フラットノーズは高値安定で推移
2025年1月24日〜25日にRMサザビーズがアメリカ・アリゾナで開催したオークションにおいてポルシェ「911ターボ フラットノーズ」が出品されました。ボディカラーは工場出荷時に記録されている正しいガーズレッド。それにマッチするフォックスホイール、LSD、電動サンルーフ、ブラウプンクト製のラジオなど数々のオプション装備も新車当時のままの1台です。
生産台数は145台のみ
ポルシェの特別注文部門であるゾンダーヴンシュ(スペシャル・ウィッシュス)は、それぞれのカスタマーが希望するさまざまなカスタマイズを実現するセクションだ。ポルシェにはほかに、ポルシェ・エクスクルーシブ・マニファクチャーと呼ばれるパーソナリゼーションを担当する部署も存在しているが、ゾンダーヴンシュはそれよりもさらに細かいリクエストにも対応する、いわばワンオフに近いビジネスをカスタマーとともに進めていくのが特長だ。
そのゾンダーヴンシュからは、自らのプロジェクトとして魅力的なモデルが誕生することもある。1980年代後半に誕生した、「911SC」と「911ターボ」のフラットノーズ・バージョンはその象徴的な例で、ワイドボディのフェンダーやルーバー付きのフロントパネル、そして「935」からインスピレーションを得たとされるリトラクタブル形式のヘッドライトなどを新たに採用。
その外観はよりアグレッシブでサーキット走行に適した、すなわちエアロダイナミクスに富むものに進化を遂げている。そしてこの一連の「M505」オプションを装着した、ゾンダーヴンシュ製のフラットノーズモデルは、すぐにポルシェ・ファンの心を刺激する存在となり得たのである。
フラットノーズの製作には、ハンドメイドによる作業工程が多く、スタンダードな「911」に対してその製作にはほぼ2倍のコストが必要とされた。本格的な生産がスタートした1988年にはアメリカ向けのターボモデルが、わずかに145台生産されたのみで、それはポルシェの中で最も希少価値の高い、そして最も人気のあるモデルのひとつとして語られるに至ったのだ。
数々のオプションを新車時から装着
今回RMサザビーズのアリゾナ・オークションに出品された、「50664」のシャシーナンバーを持つ、1988年式の911ターボ フラットノーズ クーペは、145台のうちの1台。2024年、同社のオークションには911ターボ フラットノーズの出品が多く、5月末のデール・トゥ・ドリーム・コレクションでは、走行距離がわずかに500マイル(約800km)ほどの新車同様の1989年式クーペが50万ドル(邦貨換算約7866万円)で落札されたほか、8月のモントレー・オークションでは1988年式クーペと1989年式カブリオレが、ともに29万1000ドル(同4344万円)で新しいオーナーの手に渡った。はたしてこの1988年式の911ターボ フラットノーズ・クーペは、どのくらいの価格で落札されるのか。興味はもちろんここに集中した。
シャシーナンバー「50664」のコンディションは、決して悪いものではなかった。ボディカラーは工場出荷時に記録されているとおり、正しいガーズレッド。それにマッチするフックスホイール、LSD、電動サンルーフ、アラームシステム、ブラウプンクト製のラジオ、パワースポーツシート、ベロア張りのラゲッジコンパートメントなど、数々のオプション装備も新車当時のままだ。キャビンは特別にリクエストされたレザー・トゥ・サンプルのカンカンレッドとブラックのレザーを基調に仕上げられたもの。
1988年7月にペンシルバニア州ピッツバーグのディーラーを通じて納車されたこのフラットノーズは、これまで新車から3人のオーナーに愛され、2024年11月にはオイル交換とブレーキシステムの整備、ピレリ製タイヤの新品交換、トランスミッションのサイドギアガスケット、フロントとリアのリッドストラット、エンジンの断熱材交換などのサービスが行われた。現在までの走行距離は5310マイル(約8496km)を刻む。RMサザビーズでは27万5000ドル〜32万5000ドル(邦貨換算約4262万円〜約5037万円)のエスティメート(推定落札価格)を設定した。
今回の落札価格は27万1600ドル(同4245万円)。ポルシェ911ターボ フラットノーズの相場は、これからもこのくらいの水準で安定していくのだろうか。今後の推移が楽しみな1台である。
