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海を渡ったマツダ「コスモスポーツ」が1660万円で落札! 仏で新車で販売された唯一現存する個体は、メディアで引っ張りだこの1台でした

10万3500ユーロ(邦貨換算約1660万円)で落札されたマツダ「コスモスポーツ」(C)Bonhams

フランスで活躍してきたコスモスポーツ

「オークション」というビジネスは、もともと18世紀の欧州で絵画・骨董・古文書などの美術品や書籍の分野で始まったと言われ、ご存知の通り今では古今東西の名車たちもひとつの大きなコンテンツとなっています。欧米を中心に年間を通じて数多く開催されるモーター系オークション。なかでも世界中のコレクターが注目するのが、新春のパリ。この時期この地で、複数の会場でいくつものオークションが日替わりで開催されるからです。

日本初のロータリーエンジンを搭載

開催日は毎年前後するが、おおむね1月末から2月初頭にかけてパリで開催される世界的なヒストリックカーのイベントといえばご存知「レトロモビル」。まさに欧州クルマ趣味文化の歴史と伝統を煎じ詰めたような恒例の一大イベントで、この会場内では毎年オークショニアのアールキュリアルがオフィシャル・オークションを行うことでも知られる。

そしてヒストリックカー・ファンやコレクターにとって嬉しいのは、このレトロモビルの開催期間に合わせ、やはり有名なオークショニアであるRMサザビーズやボナムスが、やはりパリ市内の別会場でオークションを開催すること。いずれのオークションも開催日が重ならないようなスケジュールになっており、その気になれば全てのオークション会場を見て回ることも可能なのだ。

今回紹介するのは去る2024年2月1日、エッフェル塔近くの「グラン・パレ・エフェメール」で開催されたボナムスのオークションから。ちなみにボナムスとは1793年にイギリスで設立された世界最古にして最大と言われるオークションハウス。同社は今年も100台近いヒストリックカーを用意してパリでのオークションに臨んだわけだが、われわれAMWが注目したのは今回唯一の日本車として出展されていたマツダ「コスモスポーツ」である。

ご存知の通り、広島のマツダ(当時は東洋工業)が社運をかけて開発・実用化に成功したロータリーエンジン。1967年には史上初の2ローター・スポーツカー「コスモスポーツ」に搭載され市販が開始された。

以来、連綿とロータリーエンジンを育み続けたマツダは本家ドイツのNSU/ヴァンケルを凌駕する性能と信頼性を得て、やがて1991年には4ローターの「787B」によって日本車初、そしてロータリーエンジン車として唯一のル・マン24時間レース優勝と、その頂点を極めるわけだが、そのルーツがまさにこのコスモスポーツなわけだ。

フランスに新車で輸入された貴重な1台

ロータリーの実用性・耐久性を知らしめるべく、1968年のマラソン・デ・ラ・ルート84時間耐久レースにも果敢に挑戦、初出場ながら4位完走という戦果を上げたコスモスポーツだが、当時フランスで新車として販売されたのはわずか3台だったと言われる。

そして今回、オークションに出展されたのは当時輸入された3台のうち、唯一現存する個体「シャシーナンバーL10B-10769」である。この個体は1970年式。1967年から生産が始まった初期モデル(L10A)に対してロングホイールベース化され、エンジンもよりパワフルとなった後期モデル(L10B)だ。

もともと程度が良かったことに加え、2015年にはフルレストアが行われている。エンジンのオーバーホール時には、日本からロータリー・エンジンのスペシャリストが招聘されたという。出品された時点での走行距離は7万3500kmと、年式を考えればかなりのローマイレージだ。

以前はル・マン・モーター・ミュージアムやレトロモービルのマツダ・ブースへの展示をはじめ、さまざまな展示会やクラシックカー・イベント、雑誌やテレビなど数多くのメディアにも「出演」してきたという。マニュアルやスペアキー、キーホルダーや車載工具といったものまで、オリジナルが揃っているという奇跡的なこのコスモスポーツの、オークションでの落札価格は10万3500ユーロ(邦貨換算約1660万円)。

願わくば、マツダ・ロータリーの歴史の語り部として、今後も長くこのコンディションを保っていってほしい。

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