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フェラーリ「F512M」が5000万円オーバー!「テスタロッサ」の倍の相場価格は501台の希少性と最終進化形だから!?

30万8750ユーロ(邦貨換算約5030万円)で落札されたフェラーリ「F512M」(C)Courtesy of RM Sotheby's

テスタロッサ一族の最終進化形

フランスの首都パリにて毎年2月に行われるクラシックカー・トレードショーの世界最高峰「レトロモビル」では、付随するかたちで複数の国際格式オークションが開催されます。なかでも規模・内容ともにもっとも本格的といわれているのが、クラシック/コレクターズカー・オークション業界最大手のRMサザビーズ欧州本社が開催する「PARIS」オークション。2024年もレトロモビルに訪れる目の肥えたエンスージアストを対象とした、レアなクルマたちが数多く出品されたようですが、今回はその中からフェラーリ「テスタロッサ」ファミリーの最終進化形「F512M」のモデル概要と、注目のオークション結果について紹介します。

生産台数はわずか501台、もっとも希少なテスタロッサの末裔とは?

フェラーリの傑作「テスタロッサ」の特徴的なウェッジシェイプは、狂瀾の1980年代を象徴するイメージが強いと思われがちである。だが1984年のデビューから10年間で、2度にわたる大規模なブラッシュアップが施され、1990年代中盤までスーパーカー界の旗手であり続けた。

1991年に登場した「512 TR」は、エクステリアの小変更とインテリアのデザインを一新。さらにメカニズムを大幅に進化させたことで知られているが、さらに1994年に発表された「F512 M」は、テスタロッサ・ファミリーの最終進化形といえるだろう。

接尾辞の「M」は「Modificato(モディファイした)」を意味したもので、テスタロッサから512TRへの進化の度合いに勝るとも劣らない改良がおこなわれた。

テスタロッサで初めて気筒あたり4バルブとされた180度V型12気筒4カムシャフト・4943ccエンジンは、512TRへの進化にあたってムービングパーツの軽量化を図るとともに、シリンダーとライナーもニカシルコーティングによって最新化。また燃料供給もボッシュのKEジェトロニックからモトロニックに変更している。さらに吸排気系に大規模なモディファイを受けていたのだが、F512 Mではさらに鍛造アルミ製ピストンやチタン製コンロッドなどを採用することによって12psパワーアップされ、最高出力は440psに到達することになった。

くわえて、ノーズとテールには大規模なフェイスリフトが施され、とくにテスタロッサ/512TRにカリスマ的な表情をもたらしていた4灯リトラクタブルヘッドライトに代えて、一体型のカバーつきヘッドライトが、ちょっとファニーな表情を醸し出していた。

しかしこの時代、フェラーリはすでにFRレイアウトを採る「550マラネッロ」への移行が既定路線となっており、F512 Mの生産期間は2年間だけ。総計501台しか製造されず、デビューから30年を経た現在では、テスタロッサ愛好家やフェラーリ・コレクターの間でとくに切望されるモデルのひとつとして認知されているようなのだ。

やっぱり看過できない? F512 Mの希少性

先ごろRMサザビーズ「PARIS 2024」オークションに出品されたのは、1994年から1996年の間に製造されたF512 Mの中でも最終期にあたる、1996年にマラネッロ本社工場をラインオフした個体。

ドイツ・バイロイトのフェラーリ正規代理店「アウトハウス・イセルト(Autohaus Isert)GmbH」社のオーダーにより、「ロッソコルサ(レーシングレッド)」のボディカラーに「ネロ(黒)」本革レザーのインテリアを組み合わせた、もっとも根強い人気を誇るカラーリバリーで仕立てられた。

古い時期のヒストリーについては明かされていないものの、2015年11月に現オーナーのもとに譲渡され、1カ月後には1万3097ユーロ相当のメンテナンスとサービスを受けたことが判明しているようだ。

また、2016年9月には「フェラーリ・クラシケ」の認定を受け、レッドブックのコピーをヒストリーファイルで確認することができる。2018年5月にはさらに1650ユーロに相当する作業が、シュトゥットガルト近郊ベーブリンゲンに本拠を構えるフェラーリのオフィシャルディーラー「ゴーム・ベーブリンゲン(Gohm Böblingen)」社で行われた。

そしてオークション出品直前の2024年1月には、同じフェラーリのワークショップに戻され、合計9128ユーロの整備を受けた。これらの履歴については、車両に添付されるオーナーズマニュアルと、8つのスタンプが入ったサービスブックが証明している。

RMサザビーズ欧州本社は、出品者である現オーナーとの協議のうえ、25万ユーロ~35万ユーロという、かなり強気かつ範囲の広いエスティメート(推定落札価格)を設定。

そして迎えた1月31日、パリ・ルーヴル宮の「サル・デュ・カルーゼル」を会場として行われた競売では、エスティメートに届く30万8750ユーロ、日本円に換算すると約5030万円という、出品者側およびRMサザビーズ側にとっては想定内の落札価格で、ぶじ競売人の掌中の小槌が鳴らされることになった。

ルックス上の変更点では好き嫌いが二分するF512 Mながら、やはり7177台が生産されたというテスタロッサの相場の約2倍、2280台の512TRに対しても大幅に高い相場価格は、この最終モデルが圧倒的に希少であること。あるいはフェラーリの名作テスタロッサ・ファミリーの最終進化形であるという歴史的事実が、現在のマーケット相場価格にも影響を与えているということなのであろう。

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