シルヴェスター・スタローンが所有した1台
2025年1月24日〜25日にRMサザビーズがアメリカ・アリゾナで開催したオークションにおいて、フェラーリ「365GTC/4」が出品されました。1972年の4月にマラネロのファクトリーからラインオフされたモデルで、当時のカラーリングはゴールド・ケルソのボディカラーに、エレガントなベージュのレザー・インテリアを組み合わせた仕様でした。
ほとんどがアメリカで販売された365GTC/4
流麗なウェッジシェイプ・デザインは、フィアットのデザイナー、フィリッポ・ザビーノの手によって描かれたものである。ここで紹介するモデルは1971年のジュネーブ・ショーで発表された、フェラーリ「365GTC/4」。これまでのフェラーリの伝統的なデザインから大きく逸脱したものであり、2シータークーペのようなプロポーションを持ちながら、じっさいには折りたたみ式のリアシートを備えることが大きな特徴だった。
そう、365GTC/4は、事実上「365GTC」や「365GT 2+2」の両モデルの後継車としての役割を担うモデルでもあったのだ。フェラーリは約18カ月間に、500台ほどの365GTC/4を生産し、そのほとんどはアメリカにおいて販売された記録が残る。
このシャシーナンバー「15471」は、1972年の4月にマラネロのファクトリーからラインオフされたモデルで、当時のカラーリングはゴールド・ケルソのボディカラーに、エレガントなベージュのレザー・インテリアを組み合わせた仕様だった。マイル表示のスピードメーターをはじめ、アメリカ市場に対応したメーターを装備。
さらにはパワーウインドウやエアコンを工場装備し、完成後に「15471」はネバダ州リノのフェラーリ販売代理店、モダン・クラシック・モータースを通じてファースト・オーナーに販売。1970年代後半にはハリウッドでタレントエージェントを経営するマイケル・オーヴィッツが新たなオーナーとなった。
整備記録がしっかりと残った1台
1975年にこのマイケル・オーヴィッツが設立したクリエイティブ・アーティスツ・エージェンシーには、のちにスティーブン・スピルバーグやトム・クルーズ、シルヴェスター・スタローンなどのタレントが所属し、オーヴィッツはショー・ビジネスの世界で最重要人物とみなされていた。
彼は少なくとも1984年まで、365GTC/4を所有するが、そのキーは熱狂的なカーマニアであったシルヴェスター・スタローンの手に渡る。ボディカラーがゴールドからブラックに変更され、内装も全面的に張り替え。さらにボラーニ製のワイヤーホイールが装着されたのは、オーヴィッツが所有していた1978年のことで、その請求書をはじめ、定期的に行われていた整備の記録もきちんと残されている。
スタローンもやはり「15471」を溺愛し、その整備を継続的に行ったが、彼がそれを所有していたのは1980年代の終盤までと推察される。
スタローンの手を離れた「15471」は、ここから数人の愛好家の手を経て、1992年に今回の出品者の父親によって購入されている。こちらも車体とともに出品される整備記録と請求書によると、「15471」はそれ以来慎重にメンテナンスされてきたことが確認でき、1994年にはニューヨーク州ホロビル在住のヴィンテージ・フェラーリ専門家、トム・ヤンによる整備も行われ、最新の整備記録では2024年、エグゾーストシステムやエンジンマウント、オルタネーター等々の修理が行われている。
エスティメートを上回る金額で落札
RMサザビーズは、この365GTC/4に、12万5000ドル~15万ドル(邦貨換算約1950~2340万円)のエスティメート(予想落札価格)を提示したが、フェラーリのマニアにとっては、それはあの名高い365GTB/4(デイトナ)よりも上品な対抗車としても見られる価値ある1台だけに、入札は白熱。
最終的に18万2000ドル(邦貨換算約2840万円)の落札価格が記録された。モデルの履歴とコンディション、そしてオーナー・ヒストリーの中にビッグネームが含まれていたことなど、さまざまな理由がこの価格を実現したようだ。
