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SUPER GT開幕直前! 職人レースカメラマンが2024年シーズンの見どころを解説

ARTAシビック

8号車 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT

いよいよ国内最高峰のGTレース「スーパーGT」が開幕

長年日本のモータースポーツを撮影し、見届けているレースカメラマンたちも、間もなく開幕する「スーパーGT」2024年シーズンに合わせて本格始動です。3月16日〜17日の2日間、岡山国際サーキットで行われたシーズンイン直前のテストを取材した佐藤正勝カメラマンが見て、聞いて、感じたことをリポートします。

名門aprの2台には18歳の若手有望株がエントリー

この前シーズンが終わったと思ったらもう始まんのかいっ! て思うのは加齢のせいなんだってことはわかっちゃいるけど、時の流れの早さを感じずにはいられない。あくまでおっさんの私的シーズン前予想なのでノークレームでお願いしますよ。

そんな2024年のシーズン初めのテストでは、あの名門チーム「apr」のドライバーエントリーリストを見て少々驚いた。年々驚く事は少なくなってくるが、こればかりは驚かざるを得ないだろう。

そのaprが走らせているのが30号車のトヨタ「GR86」と31号車のレクサス「LC500h」だが、GR86には2023年同様Aドラに永井宏明選手、Bドラに織戸 ま・な・ぶ……じゃなくて2023年のF4チャンピオンの小林利徠斗(りくと)選手の名前が。またLCのBドラにもまた2023年のF4シリーズ2位の中村 仁(じん)選手が登録されていたのだ。(編集部注:織戸 学選手は30号車GR86のCドライバーとして登録)

ともに18歳のついこの前まで高校生、おっさんからしてみれば息子のような年齢の子にいくらGT300とはいえ乗せても大丈夫か? とまずは驚き、そして懐疑心が湧くのは当然のことではないだろうか。

だがそんな老婆心を他所にこの2人ときたらそれなりにタイムを刻んでいくではないか。やはり2ペダル、パドルシフト、シミュレーターやゲームで育った世代はいろいろと飲み込みが速いんだなぁと実感させられたし、トヨタの育成プロジェクトの本気度も伝わってくる。

そしてこれを書いている時点で中村選手はまだ免許を持っていないのだ。おっさんが免許を取った時の教習車なんかコラムシフトのクラウンだったけどね……。それにしても自分が18歳の頃と照らし合わせてみると恥ずかしくなるくらい、まるで比較にならない立派な18歳ではないか。

2024年シーズン、2人は先輩ドライバーたちからどれほど技術を吸収していくのだろうか? また先輩たちも若い刺激を受けてどの様な化学変化を起こしていくのか楽しみである。

車両火災に見舞われた「ホピ子」がいよいよ復活!

昨年の第4戦富士での火災で残りの参戦を断念していたHOPPY team TSUCHIYA。資金難などの噂も聞こえて来てはいたが、「シン・ホピ子」が富士の公式テストで復活シェイクダウンを行った。

おっさん的には2023年のあの状態を見てしまったら心が複雑骨折して何もできなかったと思うが、先代の父・春雄さんの背中を見て育った武士には現実に背を向けるという選択肢は皆無だったようだ。

そんな武士だからこそ多くのファンや関係者、そして長年応援してくれるスポンサーが見放さなかったのだろう。なんとも嬉しい限りだ。

思い返せば神奈川県でも東大進学率トップの高校を出ておきながら、なんでレーサーなんかになるのよ? って話をしたこともあったが、そのくらい頭が良かったから今があるのだと思う。

環境が環境なだけに父親の仕事を手伝っていれば必然的にエンジニアの知識も付いてきただろうし、1989年にカートレースを始めて以来FJ、F3とステップアップし、2000年には自費でフォーミュラー・ニッポンに参戦してみたり。もちろんスーパーGTの前進である全日本GT選手権にも数多く参戦した経験を基に、エンジニア、ドライバー、そして経営者としての今があるのだろう。

そんな武士が、

「今回の復活は助けて頂いた皆様のおかげ。だからうちのチームだけのクルマではなく、みんなの気持ちを乗せたクルマとして、また『シン・ホピ子』を走らせる船長として自分も頑張っていこうと思っています」

と語っていたのが印象的だった。

往年のレースファンはシビックの走りに期待大!?

ホンダ勢は2023年まで使用してきた「NSX」を、2024年は「シビック タイプR」にスイッチ。シビックは古くはグループAやN1耐久、JTCCなどホンダのレース史では数多くの戦いを繰り広げてきた名車ではある。だが、4枚ドアの(実際にはリアは開かない)GTカーに対しては少々「あれ?」って思ったのはおっさんだけではないと思う。けれども過去にはJTCCで4枚ドアのシビックでレースをしていたのだから、歴史的に考えると決してあってもおかしくないのだ。5月頃には見慣れてくるのではないかと思う。

中身はクラス1規定のものになるので2023年シーズンと同様であると思われるが、ボディ形状がNSXからシビックに変わったことによって空力はどうなのだろうかと興味が湧く。空力的に熟成が進んだトヨタや日産とどのような戦いを繰り広げてくれるのか、岡山の第1戦での結果が楽しみだ。

日産のエースチームは新コンビになって活躍に期待

今年日産ではドライバーシャッフルが行われ、ワークスの23号車は10シーズンコンビを組んだロニー・クインタレッリ/松田次生組が消滅し、松田選手の代わりに2023年まで3号車をドライブしていた千代勝正選手がロニー選手とコンビを組むこととなった。

おっさん的にはロ二ーは近所のパパ友だし、千代君も昔からサーキット以外の場所での知り合いなので、とても気心が知れた2人で何かとやりやすいコンビだが、この2人といったらもの凄く写真を撮られたがりなうえに注文が多いのだ(笑)。

余談はさておきニスモとしてはタイヤが2023年までのミシュランからブリヂストンへとスイッチした。足元が変わればクルマも変わるのは市販車もレーシングカーも一緒。そのため昔からBSユーザーであるインパルには一日の長があると思うが、日産内でのBSユーザー対決という見方で観戦してみるのも面白いと思う。

生粋のトヨタ育ちvs移籍ホンダ育成ドライバーの身内対決にも注目

宮田莉朋選手がWEC参戦に専念となった2023年。今シーズンはトヨタには電撃移籍の2人が乗ることとなった。それは福住仁嶺選手と大湯都史樹選手だ。もちろんプロなんだからどこに乗ろうと契約条件さえ合えば移籍は自由だと思うが、トヨタは育成枠からのプロパードライバーが大勢いるんじゃないの? と思っていたから、ホンダ育成ドライバーの移籍には少々ビックリした。

だが、逆にホンダ育ちのドライバーが加入したことによって、トヨタ育ちのドライバーたちには良い刺激になるかもしれないとも思うし、ホンダ育ちの2人にはメーカーが変わる事によって起こる、良くも悪くもカルチャーショックがあると思うので、外から見ているおっさんとしては非常に楽しみな事態なのである。トヨタ陣営内のレースの見方としては、トヨタプロパー対ホンダ育成の誰が最速なのかという対決を見られるのは、じつに面白そうではないか。

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