クリーンディーゼルも選べる、フランス製のコンパクトSUV
2019年の広州モーターショーにて世界初公開された、プジョーの2代目「2008」。2023年秋にはマイナーチェンジが施され、日本にも早々に上陸を果たしました。わが国では従来モデルから高い人気を博し、コンパクトハッチの「308」とともにプジョー・ブランドの中核をなしているという新型2008。国内デビューからは少し時を経ましたが、AMWでは今いちどあらためて、テストドライブを行ってみました。
各部のブラッシュアップにより、最新世代へとリニューアル
プジョー新型「2008」では、最新のブランドエンブレムが掲げられるフロントエンドが、外観における最大の特徴となる。また、ノーズの形状をより立体的に見せるグリルの意匠や、プジョーが長年その紋章として掲げてきたライオンの「かぎ爪」をイメージしたという3条のデイタイムライトを採用。これらデザイン面でのブラッシュアップを図ったことにより、エクステリアは従来型2008の基本形を引き継ぎながらも新たなアクセントを加え、よりソフィスティケートされた印象に進化した……、とアピールされている。
くわえて、LEDを多用したフロント/リアの灯火類や、ちょっとアヴァンギャルド的なデザインのアロイホイール、シャークフィンアンテナの新規採用などによって、プジョーらしい、あるいはフランス車らしい個性的なスタイリングを体現しているという。
インテリアについては、10インチサイズの大型タッチスクリーンや高解像度のパークアシストカメラ、ワイヤレス式スマートフォンチャージャーなども新たに装備。さらに、現代プジョーのアイコンでもある超小径ステアリングホイールと、その上縁に配される計器盤による「プジョー i-Cockpit」は、さらにSF感のある「3D i-Cockpit」へと進化し、最先端テクノロジーを感じさせるキャビンに仕上げられている。
いっぽう、インテリアトリムでは新たなステッチを採用しており、シートはアルカンターラと「テップ(TEP:人工皮革)」レザーをコンビとした表皮を採用。運転席には電動調整機構が標準装備され、助手席を含むフロントシート2脚にはヒーターも備えられる。
日本仕様のラインアップは、現状では上級&スポーティグレードにあたる「GT」のみ。選択肢はパワーユニットで、最高出力130ps/最大トルク230Nmの1.2L直3ガソリンターボエンジンを搭載する「2008 GT」と、最高出力130ps/最大トルクは300Nmに到達する1.5L直4ディーゼルターボエンジンの「2008 GT BlueHDi」からなる2モデルが設定される。従来型2008には存在したBEVバージョン「e-2008」は、現時点ではマイチェン前の仕様のみの設定のようだ。
駆動方式は2008 GTと2008 GT BlueHDiともFWDで、トランスミッションは8速ATが組み合わされることになっている。
SUVだって、ディーゼルだってプジョー伝統の「ネコ脚」は健在?
「プジョーの乗り味ってのは、昔から“ネコ脚”と言ってたな……」。そんなつまらないウンチクを滔々と語りたがる面倒くさいクルマ好きオジサンが、もしかしたら貴方の周囲にもいらっしゃるかもしれない。自分では認めなくもないのだが、たぶん筆者もそんなひとりなのだろう。
たしかに前世紀後半、1960年代から1990年代のプジョーは、ミドル級の「504」や「505」のみならず、小型の「205」や「306」であっても、しなやかでコシのあるサスセッティングを身上とし、それが「ネコ脚」なる愛称のもとにプジョーの代名詞にもなってきた。
しかし、構造上重心が高くなるSUV。しかもコンパクトモデルと「ネコ脚」は、どうあっても相性がよろしくないはず……? などと予測していたはずが、いざ2008を走らせてみると、これがなかなか良いのだ。
今回テストドライブの機会を得たのは、今やコンパクトSUVでは稀有な存在となったターボディーゼルの「2008 GT BlueHDi」。最高出力はガソリン版と同じ130psながら、1750rpmで発生する300Nmという野太い最大トルクを生かして、1320kgという今どきの常識では軽めのボディを驚くほど軽快に走らせる。
またスロットルレスポンスがシャープなことも、軽快感を増進させる重要な要素。アクセルを踏み込めばそれなりに排気音も高まるものの、ガソリンエンジンと大差ない軽妙なサウンドは、内燃機関の味わいを色濃く感じさせてくれる。
ジェントルな魅力を大いに増進させている
しかし、この軽めの車重がなにより生かされていると感じられた要素は、じつに軽快なフットワークである。近年のプジョーではおなじみの超小径ステアリングは、かなりクイックで正確。そして操舵に応じて、車体全体が迅速かつ安定した挙動をみせる。くわえて、スピードレンジを問わず乗り心地は良好で、ロードノイズや不快な振動もかなりのレベルまで抑えられているから、コンパクトSUVなのに上質感もある。
同じステランティスで基本構造を共有するシトロエン「C3 エアクロス」に対して、走りのテイストでも作り分けなければならないという困難な命題についても真摯に向き合ったようで、あくまで「SUVにしては」という条件つきながら、プジョーの旧き良き伝統であるネコ脚と言えなくもないのだ。
そもそも、すべての猫がしなやかで上品な動きをするとは限らず、たとえば拙宅のオテンバ娘たちのように、やたらと活発に部屋中を飛び回る猫なんて珍しくもない。だからこの新型2008もまた、プジョーの伝統を拡大解釈した「新時代のネコ脚」と断じさせていただくことにした。
ただし、ここで正直な心情をいってしまうと、かつてピニンファリーナがデザインワークを担っていた時代の端正なプジョーが好きな筆者には、いささかエッジィな印象を強調しているかのように映る現行の4ケタモデルには、いささかついてゆけない感覚もあった。でも、新型2008と実際に対面し、思う存分に走らせるというプロセスを経て大いに見直すとともに、急速に魅力的な存在とも感じられている。
さらにいえば、マイナーチェンジによってブラッシュアップされたマスクは、従来型2008に比べると格段に端正で、あくまで筆者の私見ながら往年のプジョー的にジェントルな魅力を大いに増進させているかにも映る。
とくに、わが国においてプジョーを長年支持してきた「コニサー(通人)」的なフランス車ファンにとっても、新型2008には積極的に選びたくなるだけの魅力がある。今さらながら、そう思うのである。
specifications
■PEUGEOT 2008 GT BlueHDi
プジョー 2008 GT ブルーHDi
・車両価格(消費税込):457万3000円
・全長:4305mm
・全幅:1770mm
・全高:1580mm
・ホイールベース:2610mm
・車両重量:1320kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
・排気量:1498cc
・エンジン配置:フロント
・駆動方式:FF
・変速機:8速AT
・最高出力:96kW(130ps)/3750rpm
・最大トルク:300Nm/1750rpm
・燃料タンク容量:41L
・公称燃費(WLTC):20.8km/L
・サスペンション:(前)マクファーソンストラット、(後)トーションビーム
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ディスク
・タイヤ:(前&後)215/60R17
