクトシステム、カスタムポリッシュ仕上げの「キャットバック」エキゾーストとHPCヘッダー、カーボンファイバートリムを追加した特注レザーインテリア、ゴーストペイントによる「センテニアル・シルバー」のレーシングストライプなど、あくまで自分好みに愛車をパーソナライズすることに関して、2003年にシェルビー・アメリカン社とやりとりをした記録が残っている。

カレンが意図したとおりに、キャロル・シェルビーがコンソールにサインをした形跡はないものの、このクルマに施したアップデートの総費用は6万ドルを超え、現存するシリーズ1の中でもっともユニークな1台となっている。

また、販売時に点付されるヒストリーファイルには、セントルシアにて「適切な」服装に身を包んだカレンがシリーズ1と一緒に撮った写真。シェルビー・アメリカンの「1998年プレイメイト・オブ・ザ・イヤー、カレン・マクドゥーガル用」と記した納車保留通知書、カレン名義の原産地証明書、アリゾナ州パラダイス・バレーにある彼女あての輸送送り状なども含まれている。

このクルマは、熱心なシェルビー・エンスージアストである現オーナーが2010年春に入手したもので、今なお彼のコレクションの中で良好に保存されている。走行距離は、オークションWEBカタログ作成時点で5670マイル(約9000km)に過ぎず、非常に良好なオリジナルコンディションを保っている。

こんな魅力的なヒストリーを持つ、ピュアかつユニークなシリーズ1ながら、RMサザビーズ北米本社は現オーナーとの協議のうえ、10万ドル~12万5000ドルという、かなり控えめなエスティメートを設定。その上で「Offered Without Reserve」、つまり最低落札価格は設定しない方針を選んだ。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは金額を問わず確実に落札されることから、特に人気モデルではオークション会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が進むことも期待できる。ただし、たとえビッドが出品者の希望に達するまで伸びなくても、落札されてしまうというリスクも同時に持ち合わせる。

そして1月25日に迎えた競売では、エスティメートにこそ届いたとはいえ、このモデルの相場としては比較的安価な11万2000ドル、日本円にして約1670万円という落札価格で、競売人の掌中のハンマーが鳴らされることになった。

それでも、年式の近いダッジ ヴァイパーRT/10の相場価格よりは明らかな高値であるのは間違いなく、やはり希少価値というのはマーケットにおける相場を左右するもの……、と再確認させられてしまうのだ。

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