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ロータリーエンジンが11年ぶりに復活! マツダ「MX-30」に搭載された「ロータリーEV」の走りと気になるサウンドとは

マイルドハイブリッドとEVをラインナップしていたMX-30に、追加設定されたシリーズハイブリッドの「Rotary-EV」。価格は423万5000円から478万5000円(消費税込)

発電機として復活したロータリーエンジン

新たな価値を生み出すことへ挑戦するモデルにつけられる「MX」という名称が与えられたマツダ「MX-30」に、シリーズハイブリッドの「Rotary-EV」が追加されました。その名のとおり、発電機には11年ぶりの復活となるロータリーエンジンが用いられています。

マツダのエンジニアたちはロータリーを諦めていなかった

マツダMX-30のラインアップに、新しいパワートレインを搭載したモデル「Rotary-EV」が追加された。

MX-30は、2020年にデビューしたコンパクトSUV。マツダの車名といえば、セダン&ハッチバックには2、3、6といった数字を、SUVにはCXと数字の組み合わせが通例だが、このモデルには「MX」が使われている。「MX-5」(ロードスターの海外仕様名)にも見られるようにマツダはこれまでにもその時代ごとの常識にとらわれることなく、新たな価値を生み出すことへ挑戦するモデルに対して「MX」という名称を与えてきた。

MX-30は、単なるコンパクトSUVではなく、観音開き式のフリースタイルドアを採用するなど、ユニークな特徴を備えたモデルだ。さらにいえば、マイルドハイブリッド仕様にはじまり、BEV(電気自動車)仕様と、マツダの電動化技術のリードモデルという大役を担ってきた。

そして満を持して投入されたのが、「Rotary-EV」だ。エンジンの動力がタイヤを直接駆動するのではなく、発電機として使用されるシリーズハイブリッド(日産の「e-POWER」と同種)である。それに外部充電が可能な容量17.8kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを組み合わせたシリーズ式PHEV(プラグインハイブリッド)モデルだ。

車名からもわかるとおり最大のアピールポイントは、その発電機としてロータリーエンジンを搭載していること。ロータリーエンジンは、軽量、コンパクトで高出力が得られるメリットがある。かつては「RX-7」や「RX-8」といったスポーツカーが搭載し、マツダの代名詞のようなエンジンだった。しかし、燃費性能に課題があり2012年にRX-8が生産中止になるとともに絶版となっていた。

しかしマツダのエンジニアたちはこのロータリーエンジンを諦めていなかった。開発チームは規模を縮小されても地道に開発を続けてきたという。燃費性能の向上を果たし、そのコンパクトさを活かして発電機として使用することに活路を見出した。ロータリーエンジンは新たな役割を得て、11年ぶりに復活したというわけだ。

エクステリアにおいてマイルドハイブリッドやBEV仕様との違いはほとんどない。フロントフェンダーに配されたロータリーエンジンをモチーフとした三角のバッジとリアのエンブレムくらいだ。インテリアもメーター表示やダッシュボード上のセンターモニターでいまモーター駆動か、エンジンが始動しているかどうかを確認できる機能などがあるが、基本的には従来のモデルと変わらない。

800km以上を電気で走れる、違和感のない「フツー」のクルマ

発電機である830ccのロータリーエンジンは53kW/112Nmを発生。省スペース性を活かし、高出力モーター、ジェネレーターと同軸上に配置してフロントのモータールームに搭載されている。そして駆動用モーターは 125kW/260Nmを発揮し、前輪を駆動するいわゆるFFだ。バッテリーが満充電の状態であれば、107kmのEV走行距離を実現する。これだけあれば日常はほぼEVとして使えるはずだ。

そしてロータリーエンジンのハイブリッドとしての燃費は15.4km/L(WLTCモード)。50Lの燃料タンクを搭載しており、単純計算で770kmの走行が可能。EV走行と足し合わせれば900km近く走る計算になる。実際はそこまでではないにせよ、出先での充電設備の有無や混雑具合に一喜一憂する必要はないだろう。

ドライブモードはノーマルとEV、チャージの3種類がある。基本はノーマルでバッテリーの充電量が十分であればEV走行を。そして、残量が45%を切るとエンジンが始動し、シリーズハイブリッドへと切り替わる。EVモードは電池残量が許す限り電気走行し、チャージモードでは、エンジン(発電機)を使ってバッテリーの充電が可能で、20〜100%まで10%刻みで目標数値を設定することができる。

EVとしての走り出しはいたってスムーズだ。人間中心の制御にこだわるマツダらしく、アクセルペダルを少し強めに踏むと急加速するような不自然な動きはしない。EV走行をしている間は、キャビンに入ってくる音もわずかなロードノイズや風切り音くらいで、いわゆる一般的なBEVとかわらない。

ただし、マツダは静粛性を保ちつつも運転操作に対して、小さな音圧の変化でドライバーにフィードバックするサウンド開発を行っているという。それらの要素がいい意味で違和感のないフツーのクルマであると感じさせてくれる。

しばらく高速道路を走行しているとバッテリー残量が45%以下になりエンジンが始動した。メーター内には小さくロータリーのマークが光る。ガーッというかザーッというか、無機質なエンジンの音が聞こえてくる。うるさいとか耳障りというほどではないが、いい音というわけでもない。

マツダのスポーツカーファン、ロータリーエンジンファンは、レースカーが奏でる甲高いエンジンサウンドのようなものを期待しているかもしれないが、どうやらあれは3ローターや4ローターといったマルチローターで初めて醸成できるものらしい。この発電機は1ローターなわけで、レシプロでいえばV8やV6ではなく単気筒エンジンなのだと考えれば合点もいく。

先述のように「MX」は、新たな価値を生み出すことへ挑戦するモデルと考えれば、ロータリーエンジンの復活はふさわしいものといえるだろう。仮にロータリーに思い入れがない人にとってもずっと電気駆動で800km以上走行できるのだからメリットは大きい。このモデルをきっかけにロータリーエンジンが未来へとつながっていくことを期待してやまない。

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