99台の限定車のうち30台ものクルマが日本割り当て
アルピナの創始者ブルカルト・ボーフェンジーペンをオマージュし、2025年1月に発表された世界限定99台のモデルであるBMW アルピナ「B8 GT」。アルピナの伝統を継承し、独自のエレガンスと印象的なパフォーマンスを融合させたマスターピースたりうる1台として誕生しました。日本でも30台の車両が販売されるこの特別限定モデルの詳細をお伝えします。
アルピナはコレクターにとって魅力的なモデル
ちょうど60年前の1965年、ブルカルト・ボーフェンジーペン氏は「アルピナ」社を創設した。このブランドは1983年にドイツ政府自動車局によって自動車製造業者として登録され、世界的に知られる小規模生産のメーカーに成長することとなる。
そしてこれまで公道でもサーキットでも、BMWアルピナのモデルは何度もセンセーションを巻き起こしてきた。そしてアルピナの各モデルは、長い歴史においてすべてがエクスクルーシブな存在であり、今やコレクターやエンスージアストにとって非常に魅力的なモデルとなっている。
アルピナの遺伝子
今回のBMWアルピナ「B8 GT」に搭載される4.4L V8ビ・ターボエンジンは、初期の4気筒に比べ、シリンダー数は倍、排気量はほぼ3倍、出力は7倍以上と進化してきたが、今も昔もそのスムースネスと卓越したパワーを実現するその姿は変わらない。
このBMWアルピナ B8 GTにも使われた最後の進化型 V8ビ・ターボエンジンは634psの最高出力と850Nmの最大トルクを発揮し、アルピナの歴史の中で最も高出力かつ強力なエンジンとなる。
ロスを減らした吸気システムや新しくより最適化されたエアボックス、エンジンマネジメントとブースト圧の見直しによりこれまでのエンジンと比べ13psの出力向上と、50Nmのトルクの増加をもたらした。
そして、今回のモデルではとくにレスポンスと性能の向上に重点が置かれ、コンフォートモードとスポーツモードでそれぞれ異なる優れた走行性能を実現している。また、高トルクに最適化された ZF8速スポーツオートマチックトランスミッションのソフトウェアは、ダイナミックなギアチェンジを実現し、さらに改良されたローンチコントロールによって最高の走行体験をドライバーにもたらす。
速く、より速く、もっと速く
大型クーペは、歴代アルピナのラインアップにとって欠かせない存在である。このBMWアルピナ B8 GTも、つねに卓越したドライビングパフォーマンスを提供してきたトップモデルの系譜に加わる。
たとえば、1982年にE24のクーペをベースに生産されたBMWアルピナ「B7 S ターボクーペ」は、現代の基準をもってしても決して遅いクルマではない。最高速度262km/h、0-100km/h加速は5.8秒で、当時のこのセグメントで最速の1台であった。
今回のBMWアルピナ B8 GTも、0-100km/h加速はわずか3.3秒、0-200km/h加速もわずか10.5秒で到達し、卓越したドライビングパフォーマンスを印象付ける。最高速度330km/hに達し、このモデルは再びアルピナ史上最速の1台として間違いなく位置づけられることだろう。
前後輪に駆動力を配分するトランスファーはさらに最適化され、トルク分配がよりリア寄りに設定されている。これに、電子制御ディファレンシャルのソフトウェアの改良が組み合わされることで、より俊敏かつダイナミックなドライビングを体験できることとなった。
サスペンションのセットアップも、徹底的に見直され、新たに採用したドームバルクヘッド・ストラットによりフロントエンドの剛性アップが実現し、ステアリングレスポンスと精度が向上している。アルピナの特徴的な点は、ステアリングモードを「COMFORT」「SPORT」「SPORT+」の3つから選べることである。スポーティでダイレクトなレスポンスか、または適度に抑えの効いた穏やかなフィードバックとするかをドライバーの好みに応じて提供する。
また、ドライビングモードの違いは、今まで以上に明確に体感でき、正確性がより向上したことで、とくに高速走行時のスタビリティが強化され、車体の動きが抑えられることで長距離走行時の快適性もさらに向上している。
そして強力なエンジンと相まって、アルピナのスポーツ・エキゾーストシステムは、新しいセンターサイレンサーが採用され、豊かな表現力と力強いスポーティなサウンドを生み出す。
さらに高まったスポーティさ
ブルカルト・ボーフェンジーペン氏にとって、デザインはつねに重要な要素であり、これまで中心的な役割を果たしてきた。
「スタイルは機能に従う」という原則に基づき、デザインは細部に至るまで洗練され、完璧に仕上げられている。デザイン案は何度も見直され、厳しい要求を満たすために改良が重ねられてきた。今日、アルピナのエレガントで控えめながらも独自性のある美意識が、世界中で高く評価されているのはこのような考えによるものである。BMWアルピナ B8 GTは、この確立されたコンセプトに基づいて開発されたスポーティなダイナミクスとラグジュアリーカーのエレガンスを融合させたモデルである。
フロントバンパーのエアダクト、サイドダイブプレーン、エアブリーザーのトリム、そして新デザインされ、より印象的な存在感を放つディフューザーのカーボン仕上げはその代表例である。これらの要素は、グランツーリズモとしてのエレガントな印象を損なうことなくB8 GTのスポーティな側面を強調するものである。
21インチのアルピナ・クラシック鍛造ホイールは、アルミニウムサテン仕上げとなる。複雑な鍛造工程により繊細で深い光沢を湛えた鏡のような表面を生み出しているが、この工程の後、ホイールはさらにマットクリアでコーティングされる。またホイールセンターキャップはアルミニウムの無垢材から削り出されており、アルピナを特徴づける細部へのこだわりを体現している。
エクステリアのディテールとして、Bピラーに施された控えめなB8 GTのロゴや、ブルカルト・ボーフェンジーペンのサインが入ったB8 GT専用にデザインされたシルプレートが、限定モデルの外観を一層引き立てている。
また、アルピナ・ハイ・パフォーマンスブレーキシステムも標準装備となり、マルチピースのフローティングタイプのドリルドベンチレーテッドディスクと摩擦係数の高いブレーキパッドにより、優れた制動力を発揮する。
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色とりどりのスペシャルカラー
BMWアルピナ B8 GTは、定番の伝統色であるアルピナブルーとアルピナグリーンに加え、特別に選ばれたアークティックレースブルー、ヴェルダントグリーンパール、パープルシルク、エニグマティックブラック、またはクリスタルカッセリットブラックの5色の中から選択できる。伝統的なエクステリアトリムであるアルピナ・デコセットは、カーボンメタリックカラーとなり、デザインの選択肢を広げている。
さらに、世界限定20台で、アルピナブルーまたはアルピナグリーンとブラックサファイアを組み合わせた2種類のツートーンカラーコンビネーションが提供される。
工芸的、そして手仕事
1970年代にはすでに、アルピナの顧客はシートやステアリングホイール、その他のインテリアを、アルピナ・デザインでオーダーすることができた。ブルカルト・ボーフェンジーペンは、卓越したセンスを持ち、小さいながらも洗練されたディテールで印象的なアクセントを加える方法を心得ていた。これらのディテールは、今日まであらゆるアルピナ車を特徴づけているデザインエレメントとなっている。B8 GTもこの伝統を守り、最高級の素材と、調和の取れた美意識を備えたアルピナらしいコクピット体験を提供する。
インテリアでは4種類から選べる専用のフルレザーシートを装備しており、シートセンターは高品質なメリノレザーとアルカンターラの組み合わせとなる。完璧にコーディネートされたカラーアクセント、印象的なコントラストステッチ、そしてフロントシートバックレスト上部のブルカルト・ボーフェンジーペンのサインが刺繍によって仕上げられ、彩りを添える。
さらに、社内のレザー工房では最高級の天然なめし革であるラヴァリナを使用したオーダーメイドのフルレザーでインテリアをカスタマイズすることができる。各インテリアは熟練の手作業によって仕上げられ、B8 GTを唯一無二の特別な存在に仕上げている。
アルピナ・ウォールナット・アンソラサイト仕上げの高級ウッドトリムは、創業者ブルカルト・ボーフェンジーペンのサインが刻まれたカップホルダーの蓋に金属製のインサートとともに、すべての B8 GTのインテリアに標準装備されている。
装備とアクセサリー
シルバーのアルピナ製フルアルミニウム・シフトパドルや高品質なアルカンターラ製ヘッドライナーなど専用のディテールが、B8 GTのラグジュアリーなキャラクターを際立たせている。
ラゲッジコンパートメントマットとフロアマットには、BMWアルピナ B8 GTのメタルエンブレムが施され、上質なレザーのパイピングが施されている。インテリアとエンジンルームにはステンレススチールのシリアルプレートが取り付けられており、BMWアルピナ B8 GTのシリアルナンバーが刻まれる。
そして、B8 GTの納車時における特別なハイライトは、名高いスイスの時計・宝飾店であるカール F.ブヘラと共同開発された限定クロノグラフが提供されることであろう。
「マネロ・フライバック」をベースとしたこの腕時計は、ブルカルト・ボーフェンジーペンのスタイルを反映したモディファイが施されている。
文字盤はエレガントなブルーとし、控えめなシルバーの「ALPINA」のロゴに加え、秒針はアルピナブルーで仕上げられており、文字盤は耐久性とスタイルを兼ね備えた43mmのステンレススチール製ケースに納められている。
カール F.ブヘラによるコラムホイール式クロノグラフを内蔵したキャリバー CFB 1973ムーブメントは、56時間のパワーリザーブを備えており、サファイア・クリスタルの裏蓋からその精緻な機構を見ることができる。特別なデザイン要素として、自動巻きローターがアルピナのハイ・パフォーマンスブレーキシステムをイメージした意匠となっており、それがアルピナ・クラシックホイールの奥で回転するように見える。
また裏面のベゼルには、B8 GTのタイヤにインスパイアされた精密なレーザーエングレービングが施されており、各時計は車両番号に合わせてパーソナライズされている。
このBMWアルピナ B8 GTは、世界で99台のみの限定モデルであるが、日本国内ではそのうち30台が割り当てられ、アルピナ社日本総代理店ニコル・オートモビルズ、アルピナ正規代理店(BMW正規ディーラー)を通じて販売される。希望小売価格は左ハンドルモデルが3495万円(消費税込)、右ハンドルモデルが3540万円(消費税込)となる。
AMWノミカタ
今回発表されたB8 GTは価格的にもスペック的にもアルピナを代表するフラッグシップモデルとなる。アルピナに乗った人は、誰もがその速くて洗練された乗り味の良さについて語るが、それはアルピナが性能表記に「巡航最⾼速度」という言葉を使うことにも集約されるのであろう。
つまり瞬発的な最高速度には価値をおかず、アウトバーンを「実用域」として300km/hという速度で長い時間、速く、そして安全で快適に走れることこそを突き詰めてクルマを開発してきた稀有なブランドなのである。
そして、その高い性能を派手なスタイリングでひけらかすことなく、緻密に仕上げられたセンスの良いインテリアディテールなども「わかるひとにだけわかればいい」という考えに共感する顧客の満足感を高める。
そして2025年末をもって、アルピナ・ブランドの商標権はBMWに譲渡され、これまでのアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限&合資会社は今後新たにクラシックカー関連事業への投資や、これまでと異なる新しいモビリティの開発に取り組むという。
そういった意味でもこのB8 GTが創始者ブルカルト・ボーフェンジーペンのクルマ造りの哲学を色濃く残すいわゆるアルピナらしい最後のモデルになるかもしれない。そして99台の限定車のうち30台ものクルマが日本に割り当てられた。アルピナは日本人顧客がその哲学の最大の理解者であることを知っているのであろう。
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