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「360チャレンジ ストラダーレ」が4700万円オーバーで落札! レーシングモデル由来のハードコア・フェラーリはいまだ人気衰えず

31万3000ドル(邦貨換算約4750万円)で落札された360チャレンジストラダーレ(C)Courtesy of RM Sotheby's

リーズナブルな360でも「チャレスト」は別格

昨今の高級スポーツカーでは、レース指向の高いハードコアモデルが用意される事例が数多いが、その開祖となった前世紀末から今世紀初頭の名作たちも、そろそろヤングタイマー・クラシックカーとして国際マーケットに現れはじめています。たとえば、RMサザビーズ北米本社が2024年3月1〜2日にフロリダ州マイアミ近郊の町、コーラルゲーブルズにある歴史的なビルトモア・ホテルを会場として開催した「MIAMI 2024」オークションに出品された2004年型フェラーリ「360チャレンジ ストラダーレ」は、その最たる例でしょう。今回は、360チャレンジ ストラダーレのモデル概要と、注目の最新オークション事情について紹介します。

フェラーリ初の量産ハードコア・スーパーカー

1993年、「348」シリーズの時代からフェラーリはV8ミッドシップモデルを活用するワンメイクレース「フェラーリ チャレンジ」をスタート。それは後継の「355」シリーズ以降も現在に至るまで継承され、フェラーリのスポーツイメージを市販モデルについても高めることに努めていた。

しかし355系までの段階では、ポルシェでいえば964系や993系の「911カレラRS」や996以降の「911GT3」に相当するような、レースカー譲りのテクノロジーを投入したハードコアモデルを販売するまでには至っていなかった。

ところが、1999年にデビューした「360」シリーズでは、「360チャレンジ」やGTレース用の「360GTC」などのレーシングモデルで獲得したノウハウを投入、スパルタンに仕立てたハードコアモデル「360チャレンジ ストラダーレ」が、2003年からモデル最終バージョンとして設定されることになる。

360チャレンジ ストラダーレに搭載されたV8エンジンは「360モデナ」用をベースに圧縮比をアップ、さらに吸排気系システムやピストン形状の変更、インテークマニフォールドの研磨、ECUプログラミングの変更などのチューニングを施すことで最高出力425psを発揮した。

そのいっぽうで、F1GPの現場からフィードバックした技術によりサスペンションやホイールボルト、ダンパーにはチタン合金。ドアパネルなどにもカーボン素材を採用した。またフロントとリアのバンパーは、ワンメイク用マシン「360チャレンジ」からヒントを得た「レジン・トランスファー・モールディング」工法で成形するなどのデバイスの積み重ねにより、対360モデナ比で110kgにもおよぶ軽量化も果たしている。

くわえて、フラッグシップの「エンツォ」から流用したカーボンセラミックディスクブレーキなどのハイスペックなコンポーネンツは、クラス最高といわれたロードホールディングに貢献。さらに、大型のフロントスポイラーや後端をつまみ上げて「ダックテール」形状としたリアのエンジンフード、さらに大型ディフューザーの採用でダウンフォースも50%アップするなど、まさに「究極のストラダーレ360」となった。

当然ながら、走行性能は360モデナから大幅にアップを果たした。0-100km/h加速は4.1秒、最高速はV8ピッコロフェラーリとしては初めて300km/hの大台に到達。「ピスタ・ディ・フィオラーノ」でのラップタイムを、3.5秒も短縮することに成功したのだ。

国際マーケットでは高値安定中?

かくしてフェラーリとしては初の量産ハードコアモデルとなった360チャレンジ ストラダーレは、インテリアでは360モデナのオプションであるカーボンファイバー製シートを標準装備し、意外と重量のかさむ本革レザーをアルカンターラに、ドアウインドウもレキサン樹脂製に変更することもできた。またオーディオシステムも、注文主の意向次第で軽量化のため非装備とすることも可能になっていたという。

いっぽう、フェラーリが最終的に製造した360ベースのチャレンジ ストラダーレは1300台にも満たず(1288台説が濃厚)、そのうち378台が北米仕様となったとされているが、今回のRMサザビーズ「MIAMI 2024」オークションに出品された360チャレンジ ストラダーレは、その希少なUSスペックを持つ1台とのことである。

カラースキームは、チャレンジ ストラダーレではデフォルトカラーだった朱色がかった赤「ロッソ・スクーデリア」ではなく、フェラーリの伝統的塗色である赤「ロッソ・コルサ」のエクステリアに、レッド/ブラックのアルカンターラ張りインテリアの組み合わせ。また、同じくチャレンジ ストラダーレを象徴していた、イタリア国旗の三色旗をイメージしたオプションのストライプ塗装もこの個体には施されていないなど、節度のある雰囲気を重視したかに見える。

また、正規ものの北米仕様であるため、EUマーケットなどでは選択可能だったレキサンウインドウではなく、通常のガラス製サイドウインドウを持つかたわら、左右のフロントフェンダーにはサーキット由来のモデルであることを誇示する「スクーデリア・フェラーリ」の盾型エンブレムを装着。また、CDプレーヤーつきHi-Fiラジオ、カーボンファイバー製ドアミラー、「ロッソ・コルサ」仕立てのブレーキキャリパー、消火器などの装備が選択されている。

アメリカ合衆国上陸後にはカリフォルニア州に新車として納車され、RMサザビーズ公式ウェブカタログ作成時の走行距離はわずか9507マイル(約1万5200km)。またオークション落札者には、純正ツールキットやオーナーズブックセット、真紅の純正ボディカバーなどが添付して引き渡されることになっていた。

2003年のデビューの際、360チャレンジ ストラダーレはマラネッロのレーシング愛好家の間で瞬く間に「クラシック」となったことは記憶に新しい。でも、デビューから20年以上を経過した現在においても、フェラーリ・クラブのイベントや「スーパーカー・サンデー」、あるいは最近では日本国内でも開かれるようになった「カー&コーヒー」型ミーティングなどの参加には理想的なこのモデルで、しかも低走行距離で望ましいファクトリー純正スペックの個体は、ますます入手が難しくなっているとのこと。

そのため、この360チャレンジ ストラダーレのオークション出品は、フェラーリ最高の1台を手に入れる絶好の機会となったのは間違いあるまい。

このフェラーリ360チャレンジ ストラダーレにRMサザビーズと現オーナーが設定したエスティメート(推定落札価格)は、30万~40万ドルという、なかなか強気にも映る金額。しかし、実際の競売でも31万3000ドル、日本円に換算すると約4750万円というけっこうなプライスで、競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。

ここ数年、20万ドルから30万ドルあたりで推移していたチャレンジ ストラダーレの国際相場は、2023年あたりにはいささか沈静化の傾向も見られた。しかし今回の大商いから判定すると、たとえ時おりの上下はあろうとも、基本的には高値安定が続いているということなのであろう。

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